「めでたし」
       『Es蝕』第18号(2009年11月)掲載
            
−「特集・祝祭」参加作品−



  これの世に出でて今より人となるまだ固からぬつむりを先に

  未来という時あることも知らぬげに飴ぶらさげて行く とおりゃんせ
  
まなびや
  学舎は子のためにある 子に引かれ今朝は表の門より入る

  汝弱き者といわれて戦わぬ前に血を見る女子たるものは
  
                     はたち
  馬もまた武器もなければ粛々と二十の坂は歩いて越える

  誓言は端的に述ぶそれぞれが神と人との間の位置で

  節穴に似て非なるもの ふたつめの目玉勝者は墨にて入るる
  
くにたみ     おう
  国民のため皇たらむ人のありやがてくるひとりの長逝ののち

  通過点の無限の並び越えゆけば末広がりの果てなる米寿
  
               ひと よ
  祝福を知るも知らぬも一生にていずれ等しく死ぬる めでたし