しだれ桜通信 9
柳の御所しだれ桜咲かず!!
 

柳の御所のしだれ桜
(2005年4月24日)

2005年4月24日、平泉の柳の御所趾にしだれ桜を観にゆく。鼓動がどきどきと鳴る。花芽が出ていないという情報は入っていた。だ が、一縷の望みを持っていた。

平泉は今、春たけなわである。桜の花がそちこちに見える。彼方に見える高館山が桜色に染まっている。その背後に若々しいシャチのように 神々しく姿を見せているのは、焼石連山である。去年も同じ頃、平泉にやってきて、見事に咲いていたしだれ桜を観て感激したものだった。

その時、「単なる工事現場と化した柳の御所趾で、こんなに美しい花を付けてくれて、ありがとうございました」と心の中で、感謝の祈りを 捧げたものだった。

それが、まさか、8月半ばに、急速に樹勢を弱めて、花の後に葉がすべて抜け落ちてしまうとは・・・。

「柳の御所のしだれ桜が危ない」と叫ぶと、様々な人々の支援の輪が拡がっていった。「桜を枯死から守ろう」との機運が急速に高まり、 EM(有用微生物群)の液を幾度も樹木の周辺に撒き、冬を越すために、松の木にするように菰を被せたのである。しかし、しだれ桜から花芽が出ることはな く、樹木は、春の日を浴びながら、春に当然纏うべき花の衣を着ないまま、無惨に裸で佇んでいた。

これ以上、言葉が出ない。しだれ桜よ。今年は花咲かずとも、せめて葉桜を見せて欲しい。そんな気持だ。

    花咲かぬしだれ桜に捧げる五首
   咲かぬのか・・・しだれ桜はただ独り工事現場の夢跡に佇(た)つ
来てみれば柳の御所は荒果てて桜も咲かぬ荒野となりぬ 
  誰も来ぬ柳の御所を悠然と工事車両の土埃かな
  「夢跡の桜咲かず」と絶句して後の記憶は消へ失せてけり
   花咲かぬしだれ桜をかき抱き零(こぼ)れる涙餞(はなむけ)とせむ 


ちなみに昨年4月18日、同じしだれ 桜は下のような見事な花を咲かせた

柳の御所のしだれ桜
(2004年4月18日)



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