BLUES MAGOOS are
Peppy Castro
Ralph Scala
Mike Esposito
Ronni Gilbert
Geoff Daking
vocal
organ
guitar
bass
drums
Blues Magoos のストーリーは1964年 New York の Bronx から始まる。当時同じ学校に通っていた Ralph(Vo&Kb) と Ronnie(B) は Trenchcoats というバンド名で活動をはじめる。当時の他のメンバーは John Finnegan(Dr), Dennis Lapore(G) だったが、すぐに Lapore の紹介で当時14歳の Peppy(Emil Theilhelm) がギタリストとして参加する。当時はフォークをベースとした曲を演奏していたようで、Drums が Finnegan からセッション・ドラマーの Bemard Purdle に交代して後 1965年には Trenchcoats 名で "So I'm Wrong And You Are Right / The People Hd No Faces"(Verve) "Who Do You Love / Let Yur Love Ride"(Small Ganim) というシングルをリリースしている。但しこれらは1967年に(彼らが Blues Magoos として有名になって後)初めてリリースされているという説もある。 
ところで当時のニューヨークは Bronx あたりの若者達が聴いていた音楽を想像してみよう。ヴィレッジあたりではディランが既にアル・クーパーやマイク・ブルームフィールド達とロック・アルバムを録音しはじめていたし、ラジオでは Loving Spoonful が「魔法を信じるかい?」なんて曲をヒットさせていた。ちょっとライブ・ハウスに行けば Blues Project みたいなバンドがギンギンにブルースを演奏しているし、西海岸からは Byrds のサイケデリックなサウンドが響きだしていた。そんな環境のど真ん中にいた彼らがちょっとサイケでブルースなR&Rを演奏しはじめるのはごく自然な事だったろう。そして時代もそんな彼らを後追いしだす。Lapore から Mike Esposito にギタリストが変わり Blues Magoos とバンド名も変えると1966年 Mercury と契約してデビュー・アルバム "Psychedelic Lollipop" をリリースすることになる。
Psychedelic Lollipop

Mercury (1966)
1.
  (We Ain't Got)Nothin' Yet 2:16
2.
  Love Seems Doomed 3:01
3.
  Tabacco Road 4:41
4.
  Queen Of My Nights 3:03
5.
  I'll Go Crazy  
6.
  Gotta Get Away 2:43
7.
  Sometimes I Think About 4:12
8.
  One By One  
9.
  Worried Life Blues  
10.
  She's Coming Home  
すぐにこのアルバムから "Tabacco Road/Sometimes I Think About" が6月にシングルとしてリリースされ(これは当時としてはラジオに流すには長すぎるためにヒットにはいたらなかった)続く (We Ain't Got)Nothin' Yet が11月にリリースされるとヒット・チャートの5位迄上がるヒットとなり彼らを全世界へと知らせる事になる。ちなみに Psychedelic Lollipop はこのヒットのおかげでアルバムチャートの21位まであがるヒットとなっている。
ところで、このアルバムの曲について少し説明すると、最初の(We Ain't Got) Nothing' Yet はリフ(Deep Purple の Black Night にそっくり)を中心に Electric Prunes にも似た曲調だ。2曲目の Love Seems Doomed と LSD のもじりともいわれ他にも67年にシングル・リリースされた曲に Albert Common Is Dead (ACID) というのがあり、Beatles の Lucy in the Sky with Diamond 等と同時代と思うとちょっと笑える。とはいえ非常に美しい曲だ。Tabacco Road は Pebbles 等でも多くのガレージ・バンドがカバーしている曲だが、オリジナルは John Loudermilk で、他にも Yardbirds 等も演奏しているが、途中のフリーク・アウト部分は Blues Magoos の方がわたしはすごいとおもう。Gotta Get Away はちょっと Quick Silver みたいなサイケデリックな曲で、Hey,hey,hey... という掛け声が何故がこころをうばう。Sometimes I Think About は Blues Project あたりがやりそうなマイナーブルースの曲。何処か Animals のようなキーボードの音色と Steve Katz をコピーしたみたいなギター・ソロが面白い。One By One は Byrds を意識したとしか思えないような曲。ボーカルもまるでロジャーマッギンそっくりだし、これでギターが12弦だったら絶対間違えそうだ。
デビュー後全米ツアーやヨーロッパ、それに当時GS全盛だった日本にも来た彼らではあるが、その後ヒットには恵まれず結局5枚のアルバムをリリースしたのち1970年には解散している。もし今再度彼らを評価しなおすとすれば、それは成功したガレージ・バンドのひとつというにすぎないかもしれない。また音的にも同時代のサイケデリック・バンドの要素をうまく取り入れている事が逆に彼らのイメージをあいまいにしている事はいなめない。でもわたしはこの独特な Electric Suits に身をつつんで飛び出してきたアイドル・バンドが何故か憎めない。この時代にしかない甘いボーカルの声、うまくはないけど思い付いたアイデアは充分にこなせるギター、もろ60年だいニューヨークという感触のハモンド・オルガンの音、どれもありふれていそうで、ところが不思議とそうでもない。もしあなたがこれからガレージ・バンドを聴いてみたいと思うなら、まずその前にこの Blues Magoos や Electric Prunes 、 Shadows Of Nights 等をお勧めしたい。それはラジオのヒット・チャートを中心に動いていた60年だいUSの音楽シーンの1ページにはちがいないのだから...