情報システム構築の手順


<第一段階>情報化の決断−情報化は経営者が旗を振る−

 情報化の出発は自社にとって必要な命令(計画)と結果(実績)について経営戦略から明確にすることから始まる。
 経営戦略は経営者が策定するのが当たり前なのである。
 情報化を社員や業者に任せっぱなしの経営者が成功するはずがない。
 情報化の旗は経営者が振るのが当たり前なのである。
 情報化ができていない企業はパソコンに弱いではなく、経営戦略に弱いのではないだろうか。

 たとえば売上の短期的な向上は望めない場合の経営戦略として利益率の向上を目標とした場合、経費のムダを減らすことが業務命令(計画)であり、業務結果(実績)について統制していく必要がある。
 そのためにはまず、自社におけるコスト項目を明確化し、何に、いつ、どこで、なんのために、いくら必要だったのかを情報収集するためのルールづくりから始めなければならない。

 情報化というのは何もパソコンを使うことが必須であるのではなく、財務会計のように伝票を集めて手作業でも可能なものなのである。
 情報化が難しいのは財務会計以外の分野で標準的な伝票システムが構築されていないからだ。
 営業日報や工程管理表なども伝票の一種と考えられるだろう。既にコンピュータ化された業務では入力画面が伝票なのである。
 情報化のスタートにはコンピュータの知識よりも業務改善しようという意欲の方が重要だといっても過言ではないだろう。
 計画が先でも実績分析が先でもない。どちらもフィードバック、フィードフォワードされる関係にある。

 情報を伝票化することによって結果(実績)から命令(計画)を軌道修正するためのフィードバック情報を得ることが可能になる。
 そのためにはどのような結果(実績)分析が有効なのかが問題となる。
 これが情報化のタネ、SISやリエンジニアリングのカラクリにあたるのだが、コンピュータ技術者が知っているとは限らない。
 深い業務知識と情報技術知識に加えて、業務改善のためのアイデア力が必要となる。
 外部コンサルタントの力も大いに活用して欲しいが、自社の業務の問題点は自社社員が一番よく知っているはずである。
 情報化の推進の中心はやはり自社にあるべきなのである。

<第二段階>情報化の推進チームをつくる

 経営戦略に基づいて情報化を推進することが決まったら、次は情報化のための推進チームをつくることになる。
 推進チームのメンバーに経営者が必要なことはいうまでもない。情報化の指針である経営戦略を策定するのは経営者だからだ。
 推進チームのメンバーを決める場合、業務知識や経験、年齢は関係がない。むしろ経験者は障害になることがある。
 推進チームのメンバーに最も必要な資質は業務改善に対する意欲、新しい技術知識の活用への意欲である。
 業務知識や経験は担当者からヒアリングすればよい。重要なのは既成概念にとらわれなればならない。
 エンドユーザコンピューティングがよく言われるが自分の業務の見直しは小手先に終わりがちなので注意が必要である。
 推進チームには抜本的な改革を計画しつつ、着手可能な改善テーマから地道に追いかけていく冷静さが必要なのである。

 以下は標準的な情報化の推進チームの編成例である。



 情報化の推進チームにおいてよくありがちなことだが、情報化の推進のための業務が現行業務よりも低くなってしまっている場合がある。
 情報化推進のメンバーがを現行業務の遂行に遠慮しながら作業する例があるが、これではよい結果がでるはずがない。
 情報化推進に対する社内理解と、情報化の推進のための業務そのものの業績評価を伴わないために情報化の推進チームが有名無実化してしまった企業もあるのだ。

<第三段階>情報化計画を立案する

●長期計画
 経営計画に戦略的な長期計画と具体的な実現目標を掲げる短期計画があるように、情報化計画にも長期的な視野で戦略を立てる必要がある。
 情報化の推進自体も経営戦略であり、計画と実績の差異を分析して軌道修正していかなければならないのである。
 特に情報化技術の進歩のスピードは速く、改善すべき業務テーマも長年固定ではないことから状況に柔軟に応じた軌道修正が必要なのだ。

 情報化の効果をより高く出したくても社員のパソコン操作能力が低くては望むべくもない。
 営業日報一つ取り上げてもワープロソフトだけが取り扱える社員と表計算ソフトが取り扱える社員では分析できる内容が大きくことなってくる。
 パソコンを新規に導入する企業ではまず社員全員がワープロソフトを使いこなせるように教育し、電子メールなど文書レベルでの情報化の効果を導き出し、次の段階で社員への表計算ソフトの教育と表計算ソフトの持つ統計解析機能を駆使した情報化の効果を導き出すことを計画すべきであろう。

 情報化は社員の能力教育(パソコン活用能力だけでなく、業務改善能力も含めて)なしには進んでいかない。
 経営戦略をスタート地点として社員の能力教育をにらみながら種を育て実を収穫し続けていくのである。
 経営戦略の実現を目標におきながら、自社社員のパソコン活用能力を考慮に入れて計画的な情報化を図っていく必要があるのだ。

