BLACK SABBATH


サバスがなかったら俺達は存在してないよ
もちろんニルヴァーナもね
〜デイヴ・グロール(元ニルヴァーナ)〜

サバスには60年代に欠けていたすべてがあった。
やつらの音楽は完全にアンチヒッピーだったから、カッコ良かったンだ。
ビートルズとかジェスロ・タルとか、そういう脳天気なクソヤロウが俺は大嫌いだった
〜ジェームズ・ヘットフィールド(メタリカ)〜

ブラックサバスは新しくでてくる全ての音楽のヘヴィさを計る目安だった。
〜マーティ・フリードマン(元メガデス)〜

今では誰もが知ってる通り、ブラックサバスがヘヴィメタルを発明したんだ。
とにかくサバスよりヘヴィにやることなんてできないんだよ
〜セバスチャン・バック(スキッドロウ)〜

ブラックサバスは究極のヘヴィバンドだ。
グレートな曲の多さに関しては、誰も足許にも及ばない
〜スティーヴ・ハリス(アイアン・メイデン)〜

アメリカの連中がフラワー・チルドレンのムーヴメントではしゃいでる頃、
俺たちはその日を生きることで精一杯だった。あんなのクソ食らえだ!
〜オジー・オズボーン〜

60年代後期。
アメリカでヒッピ−達が現実逃避し、その退廃的かつ楽天的なカルチャーで社会全体をコケにしていた頃、
イギリスではその日を生きることに必至になりつつも現実から目を背けず、逆にそのリアルに唾を吐きかけていた
男がいました。 かのオジー・オズボーンです。
当事、定職もなく街で窃盗を繰り返していたという、この只の悪ガキの口癖は「俺にだって出来ることがある筈なんだ」
だったそうです。

そんなオジーがある日、オカルト好きのバンド少年ギーザ・バトラーと出会い、そのバンドの空白だったドラマーの座に
ビル・ワードが加わり、そのビルが左利きのギタリスト:トニー・アイオミを連れてきたことから全ては動き始めます。
彼等のその独特の間をもったヘヴィ・ブルースと、それとともに吐き出される自己内面からの欲望や未来なき展望への
絶望的な叫びは、クラブの観客を次々と熱狂の渦に巻き込んでいきました。

1969年、彼等はバンド名を”BLACK SABBATH”に変え、その偉大なる一歩を踏み出しはじめます。




初期(オジー・オズボーン) (1969 〜 1980)



1970年2月:BLACK SABBATH (邦題:黒い安息日) リリース。

雨と鐘と雷鳴、いかにもっつう重々しい出だし。そこから流れだす遅くて重くて暗いリフ。
そしてその独特のリフレインから絶妙なタイミングで巻きおこる転調。
この最高にドラマチックな展開を聞いて身震いしない方は、この時点でサバスとは絶望的に肌があっていないと
思った方がいいでしょう。
そこまでの傲慢をリスナーに強いてしまいたくなる程の強烈なエゴとオリジネイターが容赦なく轟き、
我々はただただその威圧的な質感に圧倒されて身震いするしかないのです!と書いちゃえるくらい、
このアルバムの出だしの曲、"
BLACK SABBATH"のインパクトは強烈なものでした。
(ちなみにこの曲は、街でBLACK SABBATHという恐怖映画が人気だったことにヒントを得て、
 「恐がらせる曲をつくろう」というテーマのもと書かれた曲だったそうで、これによりバンドの名前も
 そのまま"BLACK SABBATH"となるわけだけど、この辺りにオカルトマニアのギーザの存在を感じますね)

他にもそのギターソロが鳥肌もんでカッコいい"
N I B"(今ちょうどCMで流れてるかも)や、
ジャム風で一見無秩序に聞こえるその中に高い技術が驚くべき完成度で融合している"
WARNING"、
マニアックな楽曲の中にあって箸休めの役割を果しているキャッチーナンバー"
EVIL WOMAN"や、
そのリフを聞いているだけで気持ちよくなってくる"
WICKED WORLD"など1曲たりとも捨て曲なし。
とても48時間でレコーディングしたとは思えない程の完成度を誇って、その高きポテンシャルを容赦なく
我々にみせつけてくれます。

禍々しいものを想像させるおどろおどろしい世界観、人間が本質的に持つ闇の部分を喚起させる詞、
その独特の雰囲気、そこから感じるとてつもない威圧感、それら全ての要素を支える正統派テクニック。
全てのハードロック・ヘヴィメタルの源流ともなったこの歴史的アルバムは、”悪魔崇拝バンド”という
イメージを植えつける為の絡みもあって、わざわざ13日の金曜日に発売されたそうです。

