不況から脱出するためのポーター競争戦略


【値引き地獄】

 取引先からの注文が激減し値引き圧力も高まる中で、事業から撤退する企業が急増している。
 もう手はないのだろうか。高額商品である住宅ですらインターネット販売による低価格化が始まっている。
 ものは安くしないと売れないのだろうか。そしてインターネットは安売りを促進するだけの道具なのだろうか。
 今、世の中では売上をのばしたり競争に勝つためには値引きするしかないという重苦しい空気がただよっている。  本当にそうなのか。数少ないが不景気の中で新しい成長の息吹を感じさせる企業がいくつかある。
 彼らは値引きで復活したのではないのである。

【本当に安くしてほしいのか】

 深刻な不況に苦しむ関西において経営者同士で交わされる話しで最近よく聞く言葉は「お宅はいつ廃業するのか」「あそこは廃業できて幸せだ。うちは借金があるから廃業もできない。」というものだというから寒くなる。
 取引先からは取引数を減らされ値段も下げられるでは確かにやっていけないと同情してしまう。
 取引先が関西を去り、人件費が安い中国とも戦わなければならない。いったいどうすればいいのだ。
 そんな中で明るい話を耳にした。
 関西の企業グループで下請け企業同士がチームを組んで取引先に対してサブアセンブリまで請け負うことによって提案力、コストメリットを出そうとしているのだ。


【基本に立ち返れ】

 実は大手メーカーの購買担当者の声を聞くと必ずしも地元の下請け企業を苦しめようとばかり思っているわけではないという話もある。
 ただ安くしろといっているのではなく、全体のコストダウン、収益性向上に貢献するような前向きな提案こそ心待ちにしているのだと。
 だいたい、取引先に値引きばかり交渉する企業に先があるとは思えない。
 日産のゴーン社長は下請け企業に提案型サプライヤーに転換することを迫ったのであり、実際、下請け企業からの提案で経営改善が実現できた場合には収益成果をその企業に還元することを有言実行した。
 自分のことしか考えない企業は市場から消え去るのは不況のせいではない。
 商売の基本は世のため人のためとは松下幸之助氏がいっていたではないか。


【中小企業にこそふさわしいビジネスモデルがある】

 人件費が安い中国やアジア諸国に関西の製造業が押されている。
 同じ内容の仕事を安い賃金で働く人がいるかぎり、そこにその仕事が集まるのは当然である。
 高度成長時代の日本も同じことだった。ではそのとき、米国はどうしたのか。
 米国ではベンチャー企業が次々と立ち上がり、既存企業も新事業を創成した。
 コモディティ(一般)化した商品やサービスはそれ自体で差が付かず価格競争となる。
 生産コストが安いところが勝のが自明の理である。
 米国ソレクトロンのような巨大な工場企業をめざすか、中国のようにまだ人件費が安い国で生産するのが当然だろう。
 そう考えれば中小企業に残された道はなんだろうか。
 米国でもそのときコモディティ化の大波(日本の高品質低価格製品)に飲み込まれた中小企業のほとんどは消え去っていった。
 しかし、一部の企業はコモディティ化の波がくる海から未知の海に向かって航路を変更したのである。
 そう、中小企業にこそふさわしいビジネスモデルがあるではないか。
 新しいチャンスに向かって大企業よりも早く飛び込むスピードだ。

【チーズはどこへ消えた?】

 チーズはどこへ消えた?」という本がベストセラーになった。
 苦労して見つけたチーズが突然なくなっってその場で呆然とする小人とさっさと次のチーズを探しに旅に出たネズミの話。
 コモディティ化してしまって価格競争の罠に陥った商売こそこのチーズではないだろうか。
 我々は新しいチーズを求めて旅立つ決断をするべきなのだ。


【競争戦略】

 このあたりで経営学の理論について考えてみよう。
 有名な経営学者であるポーター教授は競争に勝つための戦略として三つの選択枝を提示している。
 低価格化戦略、差別化戦略、集中化戦略の三つである。
 低価格化戦略は文字通りいままさに企業が直面している値引き競争による勝ち抜き合戦ではないか。
 そして差別化戦略、集中化戦略こそ我々中小企業がとるべき新しい航路である。
 差別化戦略はまさに先にお話しした新しいフロンティアへの挑戦である。
 中国でできないことを何か、競合企業が提示する商品やサービスメニューはつくれないか、他社と違い提案書は書けないのか。
 小手先のIT戦略などたいしたことではない。もっとメジャーな議論をしようではないか。

【パワーポイント資本主義】

 ソフトバンク孫社長が「パワーポイント資本主義」というユニークな言葉を生み出した。
 マイクロソフト社のプレゼンテーション資料作成ツールのPowerPointでいかに人をうならせられるような企画書をつくれるかどうかがこれからの資本主義社会だという意味である。
 差別化戦略がマクロ的な発想とすると集中化戦略はミクロ的な発想といえるかもしれない。
 今まで取り組んできたビジネスにおいて焦点を絞り込んでもっと専門性を高めて競争力をつけようという戦略である。
 ITバブルの終焉で軒並みホームページ制作会社の業績が悪化している中で業績をのばし続けている企業もある。
 たかがホームページ、されどホームページである。
 筆者自身納得できるホームページ制作会社は指折り数えるくらいしかない。
 そのような企業のホームページ制作サービスパンフレットの内容はやはり「パワーポイント資本主義」にふさわしいものだったりするのである。

   日本経済新聞社 ビジネスプラン作成ソフト
 事業計画書の作成を支援するソフトウエア。ビジネスプランの策定をワードで財務シミュレーションをエクセルで行い、パワーポイントに出力できる。
 監修 大野木猛(公認会計士)  http://mfg07.nikkei.co.jp/pub/cdrom/45535/45535.html

【不況から脱出するための競争戦略】

 差別化戦略と集中化戦略、新しいチーズを探しにいくしか不況を脱出するための道はない。
 そこにとどまって廃業の道を選ぶのではなく、打って出ようではないか。
 同業者も異業者関係ない。顧客も取引先も関係ない。
 次のチーズを探しにいくならば新しい仲間だ。
 チャレンジ精神を武器にしてすでにみつけたチーズに群がる敵を見返してやろうではないか。

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