B−5 ベーシスト5選

 リズムとメロディの架け橋という重要な役割を果たしながら、どうしても地味なイメージがつきまとうベースギター。確かにロックというジャンルに限れば、優れたベーシストはそれほど必要とされていないのかもしれないし、そもそも一般の人はベースラインなんて聴きゃしない。だけど、バンド好きな人々の注目度が一番高いのもベースだったりする。わかる人にはわかるこの楽器の奥深さ、ひょっとしたら一番ウェイトが高いポジションかもしれません。今回はぼくの歪んだセンスで選んだ5人のベーシストを紹介します。重低音こそ真理なり。


 

ジョーイ・ディマイオ

 

 通称「閣下」。”偽物のメタルに死を!”でお馴染みマノウォーのドン。彼にとってヘヴィメタルをプレイすることは仕事ではなく、はたまた趣味でも娯楽でもない。いってみれば生命維持活動なのである。職業メタルバンドに向かって常に呪詛を浴びせ続け、メタリカのような商業主義に走ったバンドを容赦なく罵倒しまくり、マノウォーのメンバーには1日8時間の練習を強要する、閣下はそんな男なのだ。

 プレイスタイルは掻きむしるような超絶早弾きで、演奏というよりは何かの儀式を行っているような崇高さがある。放っているエネルギーの量においては誰一人匹敵する者などいまい。衣食住と同じ次元にメタルがあるということのものすごさ! 「本気」には、誰も適わない。

 

閣下の魅力を堪能したいならこちら

Kings Of Metal / Manowar

 

 重低音! タテノリ! スピード! 極太ギターリフ! 様式美! 何より閣下の爆裂ベース! ホント気持ちいいほどの王道ヘヴィメタル。日本のインチキロッカーがよくやる、パロディ色の強い「ヘビメタ」を、一流が全身全霊を込めて仕上げるとこうなる。密度、完成度においては、名盤と名高い『サイン・オブ・ハンマー』が上かもしれないが、ほとばしるエネルギーがビンビン感じられる本作のほうが個人的にはお気に入り。メタルファンなら既にチェックしているだろうし、メタルが好きでない人は全く受け付けないだろうからお勧めする意味はほとんどないのだが、小さなことはいいじゃない。好きなものは好きと言いたいじゃない。ヘイルトゥキル!


 

安井義博

 

 日本最強のヘヴィメタルバンド、アウトレイジを率いる男。迫力たっぷりのパワフルなプレイとその顔の怖さから、誰とはなしに彼を「怪物」と呼ぶようになった。

 普段はわりとオッサンライクな風貌の持ち主である彼だが、ライブになればガラリと豹変してしまう。一度でも見たことがある方ならわかると思うが、それはもう燃え上がるような鬼気迫るプレイなのだ。派手なパフォーマンスをするわけではなく、ただ全力をもってベースを弾くだけで凄まじい存在感を放つ、誰もが認めるアウトレイジの牽引車、安井義博。こんなにカッコいい日本人ロックベーシストを、ぼくは他に知らない。

 

文句無しのお勧めはこちら

LIFE UNTIL DEAF / OUTRAGE

 

 こりゃもう誰が考えても最高傑作でしょう。あの日本人ヘイター酒井康ですら認めたほどの出来。弾丸のようにぶつかってきたかと思いきやヘヴィなうねりもあるし、かつて『ファイナルデイ』などで披露した独特の様式美も継承しています。何よりこの一体感とハッタリ0%のガチンコサウンドはまさに彼らの真骨頂! 「日本人のロックは駄目だね」なんてほざいてる洋楽かぶれはこのアルバムを聴いて悶絶して死ね。


 

TMスティーブンス

 

 定番中の定番! ”master of heavy metal funk”の異名を持つ、グルーヴが服着て歩いてるような存在。奇人変人怪人偉人全て正解、こんな男は二人といませんぞ。ところで頭にモップを載せて「TMスティーブンス」と言うのはジェイル大橋の持ちネタだそうです。

 ジャズ、フュージョン、ファンク、ロックと何でもこなし、数々のビッグネームと競演してきたプロ中のプロ。そして最終的に辿り着いた場所はヘヴィメタルファンク! 地響きのようにたたみかけるスラッピングの嵐は重厚かつ誰もが踊り出すほどにグルーヴィー、それこそドラムいらねえじゃん! もうホントにね、何でこんなにカッコいいのかと。素晴らしいのかと。あんたが最強だよ、文句ねえよ。ウダウダ言う奴ぁかかってこい!