今考えると悪魔崇拝?というそのベタな戦略イメージは正直どうなんだろう…とも思ったりしますが、
当事のジャーマネのジム・シンプソンからしてみれば、14ものレコード会社から契約を断られたあげく、
自費レコーディングになっちゃって、そのうえアルバムが売れなければ一銭も自分の懐に入らない契約になって
いたらしいで、そら神だろうが悪魔だろうがすがれるものにはとりあえずすがっちゃうだろうなと。
(ギーザ・バトラーがオカルト・マニアだったことも手伝ったみたいですけど)

まあ、そんなマネージャーの努力?の甲斐もあって、このアルバムは全英チャートを8位までかけのぼり、
イギリス中のキッズの頭の中に、「ブラックサバス」の名前をみごと刻み込むことに成功するのでありました。
全米においても23位まで上昇し、その後チャートに1年以上ランクインし続けるという快挙を成し遂げます。
万人には薦められないけど、とにかく絶対一度は聞いてみてほしい歴史的名盤です。

 1 :BLACK SABBATH
 2 :THE WIZARD
 3 :BEHIND THE WALL OF SLEEP
 4 :N I B
 5 :EVIL WOMAN
 6 :SLEEPING VILLAGE
 7 :WARNING
 8 :WICKED WORLD




1970年9月:BLACK SABBATH (邦題:パラノイド) リリース。

あの衝撃のデビュー作からたったの7ヶ月でスピード・リリースされ、サバスが世界へ飛び出す
きっかけをつくったアルバム。(全英1位・全米12位)

地獄の底から響いてくるかのような感覚を覚えるギーザ・バトラーのベース、
その重厚な質感を支えたうえで、さらに厚みを加速させるビル・ワードのドラム、
その隙間に閃光の如く割り込んでくるトニー・アイオミ、怒濤のギターソロ、
そんな彼等の圧倒的なエゴを抑えつけるかのように轟きわたるオジー・オズボーンのヴォーカル、
それら個々のカオスが責めぎあい凌ぎあったその先にある統一感。
サバスが持つ音楽的特徴を全て具現化させ、サバスがサバスであることを明確に主張しはじめる
きっかけになった歴史的名盤。

オープニングナンバーから、いきなり「これぞサバス!」な勢いで畳みかけてきます。
"
BLACK SABBATH"に並ぶサバスの為のアンセム曲とも言えるこの"WAR PIGS"最大の聴きどころは
その遅くて重くて暗いリフにそろそろ飽きてきたなーって感じてきた頃に絶妙なタイミングで転調する
後半のドラマチック・ソロでして、サバスはホントにこういう引っ張って引っ張って引っ張りまくって、
ここぞというところでドカーン!みたいな、そういう展開が上手いなあと。

他にも、その疾走感にあわせてザクザク刻むベースが気持ちよすぎるサバス最大の代表曲"
PARANOID"や、
(これサバスっぽくない異色曲でもあるんだけど、それが最大のヒットになっちゃうンだから皮肉だな〜)
もう聴いているだけで死にたくなってくるようなダーク・バラード "
PLANET CARAVAN"、
ゴロゴロとした雷雲をイメージさせる重々しいベースと、その中に突如に放たれるイナズマのようなギターソロが
印象的な"
IRON MAN"、"FAIRIES WEAR BOOTS"の終わり際の繰り返しリフは脊髄の気持ちいい器官を直撃!
"
RAT SARAD"の中に挿入されたジャズ・セッションのようなドラムもまた良しで、捨て曲はほとんどなし。
前作の遅・重・暗のサバス3拍子一辺倒から多少聴きやすい方向へ進化したうえ、魅せ方のバリエーションも
増えているので、ブラックサバスを1回も聴いたことのない初心者にオススメのアルバム。

 1 :WAR PIGS
 2 :PARANOID
 3 :PLANET CARAVAN
 4 :IRON MAN
 5 :ELECTRIC FUNERAL
 6 :HAND OF DOOM
 7 :RAT SALAD
 8 :FAIRIES WEAR BOOTS




