「明るい未来」 
    
『現代短歌』2019年3月号掲載
       ─「特集・原発を詠む」参加作品─



 潮まねく形のままに振り上げてざっくりと天を裁ち切る鋏

 大洋におろち万匹放ちやる護岸を穿つ管の太さの

 選ばれし種であるヒトの住む場所は地図を定規で測って決める

 変異してほしい 最後の一人までバカが伝わる遺伝子なんか

 子も孫もなき身であれば余すなくおのれ一代で使い切ってやる

 捨て難きもののすべてが未来へのわずかな遺産 どうかよろしく

 無人街に星降り注ぐ 永遠の停電もまたよからむものを