温度計と湿度計


飼育環境を整える場合に、温度と湿度は大切な要素であることは、リクガメの飼育者にとっては常識といってもよいと思います。 では、温度や湿度はどのようにしてチェックするのでしょうか。

温度は、市販の温度計でチェックするのが普通ですし、湿度は湿度計でチェックするのが一般的です。特殊な施設や器具などでは、その施設や器具に付属している温度設定装置などで設定することもあるでしょう。サーモスタットなども付属していて、ダイヤルやデジタルのメーターなどで設定した温度を恒常的にキープしてくれるような装置もあります。たとえば業務用冷蔵庫や 孵化器などに見られます。

しかし、ホットスポットの下の温度を測るとか、環境温度を測定するとか、日向や日陰の温度を測るのは、温度計ですし、それぞれの相対湿度を測定するには湿度計を利用することになります。

様々な市販の温度計です。 いろいろな種類の温度計が市販されていますが、大きく分けてアナログタイプとデジタルタイプに分けられます。

特殊なものとして、 光ファイバー温度計や 非接触温度計などもあります。

1.アナログタイプ

 アルコール温度計と呼ばれる棒温度計は,安価で使いやすい温度計の代表です。最も一般的な100℃まで測定できる棒温度計に入っている赤い液は,アルコールではなく、色をつけた灯油です。200℃まで測定できる棒温度計には,より沸点が高い軽油が入っています。アルコール温度計という名称なのですが、メタノールやエタノールは沸点が100℃以下ですから,使えません。温度計中では気圧が高くなり沸騰しないはずですが,沸点に近づくと膨張率が大きくなって精度が出ません。
精度はJIS規格で,刻んである最小目盛りの±2目盛り以内と決まっています。つまり,製品としては一目盛りが1℃のタイプなら±2℃以内の精度を保っていることになります。実際は,出荷時には±1℃以内の精度となっているようです。
温度計は主に球部での温度を測定する道具のため,毛細管がその指標となっています。しかしその指標となっている部分の灯油も熱膨張するので測定値に影響します。つまり,球部と毛細管部分の温度差が大きいと,誤差を生じやすいという欠点もあります。

・バイメタル式 温度計 というのもあります。これは、温度によって伸縮性の度合いが違う金属を張り合わせて、温度変化によって曲がるようにゼンマイ巻になっています。その時の温度変化によってゼンマイが巻いたり戻ったりした動きで針が動くというものです。金属の劣化などで、一般的にはあまり精度の要求されない温度測定に利用されます。

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2.デジタルタイプ

最近は,デジタル表示の温度計が多数市販されています。温度が数字で表示されるので、分かりやすいのが魅力です。価格は、デジタルタイプの方が高いのが普通です。センサーの精度などによって、随分と価格差があるのも事実です。本体部分による測定のみでなく、コードによって本体から離れた部分にもセンサーが付いているタイプは、測定したい場所と表示部が離れていてもよいので、様々な用途に使えるので便利です。そのため、リクガメ飼育者の間でも利用者は多いと思います。又、セットしてからの最高、最低温度などを記憶していてくれるものなどは、いろいろなチェックに使えるので、夜間の最低温度のチェックなどに効果があります。
デジタル温度計は,サンプリング周期があって間欠測定になっていることが欠点といえます。また,センサープローブの熱容量が大きいと正確な温度が測定できにくい場合もあります。センサーは,サーミスタやダイオードなど様々なものがありますが、そこが価格の差にもなっています。

光ファイバー温度計は、焼却炉の温度測定などに利用されますが、一般的ではありません。また、この頃よく目にする非接触温度計は、 物体の原子や分子の運動状態によって発生する熱エネルギーに比例した赤外線エネルギーを受光し、その量を温度に換算して測定します。そのため物体に触れず、遠隔から、素早く、安全に測定できることがメリットですが、気体の温度は測定できません。ですから、リクガメの飼育環境の温度の測定には、あまり利用価値がないかもしれません。


また、湿度計にも主に3つの計り方があります。
1.バイメタル式湿度計
原理は温度計と同じで、金属に湿気を吸収しやすい、収縮率の異なる感湿剤を張り合わせたもので、 湿度変化によって曲がるようにゼンマイ巻になっています。その時の感湿剤の変化によってゼンマイが巻いたり戻ったりした動きで針が動くようになっています。
 
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2.デジタル湿度計
デジタル式は、櫛をかみ合わせたような形状の電極の間に感湿剤を挟み込み、感湿剤が湿気を多く含むと電流が流れやすく、乾燥すると流れにくくなる性質を利用し、その時の電流の流れやすさの抵抗の変化で湿度を測るものです。最近は、そのセンサーがより高度なものも開発されてきて、精度が飛躍的に高まっています。
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3.毛髪湿度計
昔から採用されている方法ですが、人の髪の毛が湿気によって膨らむ性質を利用して、その変化量を計算して湿度を表示するものです。



さて、このように様々な温度計や湿度計が市販されていますが、いろいろと使用していると、疑問も出てきます。同じ場所で測定しても温度計が違うと異なった温度を示すといったことです。因みに、上の写真でも、デジタル式の温度計での表示はすべて異なった数字になっています。2度や3度違ってもさほどの影響がない温度の測定の場合にはそれほど気にすることもないのですが、場合によっては1度の違いが大きく影響する場合もあるわけです。

リクガメの飼育においては、たとえば孵化器の内部の温度などです。1度違うために孵化しなかったり、メスとオスの違いが生じたりといったことが起こってくるわけです。森リクガメ研究所では、自作の孵化器を利用していますが、内部の温度については、中に4種類の温度計を入れて測定していましたが、困ったことに、すべて異なる数字を示すのです。それぞれの温度計の特性の違いや精度の違いによるものでしょうが、正確な温度を知る必要があるものについては、正確に測定できる器具で測定しなければ意味がないと考え、温度計を探してみました。

精度が高い器具は幾つか候補として考えましたが、結局 EX-900TRH(EMPEX)という機種を購入しました。詳細については、こちらなどの ページをご参照いただければよいかと思いますが、温湿度計です。連続使用ですとバッテリーが200時間しか?持たないので、常に設置しておき表示させておくといった用途には不向きですが、正確な温度や湿度を測定したい場合に利用し、すでに所有している様々な温度計、湿度計の校正用に利用しています。

電源をONにしてから、2時間ごとに計測した温度や湿度を24時間分記憶していてくれる機能などは、飼育環境の見直しなどにも効果を発揮してくれるでしょう。また、一般的なデジタル温度計に備わっている機能はほとんど有していますので、様々な用途に利用できる機種です。専用のケースなども付属しています。

リクガメの飼育において、かなり正確な温度や湿度を把握する必要が生じてきた飼育者は、温度計や湿度計についても自分の好みでよいと思いますが、それなりの機種を1台持っていると安心できるのではないでしょうか。

お値段はそれなりにしますが、彼らの健康などを考えれば投資する価値がありそうです。