1971年7月:MASTER OF REALITY (邦題:マスター・オブ・リアリティ) リリース。

予約だけでゴールドディスクを獲得し、全英5位・全米は8位までランクインしたお化けアルバム、
ということのみならず、サバス史上においても類を見ないほどのヘヴィネスっぷりを全体に凝縮させた
これぞヘヴィメタルのルーツとも言うべきアルバム。

いまやサバス代表曲となった出だしの"
SWEET LEAF"がのっけからカマしてくれます、
名前は甘いけど曲そのものは全然甘くない!といった感じの遅・重・暗のサバス基本三原則を
きっちり遵守しまくりーの、同じリズムを引っ張りまくりーのでこちらがジリジリし始めたところへ
もってきての華々しい転調。
"
BLACK SABBATH"、"WAR PIGS"と同じように、出だしの曲がこのパターン かつ サバスの持つ
その雰囲気を醸しだすようなつくりになっているのは、もはやお約束なのか?

このアルバムには他にも、様式美要素におけるサバスの代表楽曲とも言える3部作が入ってまして、
オードブルのインスト曲"
EMBRYO"から、言わずと知れた名曲"CHILDREN OF THE GRAVE"に繋がり、
アコス・バラード"
ORCHID"へと続いていく様式美展開は、このアルバムの最高の聴きどころでもあり、
私はこれを聴く度に何故かジューダスの"HELLION"〜"ELECTRIC EYE"へと続いていく様式美定番中の定番の
原点そのものが実はここにあるンじゃないか?と感じたりもするのです。

他にもこれまたサバスの本質そのものが持つヘヴィっぷりを直で表わしている"
LORD OF THIS WORLD"とか
"
INTO THE VOID"とか、グリグリうねるようなベースとあまりにカッコよすぎるギターソロがマジたまらんです。
特に後者の方はこの中に80後半〜90年代を席巻したありとあらゆる有名HMバンドのエッセンスが全て
詰まっていると言っても過言じゃないくらいの充実ぶりでして、つまり何が言いたいのかと言うと、絶対聴かないと
損します(人生を!)

 1 :SWEET LEAF
 2 :AFTER FOREVER
 3 :EMBRYO
 4 :CHILDREN OF THE GRAVE
 5 :ORCHID
 6 :LORD OF THIS WORLD
 7 :SOLITUDE
 8 :INTO THE VOID




1972年9月:BLACK SABBATH VOL.4 (邦題:ブラック・サバス4) リリース。

1曲目にサバスの現スタイルを凝縮させるというお約束はこのアルバムで完全確立したのではないか、
と思わせる程、最初の"
WHEELS OF CONFUSION"の印象度が抜群です。メロウな出だしとヘヴィな展開、
そしてそこからダブルで変化していく曲調と壮大なスケール感…あれ?なんかこれプログレっぽくないか?
 
次曲の"
TOMORROWS DREAM"にも、今までのサバスとは少し異なる曲調展開とドラマ性を感じるし、
何よりもイエスがあの名作「
こわれもの」をリリースした年でもあることだし…実際かなり影響を受けている
部分はあるんじゃないでしょうか?次作のキーボードはリック・ウェイクマンだし、という私の勝手な想像は
その辺に置いとくとして、個人的には前作「
MASTER OF REALITY」がヘヴィ・サイドのサバスの頂点であると
するならば、この「
」は初期サバスのもう一つの隠れた面、つまりメロディ・サイドにおいての頂点ではないかと
思っています。

重さと同居するメロディセンスの良さは天才リフメイカー・トニーアイオミの能力がこれでもかと言わんばかりに
発揮されたことへの証明でもあり、この作品で形づくられたセンスは、後のディオとの融合時の基盤にもなっていた
のではないかと思うくらい、各々の曲の中にジャズやブルーズを基本とした様々なアイディアが詰まっていて、
とにかく耳を飽きさせません。

サバスのバラード曲の中でも1・2を争う美しさの"
CHANGES"、
成功と引き換えに消耗し続けることへの苦悩を歌った、哀愁漂いまくる名曲"
SNOW BLIND"、
太っとい幹を連想させるような重々しいリフと、それにからみつくようなギターとのコントラストが
素晴らしい"
UNDER THE SUN"、遅・重・暗のサバス基本三原則にインストナンバー"FX"を加えて
様式美調にした"
SUPERNAUT"、やーもう何処を切ってもおいしいとはこのこと!

