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ねるとん


やあ皆さんこんにちわ。
本日は正しい虫講座:初級編へようこそ。

さて今日の講座内容は”ねるとん”です。

-- ねるとん --
まだ参加したことがないロンリー系虫男子が密かに胸をドキトキときめかせ、
かつ人前では参加意志を全力で否定してしまうという、このステキイベント!

本日はコレについて思うところを、虫マスターこと私:サカイが話させていただきます。
拙い文章ですが、5分程おつきあいください。



まず参加気構えからですが、間違っても、
*いやねホラ今の職場ほとんど女性いないし、やっぱ新しい出会いを求めるためにはサ。
*いやあ先輩に誘われちゃってさあ、付き合いだよ付き合い。
*最近合コンないしさ、たまにはこういうのもいいかなと思ってさ。
とか言い訳してはいけません。

上記セリフが許されるのは現在カノジョがいる人だけです。
現在の環境に女性がいなかろうが、先輩に誘われなかろうが、合コン全然やる機会がなかろうが、
ロリアニメ大好きだろうが、ハードコア系SMマニアだろうが、性格超最悪とか言われようが、
オカマだろうが、ニューハーフだろうが、実は肉体的には女だろうが、ブオトコだろうが、
デブだろうが、ハゲだろうが、すっげえクソオタクで腐臭を100メートル四方にまきちらしてようが、
インポだろうが、アクシズを地球に落とそうともくろんでようが、上記要素全部あわせ持ってようが、
いる”ヤツには、彼女がちゃんといる筈です。

いないっつうコトは”認められてない”ンですよ、人として。
”たまたまチャンスがないだけ”でなくて、”ダメ人間だから誰もよってこねえ”だけなンだよね。
あ、かってはとか昔はとか言っちゃってると、ますますダメさに拍車をかけるだけな。
というコトでロンリー街道暴進中なヤツぁマジ屑な。や〜い屑ゥ屑ゥゥゥ!
ボクがね。


つまりです。
ただでさえダメなンだから、くだらねえ参加の言い訳なンざするなっつー事をまず言いたい訳ですよ。
素直に”寂しいンだよう彼女ほしいンだようわらにもすがりたいンだよう”でいいじゃねえか。
カッコ悪ィのは百も承知で、そンなもん女いねえ時点で無茶苦茶カッコ悪ィンだから、ここはもう
開きなおりましょう。

だからアレな、独りで参加な。

・・・あ、一瞬舌を噛み切りそうになりました。危ない危ない。

言っときますが、今までの前振りはボクが独りで参加してきた事に対しての言い訳ではないですよ決して。

・・・あ、一瞬舌を喰いちぎりそうになりました。危ない危ない。



つーワケで独りで参加してきました。当たり前です。
ただでさえイタい思いしそうなトコに持ってきて、ダチとダブルでイタくなってどうするよ。
それならまだしもダチがイイ具合になって、ボクはロンリーお帰りコースになったとしましょう。

「(乾いた虫スマイルで)よ良かったじゃん。あ、じゃ・・じゃあ俺帰るから・・・」
「あ、ああ。(少しの間があって) ・・・・わりいな

わりいな、の”わりい”を聞き終わる前にボクはビグザムに特攻しちまうでしょう間違いなく。
スレッガーばりに”まだまだあ!”とか言いながら。
まだまだあ!じゃなくて、もう充分すぎるっつうのマジで。
そンなにイタいのもういらないのッ!やめてッやめてようッ!!

ほら少しシミュレーションしただけで、もうアスカばりにイタいです。
独りで参加した方がいい理由はもう充分に御理解いただけましたね。

というワケで参加してきました。イベント企画会社は”東京夢企画”つうトコロです。
ここを選んだ理由は、サクラが少ないらしい、とか、前の彼女をここでゲットしたから、とか、
ダチがここで嫁さん発掘したから、とか、堅苦しくないから、とか、まあ色々都合が良かったからです。

時間ぴったしに、雑居ビル7Fにあるこじんまりとした会場に着きました。
ハイいきなりです。参加者がまだ独りしか来てません。
この時点でよっぽど踵を返して帰ろうかな、とか思いましたが、今帰ってもキャンセル料は全額
きっちりとられてしまいます。仕方なくイヤ〜なものを胸に感じつつも一番始めに来ていた方の
隣にちょこんと座りました。

