屋内砂場設置例
リクガメの屋内での放し飼いを考える場合、頭を悩ませることの1つが「床材をどうするか」という問題です。トイレのしつけが難しいので、それぞれの飼育者が工夫をこらしている問題です。森リクガメ研究所の現在の仕様としては、元々は木のフローリングの床の上にクッションフロアーを敷き詰めています。クッションフロアーというのは、表面はビニル系の長尺材でフローリング柄や石調の柄など様々なプリントが施されたものがあります。裏面にはスポンジが一面に貼ってあり、歩行感をソフトにしてくれるとともに、防音の効果と断熱の効果も持たせた、比較的安価な床材です。
ホットスポットや餌場として利用するゾーンには、フローリングの上に直に貼っていて、一部には、フローリングの上に床暖房を施し、その上にクッションフロアーを乗せてあります。これは、トイレの始末が楽であることと、アルコールタイプの除菌スプレーなどが気楽に利用できるなどの利点があります。エサも濡れていてもそのまま床に置くことができますので、便利ではあります。人間とカメの共有スペースとしての妥協点を考えて選定しました。しかし、冬場は屋内の生活を余儀なくされるカメ達にとっては、必ずしも快適な材料ではないのも事実です。歩行する場合にもフローリングに比べれば、多少爪もたつので、少しはましでしょうが、それでも滑るでしょうし、オシッコをしても、人が拭き取るか、蒸発するまでは、濡れたままですから、ホットスポットでオシッコしてしまったりすると、気持ち悪いでしょう。
屋内でも自然素材に触れさせてあげたいということと、メスが成熟してくると、屋内でも産卵行動をとりますので、どうしても砂場を設置する必要が出てきてしまいました。当初は、清潔さの確保ができるかどうか、また他の部分がひどく汚れるのではないかなど、いろいろ心配なことも多かったのですが、設置に踏みきりました。
しばらくは、左のようにトロ舟(工事のときにモルタルを水と練ったりするのに利用するプラスチックの大型のプレート)を設置して、中に土を入れて利用していました。産卵のためには、深さがかなり必要なため、他の床面とは20センチ程度段差ができてしまいます。彼らが自由に砂場を利用できるようにするためには、階段を作成して、昇降できるようにする必要があります。これはそれなりに効率的な屋内砂場の設置方法です。実際、カメ達には好評で、ホットスポットを一画に設置しておくと、とても人気のあるコーナーになります。当研究所においては、今冬から、砂場増設の必要が生じたため、せっかく増設するならば、美観等を考慮して、今までの砂場を拡張するような設置方法を計画しました。屋内砂場計画のある方は、参考にしてみて下さい。
1)車のトランクに濡れたものなどを入れるためのプレート
2)そのプレートの四周を囲むための木材
3)屋根などの補修用防水テープ
4)木材に塗るペンキ(外部、浴室用)
1)のプレートは左のようなものです。ポリエチレンでできているとても軽量なものです。大きさと設置位置を確認し、その四周を囲むように木材の寸法をとって、木材は切断します。多少大きさに余裕を持たせて、木材はカットしておきます。木材は耐水性の高い桧や松材などがよいのですが、加工性を考えるとそれ程こだわらなくてもよいでしょう。耐水性を高めるためと、他の家具などとの調和性を考慮して、ペンキを塗るならば、ファルカタ材などでも十分対応できます。実験的な意味を考えて、今回はファルカタ材で作成してみました。
板のタテ方向は20センチメートルのものを利用しました。その寸法がそのまま砂場の深さになります。ヨコ方向の長さをプレートの寸法に合わせてカットしてペンキを両面に塗ります。片面を塗って30分程乾かしてから、裏面を塗ります。ペンキを塗る際には、ローラーを利用するときれいに塗ることができます。ペンキ自体も最近は良いものが多く市販されていますので、屋内で作業しても、臭いも気になりません。写真の作業しているすぐ脇で、ホルスが、ホットスポットで暖まっていますが、気にする様子もありませんでした。ペンキは、もちろん無臭の水溶性ペイントです。乾くとかなり耐水性能がありますので、直に土が接しても、耐久力があるので、長持ちさせることができるわけです。