このアルバムは前作のヒットには及ばなかったものの、全英8位・全米13位までチャートを上昇し、
英米ともにブラックサバスの名前が浸透しきったことを証明した一枚になりました。
その成功と引き換えに‥というわけでもないでしょうが、売れたものの宿命なのでしょうか?
この頃からバンド内部におなじみの酒と薬が蔓延するようになり、バンド内の人間関係にも混乱の兆しが
漂い始めるようになります。その辺りの退廃感は"
SNOW BLIND"の歌詞の中にも表れていたり。
(ジャケの中の”We wish to thanks the great COKE-Cola Company og Los Angeles”という表記にも注目)
この破滅と隣り合わせの絶妙なバランスにより保たれた安定感は、いずれ破綻していくことになりますが、
それはまだ先の話。この先、数年間このラインナップによるサバスの栄光時代は続くことになります。

 1 :WHEELS OF CONFUSION
 2 :TOMORROWS DREAM
 3 :CHANGES
 4 :FX
 5 :SUPERNAUT
 6 :SNOWBLIND
 7 :CORNUCOPIA
 8 :LAGNA SUNRISE
 9 :ST. VITUS DANCE
 10:UNDER THE SUN




1973年12月:SABBATH BLOODY SABBATH (邦題:血まみれの安息日) リリース。

イエスのリック・ウェイクマン(Key)をゲストに呼んだり、積極的にシンセを多用するなどして、
前作からのさらなる進化を目論んだ意欲作。
内容的には「
MASTER OF REALITY」と「VOL4」のいいトコ取りになるのかなあ。
初期サバスの最高傑作と目される意見も多いみたいですが、私個人としては、それぞれのパラメータが
偏りまくってる「
MASTER OF REALITY」や「VOL4」の方がアクが強くて好きです。
多少ポップより(軽快すぎる)なのと、サバスにしちゃ全体的に明るすぎるのも何となく気になります。
(ま、これ以降の3枚は全部こういう方向性なんですが)
ただ曲単位で考えるとやっぱり出来がいいものが多いんですよね、このアルバム。

その中でもアルバムの雰囲気を明確に示唆する1曲目"
SABBATH BLOODY SABBATH"は、のっけから
サバス色全開、いつもより若干ハイトーンなオジーのはっちゃけヴォーカルにあわせて、圧倒的な音圧の
ベースがうねりまくります、ってかやっぱギーザのベースすげえ、このザクザクっぷりはマジ半端じゃない、
もう三半規管にビシバシ響くというか。

サバスには、こういう感覚的な気持ちよさに訴えかける曲が多いんじゃないかって。
例えば「The CLASH」なんかはスタイルありきのバンドで、その本質がロックにレゲエやテクノを取り込んだ
多用な音楽性にあると言えどもハマりこんでいく始めのきっかけは当時の時代背景とかヴィジュアルとか
啓蒙的なその歌詞だったりするわけで、いわばそれが分かりやすいスタイルとなったわけですが、サバスの
場合はその部分が極めて感覚的というか本能的というか「聞いていて気持ちいいか・いくないか」といった
直感要素がかなりのウェイトを占めているような気がします。
そういう意味ではサバスって受け入れられる人と合わない人との差が顕著にあらわれるバンドなのかも。

ちなみにその他の曲も聴きどころ満載。
サバスお得意のアコス・バラードの中でも前作の"
LAGNA SUNRISE"と並んでメロディ秀逸の"FLUFF"、
軽快なリズムと抜群のリフの中に折り込まれた複数の転調やピアノによるアクセント付けなどの様々な工夫が
盛り込まれている"
SABBRA CADABRA"・"KILING YOURSELF TO LIVE"など、メリハリ(緩急の変化)が
はっきりしている曲が多いので非常に聴きやすいところもグーです。
(サバス的青春マーチみたいなノリの"
SPIRAL ARCHITECT"も要チェック)

セールスの方も全英4位・全米11位と絶好調。ビッグ・バンドとしてのその地位を完全に決定づけた一枚でも
ありましたが、この頃からサバスが持つ悪魔的イメージが、暴力や犯罪のソレとオーバーラップして誤解される
部分も見られるようになり、バンドへの重圧及び風当たりは徐々に強くなっていきます。
(実際には悪魔をイメージした歌詞などほとんどなく、そう誤解される曲の大部分は人間の闇を歌ったものなのに…)
それにより内部の人間関係はさらに悪化し始め、酒やドラッグの量も加速的に増えていくことに?