座った瞬間、何か妙な空気を感知しました。
なんつうンですか?エロ本コーナーで知らない人に混じって立ち読みしている時の雰囲気に酷似
してるって言ったら男性の皆さんは分かってくれますかね。
お互いに牽制しあっているようなあの雰囲気。でもなぜか皆すっごく礼儀正しいのな。
この時点で、はやくも死にたくなってきました。
”逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ・・・”
頭の中でひたすら念仏のように唱えます。
”そう!逃げちゃ駄目だ!”

逃げろやボケ。
イヤもう手後れです。生まれてきた時点でな。



さて、開始時間を5分程過ぎた頃から、ぼちぼち参加者の皆さんが集まりはじめました。
アレ?やけに男性の比率が多くねえか?
開始時間を15分過ぎてイベントが開始された時点で、男女比率30:20ってカンジでした。
「ウチは男女比率はイーブンでやってますので」とかホザいた受付お姉ちゃんの頬をMy Sonで
びったンびたン往復びンたしたくなる衝動を必死にこらえながら周囲を見渡してみました。
どれどれ、どンなムシ仲間がいるのかな?

おや?様子がヘンです。明らかにモテ系と思われるコジャレなお方が約1/3を占めております。
ははあん、コイツらが噂のねるとん系ゴト師かあ。
聞いてはいたンだけどね、ねるとん専門に狩りしてるっつう連中の事は。
でもサ、でもサ・・・何も今日この会場に大挙して来るこたァねえじゃんよう(涙目)。
どうやってプランクトン、しかもゾウリ系がクジラと戦えるというのでしょうかジーザス!

とかダメージを受けている間に速くも最初のイベントが始まりだしました。
最初は輪になって座っている女の子一人一人と3分程トークするンだけどね。
3分ですよ3分!この時間で何ができると言うのでしょうか、3分ですよ3分(しつこい)
ままままずはインプレッションつーか好印象を相手に与えなきゃ駄目サ、ブラザー!
さあハイテンションでGO!!!!

「(爽やかに)はじめましてッ!! ボクさがいッ痛ッ(舌を噛む)」

あれだけのハイテンションが光の速さでローテンション
ライトニング・ローとかいう名前で呼ばれちゃう剣と魔法の世界へ帰ってもいいカイ?
むしろその前に土に還りそうな勢いなンですが・・・
この時点で、無性にきゅうりとかスイカとかをストローでちゅうちゅう吸いたくなってきました。
結局このダメージは抜けきらず、ダメダメ君のまま最初のイベントは終了してしまいました。

この後、紙を渡されて好印象度1〜5位までの相手を男女ともに書かされました。
コンピューターで集計され、15分後に個々に結果が渡されるそうです。
え〜とすみませンその前に還ってもいいですか? 
土に。



さあ気を取り直してと。

いよいよ1回目のフリータイムです。
女の子/男の子が横一列にずらっと並んで向き合いました(ごた〜いめ〜ん)。
男女間の距離は大体2メートルってトコですか。
おや?なンか雰囲気がヘンです。妙な緊迫感が漂っています。
さながらオリンピック100メートル決勝のようです。
隣の方をふと見ると、さりげなくジリッジリッとナメクジのように前進して好位置をキープ
する事に、あまりにも無駄すぎる熱意を燃やしています。
やあ、そういうコトならボクも負けないゾう。
ベン・ジョンソンばりのスタート・ダッシュを切るために前傾姿勢をとりました。

”それではッ!1回目のフリータイム始めて・・”

ああッ、司会のお兄さんが”始めて・・”まで言ったところで、先走って思わず一歩踏み出して
しまったナイスガイが出現! すかさず”ああフライング・・それは素晴らしきカウパーかな”
とかいうあだ名を付けてあげたくなりました。
アレはあの人だ・・一番はじめに会場入りしていた、あのヒトだ・・
失笑が漏れるなか、その方は軽やかにバックステップを踏んで、定位置に戻りました。
ああッ、平静を装っているけど、額が汗だらけだよ!そして虫スマイルが顔に貼り付いてるよ!
ついでにズボンが短すぎて、靴下とズボンの間からニョキッと素足がみえてるよ!
なおかつ靴下は薄手に黒の親父靴下で、靴はお約束のごとく薄汚れた白のエアマックスだよ!
しかもジャケットにスニーカーだよう。

痛てえ!痛てえよう!

