本書は、『短歌が人を騙すとき』(2010年、彩流社)に続く著者2冊目の短歌評論集です。所属する同人誌、その他の各紙誌、ウェブサイトに発表した文章を一冊にまとめました。オンデマンド出版としては、短歌以外のジャンルをテーマとする評論集『「私」と「悪」の文学論』(2015年刊)以来、8年ぶりの刊行となります。前回はデザインエッグ社の「MyISBN」というサービスを利用しましたが、その後Kindleでの出版が個人でもできるようになったのを承け、今回はそちらを利用することとしました。
 なお、電子書籍版については、今のところ発行の予定はありません。長いあいだ歌集を出しておらず、既発表の歌が大量に貯まっているので、まずはKindleペーパーバックでの歌集制作に取り組みたいと思っています。

 出版の第一の目的は、著作の散佚を防ぎ、書籍の形で後世に遺すことです。よって、前回同様、献本先は、出版の事実を記録に残したり、本を保存し、利用に供してくれるであろう図書館、文学館、短歌総合誌編集部など、必要最少限とし、個人宛ての寄贈は行いません。また、数年来、私自身の短歌への関心が低下し、短歌界の動向にもすっかり疎くなってしまった現状に鑑み、出版の告知、広報についても特別なことはしないつもりでいます。

 とはいえ、世に出す以上、ひとりでも多くの方に読んでほしいという気持ちに変わりはありません。発表時期のやや古い文章が中心ですが、内容的には今現在に通じるテーマを先取りしている部分も少なくないと自負しています。

 次は、いつの日か新歌集でお目にかかれるよう、気長にがんばります。

2023年8月19日 山田消児