「怪談」
『現代短歌新聞』2025年6月号掲載
娑婆の空気吸いに出できぬ暗ければ目鼻口なき素顔のままで
年経りてのちに悟れり吹雪の夜の契りは良夜ふいに破らる
胴体を取られしうえは首だけで浮き世の袖に喰らいついてやる
負け組の鬼哭むなしく語り部は失せて耳のみ摑まされたり
明けてなお人でありたし木の精の化身といえど人を恋うれば