【プロギアの嵐 サイドストーリー Vol.1】 【前回までのあらすじ】 『ナンデボクヲ盾ニスル〜』  いつもの捨て台詞を吐いて、敵の大型戦車が沈んでいく。戦いに慣れてきた僕は、 予備機を使わずに奴を倒せるときもあるようになった。  リベットさんも誉めてくれるようになって嬉しい。でも、次の戦いの場では、敵に 援軍が到着したらしく攻撃も激しい。なんとか凌いで、先に進んだものの、そこでも 攻撃は激化していて、とても耐えられる状態ではなかった。 「ああ、また、大佐のお役に立てなかったのですね」    リベットさんがつぶやいた。こんなとき、ネイルが言っていた「リベットは大佐と 不倫してるのよ」という言葉を思い出してしまうが、すぐに忘れることにしている。  戦闘に敗れたときは、パラシュートを使って脱出するのだが、降りたあとの記憶は 閉ざされている。そのあと何があるんだろう。噂では、本当は死んでいて、クローン が使われているとのことらしいが、そんな反逆的な噂は信じたくない。 【ここから今回の話】  リングが言うには、あの戦車を倒す前に、一機予備機を使っておけば、敵の援軍は さほどやってこないとのことだ。リングの言うことだから、今一つ信用できないが、 今度の戦いでは試してみようと思って、リベットさんに相談した。 「そんな機体をわざと壊して予備機を使うなんて、軍の資金をなんだと思っているの ですか?」  最初は、そんなことを言っていたリベットさんも、渋々納得してくれた。  そういえば、リベットさんは、敵機から入手する指輪や宝石をプレゼントしないと 怒っているチェーンやネイルとは違って、最初から下を向いて祈っていてくれる。  もちろん、プレゼントをあげていると微笑んでくれるのだが、それは女の子だから 仕方ないのだろう。あ、リベットさんのことを女の子だなんて言うと、マセたガキだ と思われてしまうかな。独り言なので聞こえないと思うけど。  戦闘に出た、順調に進んだ僕は、どうせ壊すのだからと安全に大型戦車前の地帯で、 ボムを使いまくる。ボムというのは、緊急回避と全体攻撃を兼ね備えた革新的な兵器 だが、あまり多く使えないらしい。  途中で何回か補給してくれるものの、一定数以上持てないので、無駄になることが ある。リングが言うには、それも護衛機のパイロットへのプレゼントと同じようなも のらしいが、僕は無駄なことが嫌いなので、所持できる限界数持っているときは、補 給機が来る直前で使うことにしている。  さて、問題の戦車戦だ。操縦ミスで二つ予備機を使うことになってしまう。 「使う予備機は一体ではなかたのですか?」  リベットさんの口調は穏やかだし、怒っているそぶりも見せないのだが、こういう ときのリベットさんが一番怖いことを知っている僕は、ただただ謝るしかなかった。  なんとか大型戦車を倒し、次の戦場に入る。  あるところで出てくる中型戦車を出てくる順番と逆に倒したら見かけないアイテム が出てきた。 「よくできました〜」  リベットさんが唐突にそう言った。  予備機を増やすアイテムとのことだ。しかし、なぜ、敵戦車を倒して、そのアイテ ムが出てくるかは謎だ。どうしてかと聞いても、 「軍の機密事項なのですよ」 の一点張りで、教えてはくれない。もう何度も一緒に戦場に出ているというのに、冷 たい人だ。……あ、こんなことを思っていると知れたら嫌われてしまうかな。  しかし、その直後で操縦ミスで機体を壊してしまい予備機に移ることになる。 (せっかくの軍の恩赦をすぐ無駄にするなんて幻滅してしまいます)  リベットさんは、そんなことを言いたそうな顔をして僕の方を見ている。……空気 が重い。とても耐えられなくなった僕は、その戦場で全機使い果たしてしまう。  パラシュートで降りながら、リベットさんに嫌われてしまったのだろうかと思う。  そんなことなら死んでクローンになるという噂を信じた方がマシかもしれない。