●短期計画
特定業務における問題解決のために行うパッケージの導入や開発委託においては綿密な情報化計画を策定する必要がある。パッケージ導入や委託開発の失敗の多くが事前調査や準備が不十分であることに起因している。委託時における契約内容が不十分で納品条件が明確でない場合が多く見受けられるが、これでは業者次第、運次第である。導入前に自社としてどのような状態が望ましいのか明確にしておく必要がある。
 以下、標準的な情報化計画(短期)の例を示した。
<第四段階>解決策を選択する

 では、情報化とは具体的にはどのように進めていけばよいのだろうか。
 企業における情報化の方法は先差万別である。ワープロソフト、表計算ソフトを導入して基本的な機能を活用するだけで作業が大きく効率化する場合もあれば、電子メールなどグループウェア製品を導入することによって、情報の共有が進んで業務のスピードと質が向上する場合、データベースソフトによって販売業務や生産業務などにおけるきめ細かい計画と実績の差異分析が可能になる場合もある。
 また最近ではインターネットを利用してマーケティングや電子取引、情報収集などを計画する例も多くなってきている。

 様々な情報化の解決策の実現のためには社外の業者やコンサルタントの力が不可欠になってくる。
 しかし、必ずしも部外の力は必須ではない。すべてを任せるのではなく、自らが経営戦略にもとづいて打ち立てた情報化計画に基づいて必要な部分だけを外部利用すればよいのである。

 企業の中には情報化の解決策を業者任せにしたり、パッッケージソフト任せにしてしまう場合があるが、部外者が一方的に押しつけてくる解決策が自社にとって最善の解決策になるとは限らないことは明白なことだ。
 プログラム開発が必須に近いオフコンや汎用コンピュータならばしかたないが、パソコンではそのようなことはない。
 パソコンで動くソフトウェアは皆安いのだから、解決策の選択に十分に時間とコストをかけて欲しい。

 また、パッケージソフトで失敗が多いのも価格の安さからその導入評価をしっかりとしないからではないだろうか。
 魚つりでもゴルフでもうまくなるためには初めにお金がかかる。撒き餌をけちっては魚は寄ってこない。
 情報化も同じではないだろうか。初期投資をケチれば結果は期待しにくいのだ。
 パッケージソフトを導入する場合でも、ソフト自体が安いのだからその分、導入分析にお金をかけるべきなのだ。

<第五段階>解決策を導入する

 最後に解決策を導入する場合、大きな問題となるのが業者の選定である。
 コンピュータについてはよくわからないので業者任せだという話しをよく聞くがとんでもないことである。
 自社事業に直接関連する商品については購買部門でバイヤーがシビアな眼で選定しているはずなのにである。

 コンピュータはソフトウェアがなければタダの箱であることを考えれば見積書一つで契約するということがいかに恐ろしいことかわかるはずだ。
 情報化の商品価値はパソコンの名前でもソフトウェアの名前でもない。
 パソコンやソフトウェアを使うことで実現できる解決策の中身にある。
 ならば、見積書ではなく解決策を実現するための説明書(通常は提案書という形態)がなければおかしいのではないだろうか。

 業者から提案書を受けるためには企業側が明確な解決策を持っている必要がある。
 自社の持つ解決策を提案要求書という形にまとめて複数の業者から提案を受けて最善の提案を選択することが最も望ましい。
 SI認定事業者という名前を聞いたことがあるだろうか。
 実はSI認定事業者とは通産省が解決策にもとづく提案とその実現までを責任もって成し遂げる体制を持っている業者にその能力を認定したものであるが、現実にはSIを名乗りながら名ばかりの業者が多いのだ。
 しかし、少なくとも自社において情報化計画と解決策について策定するような企業では偽SI事業者にだまされることはないだろう。

 さて、業者も選定し、具体的に解決策を導入する場合だが、導入時点においても十分な計画と準備を行って欲しい。
 情報化にしろ新しい業務改善は必ずしも期待通り効果が出るとは限らない。
 計画時点では予測しなかった問題点が発生するかもしれないからだ。
 ここでも計画と実績の差異分析による軌道修正が必要なだけなのだが。

 情報化の効果を評価するためにはまず試験的に部分的な運用を行うことが有効である。
 モデル部署やモデル店を選んで試験的運用を行ってみるのである。
 これは情報化における社内モニター制度であり、プロトタイピングと呼ばれる方法である。
 特にグループウェアなどパソコンの最新技術の利用においてはその導入まで利用者が活用効果を理解できないことがあり、試験的運用後にはじめて改善ニーズが数多く社員から提案されるケースが多いのだ。
 また、試験的運用中ならば万が一、新システムに問題があっても従来の方法で業務を継続できる。

 業務改善はしくみを変えるだけでは実現しない。
 そこで業務を行う社員の意識まで変革しなければ消化不良どころか業務がストップしてしまう危険さえあるのである。

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