 1 :SABBATH BLOODY SABBATH
 2 :A NATIONAL ACROBAT
 3 :FLUFF
 4 :SABBRA CADABRA
 5 :KILING YOURSELF TO LIVE
 6 :WHO ARE YOU?
 7 :LOOKING FOR TODAY
 8 :SPIRAL ARCHITECT




1975年9月:SABOTAGE (邦題:サボタージュ) リリース。

キーボード奏者としてジェラルド・ウッドルフを加えて作成された通算6枚目のスタジオ・アルバム。
前5作が全部プラチナ・ディスクになっていることもあり、半端ないプレッシャーの中で制作されたとか。

出だしの"
HOLE IN THE SKY"の、そのあかぬけた歌いっぷりと暴れまわるバックサウンドが、
どうも今までのサバスとは一味も二味も違う、ということを感じさせてくれます。
あの重苦しいムードの中にある独自の統一感が希薄というか何と言うか(ま、これは前作もそうか)、
そのせいで重厚なサウンドそのものは今まで通りなのに、フットワークがもう軽い軽い。
じゃあポップ調なのかなと思いきや、それと相反する壮大なスペクタクル感には溢れまくってるという、
どうにも掴みようのないアルバムです。

特に「うわー」と思うのは様式美的切り口の"
DON,T START"から、そのまま本編に繋がっていく
"
SYMPTOM OF THE UNIVERSE"でして、いつも通りの重々しいベースに新たに加わったスピード感と、
プログレと見まちがえんばかりのコンセプト感漂う壮大な曲構成は、とても今までのサバスとは思えません。
これに続く"
MEGALOMANIA"も同系統。壮大な展開、難解なメロディ、繰り返される曲調変化、
だけど曲そのもののリズムを支えるザクザク・リフとジャズ調ドラムは健在? こら一体何なんだ? 
これは、まるで…ツェッペリン?
インストナンバーの"
SUPERTZAR"なんて、あまりにもお芝居がかっていてむしろ笑えちゃうくらい。
その中にあって数少ないキャッチー・ナンバーとも言える"
AM I GOING INSANE"は安心して聞けるけど、
この構成の中ではあまりにもポップかつ普通すぎてむしろ異色、もう違和感を感じまくりです。
(ちなみにこの曲の歌詞はオジーの経験談だそうで。曲は明るいのにひどく悲惨な内容です)

じゃあ総合評価はどうなのよ?というと、全体から漂ってくる危うい事このうえないオーラがイイというか、
燃え尽きる前の最後の炎のようなものが感じられてイイというか、面白い作品には仕上がっていると思うので、
初期サバスにある程度ハマれた人なら、おさえておいて確実に損はない一枚です。

この頃からバンド内におけるトニーの発言の強さが目立ち始めたそうで、その独善性と真っ先に衝突した
我らがオジー様はアルコール依存症の1歩手前だったことも手伝って、その精神と肉体をどんどん病んで
いくことになります。

 1 :HOLE IN THE SKY
 2 :DON,T START
 3 :SYMPTOM OF THE UNIVERSE
 4 :MEGALOMANIA
 5 :THRILL OF IT ALL
 6 :SUPERTZAR
 7 :AM I GOING INSANE
 8 :THE WRIT




1976年:
WE SOLD OUR SOUL FOR ROCK N ROLL
 
(邦題:ウイ・ソールド・アワ・フォー・ロックン・ロール) リリース。

デビュー作「
黒い安息日」〜6枚目「SABOTAGE」までの中から選曲されたベスト盤。
ドゥーム、スラッシュ、ブラックなどの数あるメタル流派の原点になったと言われるオジー在籍時代を
お手軽に聴きたいならコレが一番お得。
2001年に再販されているので、極めて手に入れやすいところもグーです。

それにしても、この初期時代にはやっぱり特別なものがあると言わざるをえません。
ロニーやギラン、トニー等がヴォーカルをとった中期以降のサバスも素晴らしいバンドであることに
変わりはありませんが、サバスがもっともサバスらしかった時代と言ったらやっぱりこの初期ですね。
今あらためて聴きなおしてみてオジー/トニー/ギーザー/ビルの4人が揃ってこそ、なし得た黄金時代
だったんだなーってことを如実に感じちゃったり。(だからこそ、安易な復活とか絶対してほしくないし)

