一源三流
卒翁百話から
一源三流とは、一つの源は誠の心である。この誠の心から三つの流れがほと
ばしる。
その一つは、国のために血を流す。その二つは、家のために汗を流す。その
三つは、友のために涙を流すことである。
ということで、初めて「一源三流」の意図することが判った。この立派な言
葉は、誰が、いつ、どこで説かれたものか、それは未だに不分明である。私が
最も尊敬する学者の安岡正篤先生にでも、おうかがいすれば、はっきりするか
とも思うんだが。が、とにかく、私はこの言葉に感服した。
国のために血を流す。あるいは封建的なことだという向きもあるかも知れな
い。が、自分の国を護ることは、国民の第一義である。国家の防衛は、憲法以
前の問題であって、国が存続してこそ憲法があるのであり、国なくして何が憲
法かといいたい。一朝事あれば、自らの血を流して国家の防衛にあたることが
国民の義務である。フランスの古い諺に「自衛の精神なきものは、国民に価い
せず」というのがあるが、国家鎮護の気概無きものは、国民たる資格が無い。
国を護ることは、国民の第一義のプリンシプルである。
家のために汗を流す。これは勤労精神を賞揚するのもであろう。一家の繁栄
のためには、その家の主人が、全身から汗をほとばしらせて営々と働くことで
ある。
友のために涙を流す。"友の悲しみに我は啼き、我の悦びに友は舞う"という
歌を思い出す。友と手をとりあって、共存共栄のために心を通じ合う。友と相
携えて共に世のために仕事をする。そして友人の身を思って涙を流す心があっ
てこそ、一個の人格を持った人間としての、あるべき姿であろう。
島野
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