『零 〜紅い蝶〜』レビュー

 『零 〜紅い蝶〜』は、TECMO から、PlayStation2 対応として発売された 3D アクションアドベンチャーゲームである。


【所感(一周目を終えて)】

 私は、サイコホラーアドベンチャーに対して、外せない三つのこだわりを持っている。『作品の雰囲気を生かす舞台設定』『怖さを演出する派手すぎない演出』『弱いながらも精神的には強い主人公』というものである。この作品では、前二つはしっかりしているが、三つめに関しては少し難がある。ヒロインであるところの澪が(物理的に)強すぎるのだ。正確には、所持する武器(射影機)の性能と体力の問題なのだけれど。

 それでも、「やっぱり日本人が一番怖いと感じるのは和風ホラーものだよな」と思わせるものがあったので満足。日本人が和風ホラーを怖がるのは、舞台が身近にあるものを連想し易いからだろうが、舞台設定や物語の背景に真実味がないとプレイヤーを怖がらせることはできないし、先を連想させる伏線がしっかりしていないとストーリーに引き込ませることはできない。そういう点において、この作品はかなり秀逸である。

 あと、今は、キャラクタの移動がアナログコントローラで行われることが主流になったため、「操作感覚が直感に近いかどうか」という不安を持たずに 3D アクションゲームを買えるようになったのは嬉しいところ。


【難易度】

 Nightmare を終えて、正直がっかりした。回避不可能な攻撃をしてくる怨霊はいないのだから、Nightmare あたりなら、「攻撃を食らわなければいいんだよ」という考えの元に難易度設定がされていて欲しかったところ。むしろ、『避』を使わなければ抜けられないようなところがあって、ようやく Nightmare と言えるのではなかろうか。

 なお、難易度設定で変わるのは、怨霊の最大ヒットポイントと攻撃力なのだけど、攻撃力の方は強化されない怨霊が多数存在する。どうやら、難易度に対する上昇倍率が決まっていて、その倍率によって Nightmare で、澪の最大ヒットポイントを越える攻撃力になってしまう怨霊は強化されないようだ。よって、Normal と Hard で、同時に出てくる怨霊の攻撃力の逆転現象が発生するようになっている。そしてそれは、「怨霊の設定上おかしくないかい?」という疑問が生じさせてしまうため残念だ。

 まあ、これらは、ヒロインの澪にヒットポイントが設定されていることから来る問題という感じである。他のゲームとの比較をするのはあまり好きではないのだが、『クロックタワー』では、「追いかけられているという恐怖だけで死亡する」という設定があったことを考えると、軟弱な設定だという印象を持つのは仕方ないことだろう。


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