 1 :BLACK SABBATH
 2 :THE WIZARD
 3 :WARNING
 4 :PARANOID
 5 :WAR PIGS
 6 :IRON MAN
 7 :WICKED WORLD
 8 :TOMORROWS DREAM
 9 :FAIRIES WEAR BOOTS
 10:CHANGES
 11:SWEET LEAF
 12:CHIRDREN OF THE GRAVE
 13:SABBATH BLOODY SABBATH
 14:AM I GOING INSANE
 15:LAGNA SUNRISE
 16:SNOWBLIND
 17:N.I.B




1976年10月:TECHNICAL ECSTACY (邦題:テクニカル・エクスタシー) リリース。

前作に伴うツアーにキーボード奏者ジェラルド・ウッドルフを同行させた件で、
(この頃トニーはキーボードの重要性を強く主張していたらしく、オジーはそれが気に食わなかったらしい)
トニーとオジーが衝突したまま作成された通算7枚目のスタジオ盤。
基本的には前作の方向性を受け継ぎ、その表現手法をプログレ的スペクタクルから、若干メロディアスかつ
ブルージーな方向へと転換させたアルバム。

トニーが鬼人と化して掻き鳴らしまくってる"
YOU WON,T CHANGE ME"と"DIRTY WOMAN"は絶対チェキ!
わかりやすいメロディの上に覆い被さるワビサビ系高速ソロがたまんないです。
(今ふと思ったけどトニーのギターって何となくブライアン・メイのそれとオーバーラップするものがあるなあ、
 情緒感とか叙情感とか)
それにしてもこのプレイを聴いていると、かつて電気溶接工の職にあった時に誤って切り落としてしまった
右手の中指と薬指の先端は今でもない、というお話が本当なのか信じられなくなってくる程です。
(無くなった先端を補うべくプラステック・ティップを装着しているそうですが)

"
CHANGES"と並ぶ初期時代の名バラード"IT,S ALRIGHT"は、あのガンズ・アンド・ローゼズのアクセルも
即興でカヴァーした程の名曲。(ちなみに歌っているのはビル・ワード)
他にも前作で培ったプログレ的センスを引き継いだはっちゃけ曲"
GYPSY"(とてもサバスとは思えない!)とか
哀愁たっぷりに聞かせてくれる"
SHE,S GONE"とか、いい曲はめじろおしなんだけど、いかんせんパワー不足の
感は否めないというか、感想としてはもちろん悪くはないもののメロディ重視による一般性(聞きやすさ)が増した分、
サバス本来の個性も薄まって、まあ普通の1流バンドみたいになっちゃったなあ、とかそんな感じです。

本作に伴うツアー後の77年11月、遂にオジー・オズボーンが脱退。
父親の死や最初の妻との離婚が重なったところへもってきて、重度のアルコール依存症にドラッグ中毒と、
ホントにいつ死んでもおかしくない状態だったそうで、まあ脱退もいたしかたなかったのでしょうが…うーん。
(でも、この後すぐに復帰すんのな)

 1 :BACK STREET KIDS
 2 :YOU WON,T CHANGE ME
 3 :IT,S ALRIGHT
 4 :GYPSY
 5 :ALL MOVING PARTS
 6 :ROCK N ROLL DOCTOR
 7 :SHE,S GONE
 8 :DIRTY WOMAN




1978年10月:NEVER SAY DIE (邦題:ネバー・セイ・ダイ) リリース。

元フリートウッドマックのデイヴ・ウォーカーをオジーの後任に据えて、再出発を図ろうとしたサバスでしたが、
結局デイヴは力不足を理由に速攻解雇、結果としてオジーが呼び戻され、蓋を開けてみれば何のことはない、
結局いままでと同じメンバー編成で、この通算8枚目のスタジオ盤は作成されました。
(あ、そいやキーボードにドン・エイリーが参加してるんだった。ホントこの人、有名バンドには必ずいますね)

とにかく明るくポップにはじけてる1曲目の"
NEVER SAY DIE"、
出だしのあまりのシンセ多用っぷりに、思わずびっくりしちゃう"
JOHNNY BLADE"、
なにこれフィルコリンズ?みたいなプログレ色&ポップの融合が笑えすぎる"
AIR DANCE"、
えええええ?とびっくりすることしきりのこのアルバムですが、重々しいベースに複雑なドラム、
前作から目立ち始めた掻き鳴らし系ギターは健在。
とにかく全体的にノリ軽く躍動感ありまくり、てか、これはオジーのソロ・アルバムっスか?
と思うくらいものの見事にオジー的。"
HARD ROAD"なんかまさにオジーのノリまんまという感じ。
重厚なベースと激しいギターソロによるヘヴィなノリを保ちつつ、よりポップによりメロディアスに、
というその後のオジーの音楽的方向性の基盤が、どうしてトニーとオジーが不仲だった筈のこのアルバムで
具現化されているのか、まったくもって不思議です。
うーん、不仲というのは結局、音楽的意見や方向性の食い違いというより単にどちらがイニシアチヴを取るか
という簡潔極まるエゴのぶつかりあいが原因だったのかなあ?