ペンキが乾いたら、プレートの四周を木材で囲みます。木材同士の固定は、ファルカタ材の場合には、木工用ボンドを併用の上ビス止めします。プレート自体の四周は、受け皿状になっているので、5センチ程の立ち上がりがあります。その立ち上がり部と木材が、理想的にはピッタリ接するとよいのですが、数ミリ程度の隙間があっても、次の行程でカバーできます。四周を囲って、うまく治まることを確認しましたら、プレートと四周の木材の接する部分に
防水テープを貼って行きます。トタン屋根 などの補修用に販売されているアルミ製の 防水テープを使用しました。テープの表面はアルミで、裏面に防水性の粘着材が貼ってあり、さらにその粘着材に裏紙が貼ってあります。実際に貼る時には、テープ自体はよい長さのところで、ハサミでカットし、裏紙を剥がしながら貼って行きます。まず、コーナー部分以外の4辺に直線的に貼った後、コーナー部分を直線部分にオーバーラップするように貼ります。
この状態で、器は完成です。後は、設置する場所に移動して、セットします。少しここで工夫したのは、既存のハチ植えをそのまま中に入れてレイアウトしたことです。今まではカメの視線からすると、上方にあった植物(ここではハイビスカス)が、土を入れれば、床から生えているように見せることができます。ホットスポットの高さや距離なども、この段階で調節しておくとよいでしょう。一旦土を入れてしまうと、移動するのが大変ですので、設置位置を慎重に検討しておいた方が無難です。今回は、既存の砂場の拡張を考えたので、既存の砂場にピッタリ接するようにセットしました。土の量を調整することによって、既存の砂場から段差なしで、この新設砂場に渡れるようにします。
土を入れて完成です。土は市販の園芸用のものを使用しますが、化学肥料などが混じっているものは避けます。また、牛糞などが入ったものや、有機肥料などの混じったものも屋内ですので避けます。臭いの問題があるからです。
衛生面では、実際に設置してみるとさほど心配入りません。オシッコは、すーっと吸収してくれますし、ウンチをした場合も土が回りに付着するので、他の床材の場合のようにカメの腹甲にベチャっと付着することは、むしろなくなります。気付いた時に土がコロモ状に付着したものを取除く程度で、かなりの間は、大丈夫です。室内ですので、すぐに乾燥してきますので、1週間に一度程度散水して、適度な湿度を与えるようにしています。この水分については、極度に乾燥させた状態にしておくと、カメが歩行するだけで、土埃が舞うようになるためです。最初砂場を設置した時に、涙目になった個体がいて、原因が思い当たらなかったのですが、もしやと思って埃がたたないような湿度を保つようにしたところ解消しました。かといって、明らかに湿ってジメジメしているような状態は避けるべきですので、その部屋の乾燥状態によって、こまめに調整するとよいでしょう。数カ月に1度程度土を入れ換えるとより安心です。
さて、砂場の拡張後ですが、この砂場の上部にメタハラを設置したことの相乗効果もあって、今まであまり砂場にこなかったカメ達もワラワラと集まって砂場で過すことが多くなりました。カメ達が、脚に付着した土を部屋の他の部分に運んでいって汚すのを防ぐために砂場に登っていく階段の下部にタイルカーペットを1枚設置しました。この効果は大きく、カメ達の脚拭きマットになっています。
砂場の面積の分だけ、人の生活スペースは狭くなるのは事実ですが、同じ面積が狭くなるのでしたら、水槽をセットするよりも砂場をセットした放し飼いも検討してみる価値があると思います。今のところ、彼らには気に入ってもらえています。