当時彼らのような R&B の影響を受けたストレートな R&R バンドは他にも数多く存在した。またそのいくつかはヒット・チャートにも躍り出ている。しかし
Detroit Wheels はヒットの数や知名度においてそれらのバンドとは区別される。そう彼らは決してマイナーなバンドではなくメイン・ストリームに位置したバンドなのだ。ヒット・シングルを上げてみよう。
1966 | a. | Jenny Take A Ride | #10 |
b. | Little Latin Lupe Lu | #17 | |
c. | Devil With A Blue Dress On - Good Golly Miss Molly | #4 | |
1967 | d. | Sock It To Me Baby! | #6 |
e. | Too Many Fish In The Sea | #24 |
このように66年から67年にかけて5枚のヒット曲(しかもその内の3曲はトップ10に入るビッグ・ヒット)をあげている。この時代 R&R バンドでこれほどヒットを出したバンドなんてそうはいない。いやあえて彼らほどにストレートな R&R の曲を続けてヒットさせたバンドとなると皆無といえるかもしれない。
それじゃ今の彼らの評価とはどうなのだろうか? これはある意味で散々かもしれない。その原因は彼らのヒット曲そのものにある。 a.Jenny Take A Ride はあきらかに Little Richard の Jenny Jenny のカバー + α なのだが、わざとこのようにして Little Richard の正当な取り分を横取りした疑いがある。(というかまさにそうしたに違いない)同様な手口は c.Devil With... でも行われている。これが「最近白いのが俺達のまねをして金を稼いでやがる...」といった黒人ミュージシャン達の反感を買った事は間違いないだろう。
だがそれでもなお、このサウンドには注目すべき点がある。それは黒人の R&R から完全にアクを抜き去ってヒットしやすくしたサウンドに作り変えられているというのに、それにもかかわらず最高にいかしたビートを醸し出している事だ。例えばサイド・ギターは R&R のリフを完璧にたたき出し、ベースはあのウォーキング・ベース・ラインをこれまた完璧にうならせ、ドラムはそれを確実にグルーブさせる。その上に Mitch Ryder の若々しいシャウト・ボイスがのれば、これはヒットしないハズはない。そう彼らはデトロイトで生産される最高級の車輪(Wheels)そのもので音を転がしつづけたのだ。
さてではこのバンドは67年以降はどうなったのだろうか? 実は68年ころにはあっけなく解散しているようだ。(わたしのあやふやな記憶ではヴォーカルを変えて ???? & The Detroit Wheels ってのもあった気がするのだが???) Mitch Ryder は69年には再度 R&R をやるために Detroit というバンドを結成しているが、こちらは評論家の好評を得るもヒットとは無縁のまま終わっている。またリード・ギタリストの Jim McCarty は後に Cactus に参加してその名前を広めた。
彼らのサウンドの影響は意外に広いハズだ。上記の Stooges にもかすかに感じる事はできる。また
MC5(Motor City 5)のスタジオ録音にはまさに Wheels サウンドが甦っている気がする。とにかくただのポップ・バンドではない。
その心地よさはアメ車で中西部の原っぱを時速200マイルでぶっ飛ばす気分なのだから...
TAKE A RIDE
![]() (New Voice (S) 2000) 1966
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BREAKOUT!!
![]() (New Voice (S) 2002) 1966
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SOCK IT TO ME!
![]() (New Voice (S) 2003) 1967
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現在上記の1st-3rd までのアルバムが CD として再発されているようだ。他にベスト版もリリースされているようだが、それを買うよりはこの3枚の内のどれかを買ったほうがいい。アルバムとしてはこの後にも