まあそんなわけで、世間の評判はさんざんだったこのアルバム、
ちょっと捨て曲多いかな?っていう気もするし、む?と首をかしげざるをえない部分も確かにあるけれど、
サバスとして聞くんじゃなくて、オジーの初期作として受け止めると、わりかしハマってて悪くないです。
1作ごとに新しい要素を取り入れることに積極的にチャレンジしている姿勢も確実に評価に値するし。

セールス的には全英12位とまあまあだったみたいですが、オジーの体と精神状態があまりにもボロボロすぎて
こらどもこもならんと判断したトニーは、遂に1978年12月、オジーに解雇を通告します。
強引に呼び戻しておいてまた随分勝手だなあ、トニー。
(しかも自身で宣告したんじゃなくて、オジーの親友であるビル・ワードに代弁させたそうだし)
ま、そういう結果があったからこそ、今のオジーの帝王としての地位があるわけだけど。

こうしてブラックサバスは第1期と呼ばれる伝説の黄金時代に自ら幕を下ろしました。
それは同時に復活への再始動でもあり、NWOBHM時代幕明けへの引き金でもありました。
「ロニー・ジェイムス・ディオ」という新たなる力を手に入れたニューサバスは、これから2年後、
HR・HM界隈を震撼させるほどの衝撃をもたらして、再びシーンに帰ってくることになります。

 1 :NEVER SAY DIE
 2 :JOHNNY BLADE
 3 :JUNIORS EYES
 4 :HARD ROAD
 5 :SHOCK WAVE
 6 :AIR DANCE
 7 :OVER TO YOU
 8 :BREAK OUT
 9 :SWINGING THE CHAIN




中期(ロニー・ジェイムス・ディオ)(1980 〜 1983)

アルコールとドラッグにより、既に生物廃棄物以外の何者でもなくなってしまった我らがオジー様を
首チョンパして、トニーが次に選んだ相棒は、元レインボーのロニー・ジェイムス・ディオ様でした。
グッバイ・レインボー、ハロー・サバス、優雅な中世風舞台から一転してザクザク刻む悪魔の世界へ。
単にバンドのフロントマン・イメージを浮浪者系から貴族系に格上げしたかっただけだったりして。

まあ、そんなこんなで1980年4月、この
HEAVEN AND HELL はリリースされました。



初期のサバスがスラッシュ・ドゥーム系メタルの生みの親なら、この中期サバスはメロスピ&ネオクラの
奔りになったともいえるでしょう。それほどまでにメロディアス&ドラマチックなサウンドが、1曲目の
"
NEON KNIGHTS"から、おなじみザクザク・リフにのせて疾走しまくり。
他にも、あの重厚極まりない、下世話風に表現するならば「華麗」という言葉の対極位置にあった世界観に
ロニーが入っただけでこうまで優雅になるものか?と感じざるを得ない"
CHILDREN OF THE SEA"や、
従来のサバス路線にロニーの中世色豊かなヴォーカルが見事ハマった"
HEAVEN AND HELL"、
多少ベタ気味ではあるけれど、動・静の共存とその疾走感は見事すぎるくらい見事な"
DIE YOUNG"など、
サバスが本来持つあの重厚さはそのままに、優雅さと疾走感をプラスさせたこのアルバムは、ソリッド感・
ドライヴ感ともに抜群。とにかくメロスピが好きな人は絶対聴いてみて損はない筈!
サバス基本3原則の土台にロニーの持つ中世風様式美がここまでマッチするとは? 正直、意外でした。

ギター職人アイオミさんのギターもいつも以上に走りまくり。
彼の凄さはある意味単調にも聞こえがちなリフレインをきっちり造りこみつつ、その上にメロディ抜群の
ソロを重ねあわせることにより曲の一体感を増しているところにあるンじゃないかな、と改めて感じました。
故に彼のギターはリフ重視なので退屈になりがちとか抜かす奴は光の速さでこのアルバムを入手しやがれと。

