「あがらざり」 
    
『現代短歌新聞』2020年12月号掲載



 年経ればそぞろに羨(とも)しふりだしにもどるマスあるすごろくなども

 一度だけ会った気がする縁ありて送る字のみの葉書ひとひら

 旗の色たとえば真紅 遠目にも旗だとわかるように掲げる

 天上天下皆罪知らず蜘蛛の糸のぼる最初のひとりのほかは

 手応えのありて気づけりひとの手で押してはならぬ背のあることに