「断筆」
『遊子』第24号(2017年12月)掲載
もの言うも言わぬもありて折々に狩りおり 桜、紅葉、ほうたる
守るより攻むるが愉し掟多き仮想ゲームの内にてあれば
食うにせよ食われるにせよまだ先のことだし ポチや、おあずけ。よし!
うまいうちに吸い尽くさねばお尻から腐ってしまうすもももももも
牛後にはなりたくなくてすがりつく鶏口の少しうしろのあたり
批評家ぶるわけじゃないけど未来より過去はあれこれ言いやすくって
またひとり筆を折る音 時流から己れひとりを守らむがため
つ
なべて権力なるは滅びる いや、だから、どうせ随くなら今のうちだろ
呼ぶ声が、ほら聞こえるよ 魂を売った印のとんがり耳に
敵の敵は敵の敵にて自ずから悪しき鬼畜として立ち向かう
そのままじゃ殺せないから人として憎む 心の底から憎む
ふ さ
汚さざりし手には相応わぬ一棹の白旗もまた勝利の美酒も
繰り返す歴史とぞいう 茜さすあした戦争がまた終わる
思い出とは似ても似つかぬものばかり遺しゆきたり形見というは
いいわけを書けよつくづく恥じながらあの朝折ったまんまの筆で