さながら自分を見ているようで、思わず代わりに死んであげたくなりました。



しかし、可哀想ですが、今はミジンコ一号(命名)なンぞに同情している暇などありません。
さっそく密かに狙いをつけていたターゲットをサーチします。
あ、いた! しかもまだ誰からも声がかかってない! チャ〜ンス!

 「えと、すみませ・・」(横からすごく大きな声で) 
ねえ少しいいかなあ!

強引かつ自信満々な強制インタラプトの主は案の定コジャレ系です。
彼女は一瞬ボクに一瞥をくれて、”ええと今何かいいました?”って言いたげな、
少し困ったような顔をしながら、コジャレ系とボクとを見比べました。

ボクですか?いえ何もいってませんよ。生まれてきてすみませんって呟いただけです。

あたかもザリガニのような動きで素早くその場から後ずさりした後、お空を飛べたらいいなあ、
などと妄想にふけっていたら、何時の間に1回目のフリータイムは終了していました。
早ッ!つーか、たった15分という短い時間でボクの何を伝えられるというのでしょう?
すっごくナイスなインセクトっぷりだけは伝わったみたいだけどね。

虫気分フル満喫。

楽しすぎます。いやマジで。



ここで男子にフリータイム前に集めた好印象度の集計結果が配られはじめました。
どれどれ、ボクに好印象を持ってくれた娘はいるのかな?
お!一人いるじゃん! マジすげえ嬉しいよ、どどどどこ?どの娘?12番ってどいつだよ?

あ、いた!
・・・・・・・・むう・・・・・・・・・・・・・・微妙

アウトかセーフかでいったら、ぎりぎりアウトです。
またいいコースついてるンだコレが。かなりの技巧派と見ました。やるじゃない!(何が?)
でも女性の価値は容姿じゃないのサ。絶対ムリっつうデッドラインさえクリアしていれば、
後はお互いのフィールでどうにでもなるのサ。



さあ2回目のフリータイムが始まりました。
これが最後のイベントです。つまりこのチャンスを無駄にしたらもう後がありません。
すかさず12番の女の子に接近して、精一杯の爽やかスマイルで話し掛けました。

「(爽やかに)はじめましてッ!! ボクさがいッ痛ッ(舌を噛む)」

うわ〜い、またやっちまいました。もうソレはいいっつうの!
自分で自分にツッコミを入れながら彼女をチラと盗み見ました。

あれ?スマイルじゃん。
ああ生きていて良かった。君のその笑顔を見れただけでボクは今日来た甲斐があったよ。
じゃあ・・サヨナラ、、、じゃなくて何か話さなきゃ!
とりあえず無難なトークを展開しながら相手の反応を伺います。
・・・・・・・
むう、なかなかの好反応と見ました(勘違い)。
これはもしやオトモダチコースまでもっていけるカナ、などと自分だけに都合のいい解釈を
勝手にしながら、ふと周りを見渡しました。

やあ隅っこの方にあぶれてしまった虫君達が固まっているよ。なンて悲しい光景なンだ。
ガキの頃、土管をひっくり返した先にびっしりとかたまっていたダンゴ虫を見ている気分サ。
その中にはもちろん一番はじめに会場入りしていたミジンコ一号クンも混じってるよ。
確実にハズさないキミがぼかァ好きだなあ、ラヴ☆
ウン、自分のことは当然棚にあげてるよ、当たり前じゃん。
だってそうしなかったら、ボク生きていけなくなっちゃうジャン★

