「おばけのきもち」
『Esマナ』第26号(2013年11月)掲載
−「特集・妖怪」参加作品−
生きている自覚持てれば現し世の何ごともまだうらめしからず
人外の輩といえどそれぞれに異あり 目の数、口の位置など
悪気ではなくてたまさか人などを取って喰うのもいるにはいるが
まなこ
語るべき口ひとつ欲し総身なる百の眼で見し世のことを
畳まれて日ごとに重し烏羽玉の夜翔ぶだけのための翼は
口ふたつ前と後ろにあるうちのもの食う方は隠して嫁ぐ
月の雨 年古るほどに艶めきてべろ出す傘もありしそのかみ
憐れみは金で買えぬと子ばかりかじじいまでもが泣いて縋りし
ゼロからの出会いであればはじまりは目鼻口なき顔にて臨む
異形すなわち悪とはいわぬ世の中を首だけ長く長くして待つ