D−5 ドラマー5選

 野球でいうところのキャッチャー、キャバクラでいうところの黒服、縁の下の力持ちとはちょっと違う存在、それがドラマー。ぼく自身少々かじっていたこともあり、最も思い入れの深い楽器です。なお筆者は音楽を離れて久しい上、知識、趣味ともに95〜6年辺りで完全に止まっているため、非常にトンチンカンな文章になっている可能性がありますがどうかご容赦下さい。


 

チャド・スミス

 

 ご存知レッチリの大黒柱。彼の加入により、それまでどちらかというとストリート系のバンドだったレッチリは完全に本格化した。唯一無二のパートナー、フリーと共に織りなすリズムプレイはまさに世界最強、ロックバンドでは完全に独走状態だろう。最早伝説となった「チンコ靴下&ランプ帽子」の発案者でもあり、パフォーマーとしても名高い。エネルギーがあり、魂があり、技術があり、カリスマ性があり、本気でバカをやれる格好良さすら持ち合わせているロックミュージシャンとして完全無欠のこの男に、10代の頃は狂おしいほど憧れたものだった。

 

お勧めのアルバムはこちら。

Blood Sugar Sex Magik/The Red Hot Chili Peppers

 

 前作までとはうって変わった上品な作風で、ファンの度肝を抜いた一作。ああ、この緩急、この強弱、このねちっこさよ! 絶妙のタメからくるグルーヴ感、そして音符の間にまとわりつく糸は官能的ですらある。アンソニー・キーディスの口角泡を飛ばすようなラップも健在で、ロックとしての魅力を損なわずにサウンドを昇華させることに成功した名盤。


 

ラーズ・ウルリッヒ

 

 なんだかんだでみんな大好き、メタリカのあの人。とにかく小さい。ただでさえドラマーといえばデカかったり太ってたりするイメージがつきまとう上、、ロックで欧米人とくれば尚更そう感じる。そして、あのとんでもなくパワフルなプレイとのギャップに誰もが度肝を抜かれるのだ。上半身をまるでバネのように伸縮させ、全身これ腕とばかりに叩きまくる様は凄まじいインパクトだが、どれほど激しく動いても決して正中線と重心がずれない正確さにも注目したい。また、日本でいうところの「おたく」である点も見逃せない。自宅はNWOBHM等のレア音源で埋め尽くされ、インタビューでは聞かれもしないことまで長々としゃべりまくり知識をアピールし、金儲けにも精力的という彼のキャラクターはおおよそロックスターらしくないが、ひとたびドラムセットに向かえばオーディエンスを狂喜乱舞させる。この男の魅力は「ギャップ」、これに尽きるのである。

 

お勧め… ではないが、お気に入りはこちら。

And Justice For All/Metallica

 

 まあまあ、待って下さい。暴れないで下さい。このアルバムに関する悪評の数々ぐらい、ぼくだって当然耳にしている。確かにベースの音は聞こえないし、どの曲も無駄に長い上疾走感グルーヴ共にいまひとつだ。おおよそメタリカにあるまじき完成度の低さだろう。しかし、その上でぼくは本作が大好きであると言いたい。次作より完全に商業主義へと傾倒するメタリカ、その最後の迷走がどうにも愛おしいのだ。戦争をテーマにしたヘヴィな内容の曲、『ワン』をヒットさせた功績(?)も侮れない。ジャケも相当格好いいと思います。意味不明の文章ですいません。


 

村上”ポンタ”修一

 

 天下に名だたる人間国宝、ドドンパひとつで世界を黙らせる男。参加したアルバムは数千枚にものぼり、その超絶的な技術と魅力は最早神の域。かの近藤房之助は彼を評し、こう言った。

「ポンタの凄いのはな、”ドン・パン・ドド・パン”をやると、
 ”ドゥン… パァン… ドゥンドゥン、パァァン…”になるんや」

 リズムが、歌うのである。音階を持たない筈の打楽器が、彼の手にかかると途端に様々な音色を奏で出す。ポンタが凄いのは手足がよく動くからではない。テクニックが優れているからではない。ひとつひとつの音符への徹底的なこだわり、そしてドラムに対する考え方、いうなれば感性の部分からして常人とは違うのである。

 

お勧めはこちら。

PONTA BOX meets YOSHIDA MINAKO

 

 ボーカルとドラムは密接な関係にあるとはよく言われることだが、このアルバムを聴くとそれがとても実感できる。美声と美音が絡み合い、全ての楽器が歌う、歌う、歌う。職人同士のせめぎ合いも勿論聴き応え十分、究極のアンサンブルがここにある。ジャズ・フュージョンに馴染みがない方にこそ本作をお勧めしたい(ぼくも馴染みはないけれど)。


 

コージー・パウエル

 

 一世代前のドラマー達はみんなこの人に憧れた。多分。スティック一組片手に持って、ビッグバンドを次々と渡り歩く男。ちくしょうなんてカッコいいんだッ! このロック界の江夏豊が!

 この人の最大の魅力は、なんといってもスネアの音。スパーン! と馬鹿みたいによく抜ける。一部では「ウルトラ・ハード・リムショット」なんて呼ばれてるらしく、彼が長年使用したスネアはリムがありえない歪み方をするそうだ。音数は決して多くなく、ソロも滅多に叩かないが、それだけに一発一発の説得力はとてつもない。惜しむらくは既に故人であることだが、キャラクター的にも音楽的にも不世出のスターだったのではなかろうか。

 

思い出深い一枚がこちら。

Headless Cross/Black Sabbath

 

 客観的に見て代表作とはとても言い難いのだが、初めて聴いた彼の音なので、個人的には印象深い一作。ブラックサバスにトニー・マーティンなる者が復帰すると聞きつけた十代のぼくは、過去の音源をチェックせねばとレンタルCD屋に走り本作に出会い、今まで聴いたことがないようなとんでもないスネアの音にノックアウトされたという次第。現在は国内廃盤なのだそうです。残念。


 

スコット・トラヴィス

 

 人呼んで「重戦車」。ドゥルルドゥルルドゥル、ダンダンダンダン(ペインキラーのイメージで)。踏んで踏んで踏みまくり、叩いて叩いて叩きまくる。その圧倒的な音数と音量の前に、全てのメタル好きはもうメロメロ。勿論しっかりした技術に裏づけされたパワーであって、ただの滅多打ちとは訳が違うことは言うまでもありません。この運動量にして完璧なリズムキープ、とても人間とは思えない。

 ぼくはこの人の性格に関して、詳しいことは全く知らない。顔すらパッと浮かんでこない。ただ彼の名前を耳にする度、あの破壊的な重戦車の進軍がリフレインするだけだ。そう、彼の音は人物像を凌駕するほどに強力なイメージを与えるのである。ふたつのバスドラの間に生ずる圧倒的重低音は、まさにタテノリ的ヘッドバンギングの小宇宙! ところで元レーサーXって恥ずかしい過去?

 

お勧めというか必聴。

Painkiller/Judas Priest

 

 目ある者は見るがいい、知恵ある者は知るがいい、耳ある者は聴くがいい! 今から約10年前、、このアルバムによってヘヴィメタルという音楽は完成された! 数多の偽物そして模倣者に告ぐ、これこそがホンモノである。生きながらにして神と呼ばれた男達の最高傑作、様式美の最終形がここにある。未聴の方、この文章を読み終えたら迷わず購入しなさい。一曲目のイントロを耳にした瞬間、あなたは小便をちびるだろう。あのドラムソロは一生耳に残るぜ! ビバメタルゴッド! 最高!


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