ミミナガ
<ボクは戦士になんかならないか
らね!
怖いの嫌なんだっ!>
ナガマユ
「あいつにも困ったもんだ、戦士
の一族としての使命をまるで分
かってない。」
ルシオン
「その包帯はどうしたの?」
ナガマユ
「ん、あんた達は?
このあたりではみかけない顔だ
が?」
ルシオン
「あたしはルシオン。
こっちはエルゴート。
ねぇ、その包帯どうしたの?」
ナガマユ
「あ、ああ、これか。
これは、オーガーとの戦いで怪
我をしちまったのさ。
俺としたことが情けないことだ。」
ルシオン
「ふゥ〜ん。
ね、痛い?」
ナガマユ
「痛みは大したことはない。
だが、体が思うように動かせな
いんだ。」
ルシオン
「なおしてあげるね☆
どう?」
ナガマユ
「ああ、だいぶラクになったよ。
ありがとう。」
ルシオン
「よかった。
で、何に困ったの?」
ナガマユ
「ああ、この通り怪我をしてしま
って、動けないんだ。
もし、今、オーガーが攻めてき
たら、と思うと、いてもたって
もいられなくてな。
だから、つい、跡取り息子のミ
ミナガには厳しいことを言って
しまった。」
ルシオン
「ミミナガってさっき出ていった
ヒト」?
ナガマユ
「ああ。」
エルゴート
「オーガーとの戦争・・・状況は
どうなんですか?」
ナガマユ
「我々の方が戦力としては下だ。
だから村を封鎖して籠城をして
いる。
この村は守りには適しているし、
住民の大半はモールベアだ。地
中での生活に不自由を感じない
からな。」
エルゴート
「しかし、それは負けないかわり
に、勝つこともできない戦方で
は?」
ナガマユ
「ああ。
なんとかこの状況を変えたいん
だが、肝心の戦士の一族の俺は
傷のせいで動けねぇ。
その上、息子は臆病者だ、これ
では勝てるワケがない。」
ルシオン
<そうだ、いいこと考えた☆
あたし達がそのオーガーを倒し
てあげるよ!>
ナガマユ
「無理だ、無理に決まってる。
それに第一、あんた達が、俺達
モールベアのために戦う理由な
んかないじゃないか!」
ルシオン
「理由?
あたし達、ミラドールに行きた
いんだけど、チチボラの洞窟を
通らないといけないって聞いた
の。
だから、オーガーを倒して、先
に進めるようにしないとダメな
のだ☆」
ナガマユ
「一体どうするつもりなんだ?」
ルシオン
「棲み家に行って、オーガー族の
酋長を倒すの。」
ナガマユ
「オーガーヘッドをか?
無理としか思えないな。」
エルゴート
「いや、いくらオーガー軍が強く
ても、リーダーが倒されては戦
争どころではなくなるでしょう。」
ナガマユ
「あ、ああ・・・確かに。
だが、お前達だけで勝てるのか?」
エルゴート
「忍び込むのだから、人数は少な
い方がいいでしょう。」
ルシオン
「そう、そう。
それに、戦士の一族のミミナガ
ちゃんが居れば大丈夫っ!」
ナガマユ
「ミミナガを・・・?」
ルシオン
「うん。」
ナガマユ
「父親の俺が言うのも何だが・・
・。
ミミナガは臆病だぞ。」
ルシオン
「大丈夫、じょぶ☆」
エルゴート
「臆病と弱さとは違いますよ。
何かきっかけがあれば、彼も戦
士の一族としての力を出せるよ
うになるでしょう。」
ルシオン
「そういうこと。
じゃ、あたし達行くから。」
ナガマユ
「チチボラの洞窟の入口には、我
々の部族の者が見張りに立って
いる。だが、ミミナガを連れて
行けば通してくれるだろう。
それから、これを持っていけ。
きっと役に立つだろう。」
ルシオン
「ありがとう。」
ナガマユ
「・・・息子を頼む・・・。」
ミミナガ
「君達は?」
ルシオン
「あたしはルシオン。
こっちはエルゴート。
あなたミミナガちゃんでしょ?」
ミミナガ
「あ、うん。」
ルシオン
「にゃは☆
じゃあ行きましょう!」
ミミナガ
「行くってどこへ?」
ルシオン
「もちろん、オーガー退治だよん。」
ミミナガ
「そんな・・・。」
<ボ、ボクは行かないからね!>
ルシオン
「大丈夫、じょぶ☆」
ミミナガ
