『SIREN(サイレン)』レビュー

 『SIREN(サイレン)』は、SCEJ から、PlayStation2 対応として発売された 3D アクションアドベンチャーゲームである。


【ゲームシステム】

 このゲームの特徴といえば、マップ内を徘徊する屍人の視界をジャックする幻視の能力を使い、自分の目で見れないところの情報をあらかじめ把握できるというシステムがまず挙げられる。幻視を有効活用することにより、敵の隙をついて行動を起こすこともできるようになってくる。この能力を有効に活用できなければ、いつまで経っても「わけのわからない」状態から抜け出せない。他人の攻略を鵜呑みにするだけでは解けない本当のゲームの姿があると言える。

 次に、様々なアクションを駆使できるということ。アナログスティックや十字キーで行う通常移動だけでも、「走る/歩く/しゃがみ歩き」(しゃがみは×ボタンで行う)を状況に合わせて使い分けていくことが重要になってくる。また、○ボタンで行う攻撃にも、「打撃攻撃/短銃による射撃/狙撃」(狙撃は R1 ボタンで狙いをつける前動作が必要)があり、それぞれの攻撃の特性を把握して使いこなせるようになる必要がある。その他の行動は、□ボタンで行うライトの ON/OFF を除くと、全て△ボタンを用いるため、ゲームに慣れればボタンの使い間違いをすることはなくなる系統のしっかりした操作性をしている。自分がゲームに慣れてないことに対する苛立ちを「操作性が悪い」という言葉でゲームの作りに責任転嫁するのは、みっともない

 そして、物語の断片を複数のキャラクタの視点から見るシナリオが、複雑に連携しているということ。各シナリオには最初のシナリオを除いて二つの終了条件が存在し、それぞれ別のシナリオへつながるようになっている。また、各シナリオで特定の行動を起こすことにより、他のシナリオがプレイ可能になったり、終了条件が増えたり、難易度が下がったりする。これらの関係は、Link Navigator というシステムによって閲覧でき、どのシナリオが鍵になっているかがわかるようになっている。

 まだ言いたりないところもあるが、全てを語りつくすのも難しいので、最後に最大のアドバイスで締めくくりたい。それは、「マニュアルは熟読すること」である。マニュアルを熟読せずにプレイの仕方がわからないという難癖は通用しない。


【難易度】

 非常に高いが理不尽ではない。習うより慣れろ。「ゲームをしている」という感覚を味わうため、リトライを楽しむようになれ。煮詰まったら、Game Over になる前に、少しでも多くの情報を仕入れるように足掻け。そして道は開かれる。

 ただ、このゲームの場合、「攻略本や攻略ページを見ながらプレイする」というプレイスタイルを否定することはできない。仕掛けが複雑な上に難易度が高いため途中で挫折してしまう人もいるだろう。もちろん、全て自分の力で解くことに比べると本来の楽しみ方をスポイルされてしまう面はあるのだけれど、攻略本等を見ただけではクリアできない難しさがあり、結局は自分の力で道を切り開いていかないからだ。


【ストーリー】

 とある実在した事件を元にしている上で、独自の世界観を生み出している。ストーリーは、各キャラクタの視点から見た断片でしか与えられないが、これらをつなげることにより、一つの大きな流れは見えてくる。もちろん、細かいところの描写は抜けているところがあるのだが、ゲームの中で全てを語る必要はないし、語ってしまうとどうしても冗長な部分が出てくることを考えれば、良くできた作りだと言えるだろう。

 ソフトバンクパブリッシングから発売された『SIREN MANIACS(サイレンマニアックス)』によって、ほとんどの謎が解明された。このゲームの世界観を堪能したい人は、是非とも入手して欲しい本である。


【底知れない魔力】

 このゲームの持つ魔力に惹かれて、もう何回リプレイを重ねたことだろう。短いシナリオの集まりという構成が、時間のあまりないときでも少しづつ進められるという利点を生んでいるし、各屍人にルーチンが独自設定されているからこそ全く同じプレイにはならない(似たようなプレイにはなる)から、新しい発見もある。

 でも、一番大きいのは探求心をくすぐられるからだろう。実際、こちらのページで、色々と調べたことをまとめているが、調べれば調べるほど、シナリオの関連性やヒントの出し方などの細かいところにこだわって作られているのがわかり、それを発見するのも楽しみの一つになる。ただ、調査プレイは負荷が高いので、普通のプレイもしたくなる。ノーミスクリアも狙いたくなってくる。ここまで遊ばせてくれるゲームは滅多に出ないので貴重だ。


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