湯 立 神 楽
藤沢市指定重要民俗文化財

解  説

白旗神社に伝わる湯立神楽は、江戸時代からこの地方の神社に広く行われる格調高い、神職が演じる神楽であります。

この特殊神事は、私達の日常生活に密着している、産土の神、火の神、水の神の神々に対する和めの神事で、実りの秋に感謝し、自然を崇拝する庶民の信仰的支柱となって、神と人と共に楽しみ、受け継がれてまいりました祭りであります。

この湯立て神楽の特徴は、忌竹(いみだけ)を四隅に立て、その中央に一本の長い竹を立て、山を作る、この構造が天蓋(てんがい)という、山の頂上から注連縄を張りめぐらし、秘伝とされている青、赤、緑の色紙で色々な形の注連飾りをして祭の神々をお迎えし、斎場とするのであります。この外側には湯釜を据えて焚き火によって熱湯をたぎらせ、山の下で、お神楽が舞われるのであります。(近藤正宮司)


湯立神楽次第(十一座)

一、打囃子(うちはやし)
大拍子といって、笛・締太鼓・大胴の楽器によって音合わせをする。神職一同で調子を揃えるのが打囃子である。

二、初能(はのう)
狩衣姿の神職が神前に進み、左手に扇をとり、扇をひろげて洗米をのせ、右手に鈴を振りつつ舞ながら、四隅に散供(さんく)する。
今日の祭りに事寄せて、諸々の霊をも和め奉るのである。

三、御祓(おはらい)
斎場四方を切り払い、お神酒と祓幣(はらいへい)を持って釜戸に行き、湯釜にお神酒をそそぐ、焚口前に幣二本を立て、一切を祓い清める。

四、御幣招(ごへいまねき)
湯立神事の対象になる神々を招神する舞いである。舞いが終わると御幣で参列者一同を御祓いする。

五、湯上(ゆあげ)
火と水で結ばれた熱湯を笹に浸し、湯桶に湯をくみとり、神前に捧げる


六、中入(なかいり)
お神楽は、ここで小休止する。
この間に神前に供えたお神酒と御供(ごく)を参列者一同に頒ち戴く、神職は狩衣をぬいで白衣、袴となり、次のお神楽に備える。

七、掻湯(かきゆ)
湯立神事の中心となる御幣の舞いである。四隅を舞い終わると、御幣で掻きまわす、その時湯釜から、神秘的な湯花が立ち昇る、古くはこの湯花の立ち上がり方で、その年の吉凶を占ったのである。

八、大散供(だいさんく)
天津神、地津神、八百万の神々に散供する二人舞いで袖なし羽織を着用し、扇と鈴で舞うのである。



九、笹の舞(ささのまい)
大散供と同じ服装の二人舞いで、笹と鈴にて四方を舞い、終わると交互に釜戸に行き湯釜の熱湯を笹に浸し、参列者の頭上に散らし掛ける。こても湯花という、この飛び散る湯花にかかると、一年中無病息災という信仰がある。


十、弓祓(いはらい)
五本の御神矢を四隅に放ち、残る一本を神座に向けてねらいさだめるが、悪霊がいないので弦を放って終わる。
悪霊を祓い除厄招福を祈る神事で、放った御神矢を授かると開運守護矢としての信仰がある。

十一、剣舞、毛止幾(けんまい、もどき)
天狗の面(猿田彦)をつけ、剣を持って、四方の剣祓(けんばらい)をして、更に「九字」(指二本で空中に文字を書き護身、除厄、勝利を得るというおまじない)を切って四方を和める。
この頃、面をつけた山ノ神があらわれる。杓文字を持った山ノ神は天狗の緊張をもどそうとして道化を演じる。天狗は神前に供えた餅を四方にまく、天狗にまねて山ノ神も負けじと参列者に餅をなげる。


ここでお神楽は最高に盛り上がり御神徳にあやかる参列者は、神人共楽のうちにお神楽が終了する。 

白旗神社トップへ

2002.6.16