とその時、それ以上にイタすぎる光景を目にしました。
チェルノブイリの跡地のごとく誰も近づかない空間にたたずむ数人の女性群。
女性?・・・・イヤあえて文にはしませんが。
しっかし男の場合なら強引にギャグにして生きていくことも可能ですが、さすがにコレはなあ。
これが世の中です。どうにもならねえコトは本当にどうにもなりません。
やっぱり性格が一番重要だよ、とかホザくお方に是非とも見て欲しいシーンです。
愛とか夢とか希望とかいう言葉が、すべて神への冒涜と化してしまうその空間を目の当たりにして、
心の芯まで冷えきった気分になったところでフリータイムは終了しました。
(この後、彼女らは誰にも気付かれるコトなく、結果発表前にフェードアウトしていきました)



哀愁あふれるドラマが人知れず終了したところで結果発表です。
男子がツガイになりたい女子の番号をカードに書き、女子側がそれに対して○×を付けた
ところでカードは回収され、コンピュータ集計された後、カップルになった人達だけが発表される
システムです。晒しものにならなくてもいいところがグーだと思いました。

司会者により、目の前で次から次へとカップル達が発表されていきます。
「優しそうなところがイイと思いました」
「頼れそうなカンジが・・ええ・・・」
司会者に軽いコメントを求められ、テレながら返答するカップル達。
なンつうイヤすぎる光景ですかコレは。
放水車の水圧でカップル達を司会者ごと窓の外へ吹き飛ばしたい気分にかられていたら、
司会者が次のカップルの番号を発表しました。

「さあ次のカップルは・・女性は12番の方ッ!」

お、あの娘じゃン。ってコトはボク?つーかオレ?俺様がコールされちまう?
仕方ねえなあ、何話そうかなあ、微妙なトコがヨカッタとか言えねえしなあ、マイッタなあ・・
(嬉しそうに)

まったくする必要のない心配をしちまっている時点で終わっているコトに気付くべきでした。

「お相手は・・(この時点でボクは既に先走り一歩踏み出していました) 6番さん!おめでとう!!」

アレ?え〜とボクの番号は9番なンですが・・すみませんソレひっくり返っていませンか?

「さあ彼氏は彼女のドコが良かったの?」
「いや実はまったく喋ってなかったんですが、雰囲気が優しそうだったので・・」
喋ってないンかい

「じゃあ彼女は彼氏のドコが良かったの?」
「ええと・・楽しそうなところが・・」
だから喋ってねえだろうがお前はよう。

微妙じゃなくてクソでした。ボクの中ではそういう事に決定。
いいじゃないか見逃してくれよう!言い訳ぐらいつくらせておくれよう、
そうしないとこれから先、生きていく自信がなくなってしまうンだよう!



さあとっても楽しかった(ここ笑顔ね)ねるとんのメニューはすべて終了しました。
後はこの場から素早く立ち去るだけです。
一刻も早くこの場から逃げ出したい気分で一杯です。

しかしながら、非常に残念ながらココはビルの7Fで、しかもエレベーターはちっちゃいのが
一つしかありません。
当然のごとく小さなエレベーターホールに密集する虫・虫・虫・・・・

強制的に負け虫どうし相互羞恥プレイ発動。

誰もがうつむいています。誰もがお互いにまったく眼をあわせようとしません。
誰もが無言です。”ああ、いたたまれねえ”・・誰もが思っていることでしょう。

突然ボクの横にいた方がケータイで話しはじめました。あミジンコ一号クンだ。

「ああ!オレオレオレオレ!いやあダメだわ。ちっと暇つぶしで出てみたケドいいのいなかったよ」
「うん、今日はもう暇、今から遊ぶ?」

このイヤすぎる空間の中でのオトモダチからの電話、さぞかし救われることでしょう。
無茶苦茶うらやましいです。

でもね、キミのケータイのアンテナはアレだよね。着信すると光るタイプのヤツだよね。
今、光ってなかったンですけど。

よく見ると笑いながら喋っているそのスマイルが異常に不自然です。
”相手はどこの電波クンだい?” ツッコミたくなる衝動を必死におさえました。
相手がいないにも関わらず、会話を続けなければならない苦しみとは、
果たしてどれ程のものなのでしょうか?


ええ、ええ、もはや何もいいません。
キミのコトを責めるツモリはないよ、そしてそンな資格もないのも分かってる。



ただただ涙がとまらないだけなのです。それだけなのです。


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