 

全人類必携のマストアルバムがこちら

BACK FROM THE LIVING / STEVIE SALAS COLORCODE

 

 あえてTM名義の作品ではなくこちらを。なんせスティービー・サラスにTMにブライアン・ティッシーという、豪華さにおいてはデイヴ・リー・ロスバンドに匹敵するメンバーである。内容は顔ぶれから想像できる通りのハードロック・ファンクで、そりゃあもう燃え尽きるほどにファンキー! 超グレート! 「カッコいい。カッコよすぎ」としか形容できません。ロックはあくまで娯楽であり、芸術ではないというのがぼくの持論ですが、ここまでいくと別格かも。好き嫌いの別れるサウンドではないと思うので、未聴の方はよかったら聴いてみて下さい。ぼくのG−企画用テキストの中で一番のお勧めです。


 

ダフ・マッケイガン

 

 出ましたミスター器用貧乏! ベース、ギター、ドラム、ボーカル全てをほどほどにこなす変わった男。かつて最高のバンドであったガンズ&ローゼスの一端を担ったことは最早説明するまでもありませんな。画像もあえてガンズ初期のものをチョイスしてみました。

 「ベースはギターより需要が多かったから始めた」と言い放つ、ベースに対して何の思い入れもなさそうなこの人をベーシストの括りに入れるべきではないのかもしれない。ダフを好きなベーシストとして紹介するぐらいなら、それこそシドヴィシャスを持ってきたっていいわけだし。だけど、どうにも好きなんだな。ガイキチ揃いの初期ガンズメンバーの中で、ひとり飄々とした軽薄さで異彩を放っていた彼が。誰も期待してないのに毎回必ずライブで『アティテュード』を歌う彼が。本格派とはほど遠いミュージシャンだけど、ミックジャガーの言葉を借りればロックンロールは軽薄なものであるべきで、ガンズ時代のダフはまさにその軽薄さにおいてロックの体現者ではなかったか? すいません強引すぎました。要はファンなだけなんです申し訳ない。ところでこの人、ガンズやおいでもあろうもんなら完璧に受けですよね。

 

そんなダフの初ソロアルバムがこちら

Believe In Me / Duff Mckagan

 

 彼の器用貧乏ぶりを世界に知らしめたことで有名な一作。ほとんどの楽器を自分でこなしてます。楽曲にもホントその辺がよく表れていて、グッとくるような名曲はないもののどれも聴けるって感じです。だけどダフの面白いところは、器用貧乏のくせに没個性ではないこと。ガンズの曲に必ずある独特のフックがどうやら受け継がれているようで、かなり独特の仕上がりになっている。BURRN!のレビューで「単なるガンズの縮小版」って酷評されてたけど、いやはやそれを言っちゃあオシマイよぉ。何故かジェフベックが参加していたりもします。


 

西山文明 (左下)

 

 どうしても画像が見つからなかったので、ローグのメンバーショットでご勘弁を。パッと見みな一様に最悪なルックスですが、よく見ると一人だけイイ男がいます。左下の方ですね。彼こそローグのベース担当、西山文明その人であります。氷室京介のバックバンドとしての活動でも有名。

 地元出身ということもあって、個人的にローグには結構思い入れがあったりする。彼らの魅力は曲にしろビジュアルにしろ「ダサさ」だと思う。奥野のステージパフォーマンスなど一歩間違うと失笑モノだし、ドラムの深沢のヤンキーぶりもヤバかった。香川に至ってはストレートにブサイクで、曲も時折完璧にイッちまってるものがあり、ファンでもフォローしきれないほどだった。しかしそんな中、唯一ミュージシャン的なカッコよさを発揮していたのが西山なのである。そのルックスもさることながら、ベースの弾き方が何よりバシッとキマっていた。音楽的にも一番しっかりしていたはずで、おそらくバンマス的存在だったのではないか。ローグの楽曲において、耳に残るフレーズは大抵ベースだったものだ。また相当シャイな性格らしく、ファンに声をかけられると真っ赤になってしまうといったエピソードも好感度が高かった。演奏中奥野に突然マイクを向けられるも、ビックリして何もできなかったなんてこともあったぐらいだ。可愛いじゃないか。

 氷室京介のバックバンドに加入後も地味にファンがついてきているようで、マイナーヒーローとして一部では割と人気があるそうだ(ちなみに氷室は昔から西山のファンで、ずっと一緒にやりたかったらしい)。ロックミュージシャンというと何か画一的なイメージだが、中にはこんな人がいてもいいとぼくは思う。

 

ローグ作品の中でも出色の出来なのがこちら

SOLID BLUE / ROGUE

 

 このアルバムはおかしい。ローグなのにダサくないのである。普通にカッコいい。いや、1曲目から2曲目への流れなどかなりカッコいい。一体コイツらどうしちまったんだ! 本作はローグのラストアルバムなのだが、最後に来て化けるとはいやはやなんとも。これだけのものが作れるなら、もっと活動を続けて欲しかったなあと心から思う。お勧めの一枚には違いないが、これを聴いて「おっ、ローグいいじゃん」と思って『MOVE』辺りに手を出すと爆死するのでご注意。『VOICE BEAT』ならジャケで爆死。


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