<嫌だ!|>
ルシオン
「そんなこと言ったって、あたし
達、チチボラの洞窟の場所なん
か知らないも〜ん☆
だから、入口まで案内してよ。
あとはあたし達でやるから。」
ミミナガ
「そ、そんなことしたら、オーガー
に捕まって食べられちゃうよ!?」
ルシオン
「捕まらなきゃいいのよ。
それに、ミミナガちゃんは近く
まで連れてってくれるだけでい
いんだから。」
ミミナガ
「うーん。」
ルシオン
「ね、ね、お願い。」
ミミナガ
「うーん。」
ルシオン
「お・ね・が・い・☆」
「うふーん☆」
ルシオンは色っぽい演技をして
みた。
肩をちらっ、太股をちらっ、そ
して、せくしぃポーズ。
ミミナガ
「うッ。」
ミミナガは赤面した。
理性に50点のダメージ。
ミミナガは理性を失った。
ミミナガ
「わ、わかったよ。
ボクがついていくのは洞窟の近
くまでだからね。絶対、絶対、
中には入らないからねッ!」
ミミナガ
「ここがオーガー達の本拠地って
ワケさ。
ここまでっていう約束だったか
らね、ボクは帰るよ。」
エルゴート
「それはいいが、平気なのかい?」
ミミナガ
「え、平気って・・・何が?」
エルゴート
「ここまで来る間に何度かモンス
ターと会っただろう?
3人だったからなんとか戦えた
けれど・・・1人で大丈夫なの
か?」
ミミナガ
「あっ、そ、そうか・・・どうし
よう・・・。」
ルシオン
「あたし達が戻ってくるまでここ
で待ってれば?
そうすれば、3人で帰れるよ。」
ミミナガ
「こんな所で1人で待ってるなん
て嫌だよ。
・・・よぉし、こうなったら、
ボクも一緒に行くよ。」
「これはミミナガ様・・・。
ということは、ナガマユ様の許
可が降りたのですね。」
ルシオン
「そういうこと☆」
ミミナガ
「ボクは案内するだけだからね。」
ルシオン
「はい、はい。」
ルシオン
「うーん、この先には進めないの
かなぁ?」
ミミナガ
「この程度の岩なら、何か岩を砕
くような武器があれば、簡単に
壊せると思うよ。」
ルシオン
「岩を砕くような武器・・・?」
エルゴート
「打撃を与えるような武器・・・
例えば、ブラジオンとか?」
ミミナガ
「そういえば、オーガーヘッドは
ブラジオンを隠してるって話を
聞いたことがあるよ。」
ミミナガ
「勝った・・・。」
ルシオン
「やったね。
ミミナガちゃん。」
エルゴート
「もう誰も君を臆病者とは言わな
いよ。」
ルシオン
「ううん。
それどころか、英雄だよ。
ミミナガちゃんは。」
ミミナガ
「ボクが、英雄・・・?」
ルシオン
「さぁ、かえりましょ!
みんな、きっとびっくりするよ!」
ナガマユ
「ミミナガ・・・よく戻ったな。」
ミミナガ
「父さん。」
ルシオン
「あたし達、オーガー族の酋長を
倒したんだよ。」
ナガマユ
「そうらしいな。
オーガーどもの襲撃がなくなっ
た。
それどころか姿すら見せなくな
ったからな。」
ミミナガ
「父さん。」
ナガマユ
「なんだ?」
ミミナガ
「ボク、ルシオン達と一緒に旅を
しようと思うんだ。」
ナガマユ
「な、なんだって?」
ミミナガ
「ボクはルシオン達と一緒に戦っ
て、本当の勇気って何なのか、
少しわかったような気がするん
だ。
だから、もっとハッキリと勇気
って何なのか確かめたいんだ。」
ナガマユ
「そうか・・・。
ルシオン、エルゴート・・・こ
んな息子だが、よろしく頼む。」
ルシオン
「分かったよん☆」
エルゴート
「お、おい、ルシオン、本気か?」
ルシオン
「仲間は多い方が楽しいじゃない?」
エルゴート
「遊びに行くわけじゃないんだぞ。」
ルシオン
「わかってるよ。
でも、2人より3人の方が楽し
いじゃない。」
エルゴート
「そ、そういう問題か?
・・・まぁ、いい、好きにする
さ。」
ルシオン
「うん。
好きにする。
じゃ、きまりね。」
エルゴート
「やれやれ。」
ミミナガ
「よろしく、ルシオン、エルゴー
ト。
よし、じゃあ、ミラドールめざ
して冒険のはじまりだ!」