21世紀に向けて今、企業がすべきこと−CALSな関係−


■親会社から下請会社に主導権が移る?

 そのようなことが実際に起こりだしているのだ。
 有名な事例に村田製作所とソニーの関係がある。
 ソニーは村田製作所に必要部品を発注するのに最終製品の生産計画を事前に開示している。
 村田製作所ではこれを見れば何をどれだけつくっておけばよいかわかるため、過剰な在庫を持つことも欠品を発生させることも防ぐことができる。
 同じようなことが流通業の世界でも起こっている。
 ウォルマート社はPOSデータをメーカーに開示することによって、メーカー側において何を納品しなければいけないかわかるため、メーカー側で自動発注してくるのだ。ウォルマート社と同様のしくみをイトーヨーカドーと花王が始めたことで話題を集めている。

■CALSから始まる企業間連携

 ここで紹介した事例はECR(効率的消費者対応)、あるいはQR(クイックレスポンス)と呼ばれるいわゆる納入業者による委託商品自動補充のしくみである。ECRは食品・雑貨業界で、QRは繊維業界で使われているキーワードでこの二つは同義語と考えてよい。
 実は、ECRもQRもその根本にはCALSという考え方が存在する。CALSとは「生産・調達・運用支援統合情報システム」を意味するキーワードだが、企業間統合(企業間におけるエンタープライズインテグレーション)を目指すものであり、企業間の情報交換を目的としたEDI(電子データ交換)から発展して企業間における情報共有、言いかえれば情報システムの連結・統合を目的とするものである。

 私はCALSというキーワードが企業を超えた業務プロセスの連携をその本質としていること、企業間グループウェアとでも呼べるかもしれない考え方に大きな意義を感じている。
 村田製作所とソニーや、イトーヨーカドーと花王が実践しているECRあるいはQRは他社に類を見ない企業間連携であり、注目すべきことは非常に強力な戦略的アライアンスではないだろうか。

 インターネットの登場によって、企業間において情報を共有したり、業務を連携することが特に難しいものでなくなりつつある。府外の企業、いや海外の企業とでも新しい取引関係を結ぶことは珍しいことではないのである。
 問題なのは、人がそうであるように、誰とでもパートナーになれるわけではないことなのだ。
 信用できる会社、信頼を置ける会社こそ戦略的アライアンスは実現する。
生産計画や販売実績を開示しても、それを活用できるしくみを実現できていない会社と組んでもしかたがない。

 開示した自社の生産計画や販売実績を自社と同等あるいはそれ以上に活用してくれる同盟企業があるとしたら企業間連携が始まるのは自然の結果である。
 ソニーもウォルマートもイトーヨーカドーも欠品率の低下と在庫コストの圧縮という矛盾する経営課題を同時に改善しているのである。

■CALS企業に成るための三か条

 こんなにいいことづくめなのになぜ企業間連携自体がまだまだ珍しいことなのであろうか?
 私は企業関係の未成熟性が問題であると考えている。
 下請企業は親会社から仕事をもらうだけの下請け根性が、親会社は親会社で横暴な姿勢が問題なのだ。
 親会社と下請会社も、あるいは小売業社と一般消費者との関係も同様で、みんなお互いのニーズとシーズとを提供し合う相互補完関係にあるという当たり前のことができていないのではないだろうか。

 自分が欲しいものを最も満たしてくれる商品やサービスを提供してくれる相手が最良のパートナーである。
 言いかえれば自分のことを一番よく理解してくれる相手が最良のパートナーなのだ。

 CALSの世界では、親会社が下請企業に発注するのではない。下請企業が親会社に補充するのである。

 最後に、多くの企業がCALS企業の仲間に参加できるようにCALS企業になるための三か条を示しておく。

 一、信頼を獲得できる高品質な経営を実現すること。
 「うちは信頼できます。」ということばだけで自社の重要な情報を共有するパートナーとして組めるだろうか。
 高品質経営を証明するISO9000の認証はあらゆる企業において重要テーマのはずである。

 二、広く自社の広報と他社に関する情報収集に努めること。
 インターネットは企業のネットワーク化のための必須ツールである。
 ホームページによる広報活動とパートナー探しはCALS企業では当たり前の活動である。

 三、業務を標準化して企業間連携に備えること。
 社内業務を標準化しておかなければ企業間での情報共有や機能連携は不可能である。
 海外企業との連携も考えればグローバルスタンダードへの対応が不可欠であろう。

 さて、あなたの会社は取引先とCALSな関係になれるだろうか。それとも…

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