情報化先進企業の切り札−GIS(地理情報システム)−


<ケース1>
 生命保険会社に勤める営業社員A氏は、朝出勤時に今日の訪問先を決めるためにパソコンのスイッチを入れる。
 しばらくすると、画面にはA氏が所属している営業所が管轄する地域の地図が表示される。
 地図上には住宅が青色や赤色で表示されており、A氏はしばらく考えた後、未訪問先を示している赤色表示の住宅のいくつかをマウスをクリックして選択した。
 すると、地図上にはA氏が選択した住宅を結んだ移動ルートを示す白線が瞬時に現れ、地図の横には居住者名、住所、電話番号、過去の訪問履歴、保険の加入状況を示した一覧表が表示された。
 A氏は画面のプリントアウトすると、足早に出かけていった。

<ケース2>
 関東を中心にレストラン経営を展開しているB社では、C氏が提出した古都京都に新店を出す計画について検討していた。  経営会議においては、B社の特徴である和食系レストランは古都京都においては競合店が多いため、顧客を獲得するのは難しいという意見が大半であった。
 しかし、C氏は自信ありげに地図資料をスクリーンに映し出すと、会議の雰囲気は一転した。
 そこには他店からB社の和風レストランに移ってくるであろう顧客数を精緻に予測する商圏分析の結果が表示されていた。
 B社のレストランは居酒屋よりは料金帯が上になるが、高級料亭的な店舗づくりを特徴としており、比較的安い予算で料亭気分を味わえるという自社のセールスポイントが古都京都においても十分に受け入れられることをC氏はコンピュータを使って示してみせたのである。
 C氏が自分の足で京都の町を探索し、他店の来客情報などをカウント収集してきたことは言うまでもない。

<にわか注目を浴び出したGIS(地理情報システム)>
 先に紹介した事例は架空の会社のものとして理解していただきたいが(しかし限りなく真実に近い)、二つの事例において登場する情報化ツールがGIS(地理情報システム Georaphic Information Systems)である。
 地理情報システムは、地理的位置や空間に関する情報を持った自然、社会、経済等の属性データ(空間データともいう)を統合的に処理、分析、管理し、その結果を表示する情報システムであり、都市計画や防災、福祉等に関する地理的な情報を重ね合わせることができ、より迅速で正確、高度な処理を行うことが可能となっている。
 特にビジネス分野における応用としては、地図とさまざまな情報をつなげて店舗の出店や人口動態の把握などに反映させるなどの実例がある。電子地図上に商業統計や人口密度などのデータを重ね合わせて、マーケティング活動の資料にしたり、地図上に店を表示させることで、目的に応じた立体的地図づくりができる。
 現在の電子地図情報には経緯度・地形・地質・土壌・水文・気候・気象・植生などの自然的要素だけでなく、土地利用・建物・交通システム・通信網・地下ケーブル・人口・職業・産業・文化財・歴史・宗教・言語・民族など、広い意味での地理的な情報を統合することが可能なのである。

<地理情報システムの新たなる展開その1 POSデータとの連携>
 さらに、最近の地理情報システムの動向はさらに幅広い分野での普及を促すものとなっている。
 その一つの理由は既存POSデータなど他の住所情報を含むデータとの連動の容易化があげられる。
 ゼンリンなどの主要な電子地図には属性データとして一般的な市区町村情報などが含まれており、Windows上のOLE技術などによって、簡単に既存POSデータとリンク付けが可能となっているのである。
 POSデータを元にした店舗ごとの顧客分布や、販促結果の検証、あるいは産業統計データとリンクした販促対象の絞込みにも利用できるだろう。電話帳データのCD-ROM製品も登場してきており、顧客の居住地分析を行うことは非常に容易になってきている。

<地理情報システムの新たなる展開その2 ナンバー・ディスプレイとの連携>
 また、NTTがサービスを開始した発信電話番号通信サービス(ナンバー・ディスプレイ)を使って、かかってきた電話番号をコンピュータが自動的に検知し、それに応じたサービスを行える。タクシーの配車を自動的に行ったり、ピザの宅配をフリーダイヤルで受けて、最寄りの営業店に自動的に回すということができる。

<地理情報システムの新たなる展開その3 インターネット技術との連携>
 最新の地理情報システムでは、1台のサーバだけに地図情報システムをインストールするだけで、社内のパソコンはインタ−ネットエクスプローラーなどのブラウザソフトでどこからでもアクセスすることが可能となっている。
 インターネットを経由してのモバイル環境での利用の可能であり、営業マンが出先から携帯電話とノートパソコンを使って社内の地理情報システムにアクセスすることも可能なのである。
 マーケティングは今やワンツーワンマーケティング(一人一人の顧客ごとのマーケティング)の時代である。電子地図上で捕捉した販促ターゲートにインターネットメールで直接本人に販促をかけるということもこれからは(いや既に一部の先進企業では始まっているかもしれないが。)当たり前になっていくことだろう。

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