「サンゴ街道」 
    
『遊子』第22号(2015年12月)掲載



 まれまれに訃報届けば思いやる切りたるままの縁のゆくえを
                                
 食えぬやつといえど等しく生身なる人として生き去んで焼かれる

 みんなして輪をつくろうよ左右から右と左の手を摑まれて

 これはまた何のリストか番号と名前ばかりが果てなく並び

 全員がそうなる前にそそくさと逃げ出す自由だけがまだある

 手の内に銃ある限り誰だって怖けりゃそりゃあ撃っていいだろ

 今日もまた同じ正義が勝つためにちゃちゃっと弾は抜いときましたよ

 忘れたき過去からの声聴きており 蚊は蚊、ウサギはウサギの耳に

 与えるより奪いたき愛あればこそ打つたびに手は鞭よりしなる

 少しだけ宇宙ふくらむ下界では火の輪くぐりの獅子跳ぶ夕べ

 亡ぶなら街ごと滅べ夜空でしか見たことがないサソリの毒で
                         ひとや
 科学には敵わねえやとコマ劇場跡の牢屋にゴジラも飼われ

 食われるしかないかもしれん ツラまでが豚になるこの一徹ぶりじゃ

 首みじかき生きものなればおのれには見えぬ背中を晒して歩む

 点々と浮き世の岸に灯りいる死してましろき珊瑚のかけら