この作品はセールス的にも「
サボタージュ」以降、低調気味だった勢いを一気に盛りかえし、全米に再び
サバスの名を轟かせることに貢献しました。が、一部のファンはこれまでのサバスとのあまりのギャップに
とまどいを覚え、そしてサバスから離れていきました。(これは単にヴォーカル・イメージの部分が大きいな、
まあ逆に言えばそれほどまでにオジーの存在が偉大だったということへの証でもあるんだけど)

確かにロニーがサバスにもたらした中世色は、従来のファンを大いにうろたえさせ失望をもさせたかも知れません、
が、同時にニュー・サバスが新しいファン層を獲得したのも事実だし、新たなるロックの可能性を感じさせて
くれたのもまた確かなのです。今となってはありふれたメロスピ・ネオクラ系路線も、1980年当時は斬新かつ
異色なアイデアだったわけで、その基本的ルーツになりうる可能性を持ったこのアルバムこそが、NWOBHM
ブームの尖兵となって当事のシーンに意識改革をもたらしてくれた功績作であると、今でも私は信じてやみません。
ま、もともとオジーもロニーもどっちも好きである私にとっては、サバスの魅力を何ら損ねることのない作品です。
だってサバスのその本質な魅力は、個性的なヴォーカル音を支えるギーザの重厚サウンドとそれに変幻自在の厚みを
加えるビルのドラム、そしてその個性的リズムの中で暴れまくるトニーの閃光ギターなのだから。

 1 :NEON KNIGHTS
 2 :CHILDREN OF THE SEA
 3 :LADY EVIL
 4 :HEAVEN AND HELL
 5 :WISHING WELL
 6 :DIE YOUNG
 7 :WALK AWAY
 8 :LONELY IS THE AORLD




1980年7月:LIVE AT LAST (邦題:ライヴ・アット・ラスト) リリース。

73年に行われた「
」に伴うツアーの中から、ロンドンとマンチェスターでの公演を収録したサバス初の
ライヴ・アルバム。と書けば聞こえはいいものの、実際には7年前に音質が悪すぎるとの理由で没になり
お蔵入りしていたテープを、当事のレーベルNEMSが「
ヘヴン・アンド・ヘル」により復活したサバス人気と
ランディ・ローズ擁して「ブリザード・オブ・オズ」を立ち上げたオジー、両者の名声を当て込んで、
勝手に掘り起こしてリリースしてしまったというのが実情の曰くつき、限りなくブートに近いアルバム。

当然バンド側はプンプンものの怒り心頭、このアルバムの存在自体認めないという態度をとったにもかかわらず、
そんな騒ぎをよそにこのアルバムは全英チャート5位にまでランクイン。皮肉という言葉の意味をそのまま証明
してしまうかのような結果に落ち着いてしまいましたとさチャンチャン。
とは言うものの初期時代のライヴはこの一枚を除けば、2002年にリリースされた「
パスト・ライヴス
のみですから貴重といえば貴重な一枚でもあるし、その内容も下手に小細工してない分、初期時代のみが
まとっていた生々しいドゥーム感がダイレクトに伝わってくるような感じがあるので、オジー・ファンならば
とりあえずは抑えておきたい一枚です。

聴きどころは名曲"
SNOWBLIND"から"CHIRDREN OF THE GRAVE"に続く流れで感じる圧倒的なオーラ感と、
EVERYBODY STANDUP!!COME ON!!」「WE LOVE YOU!! OK!!EVERYBODY LET,S GO!!」を連呼
しまくってる当事のオジー様の若々しいヴォーカル音。これ聴いちゃうとロニ−時代にはその時代の良さが
あるのを分かってる上で、圧倒的に突き抜けた個性という面ではオジー時代の方が遥かに上かも知れない…とか
思ったりしちゃうのもまた事実なのです。

 1 :TOMORROWS DREAM
 2 :SWEET LEAF
 3 :KILLING YOURSELF TO LIVE
 4 :CORNUCOPIA
 5 :SNOWBLIND
 6 :CHIRDREN OF THE GRAVE
 7 :WAR PIGS
 8 :WICKED WORLD
 9 :PARANOID




前作「ヘヴン&ヘル」の商業的成功に伴ってスタートしたブルーオイスターカルトとのジョイントツアーは
大成功を収めたかに見えました。が、このツアーの間に、親友オジーと別々になったことやアルコール中毒
などから様々な葛藤に悩んでいたドラマーのビル・ワードが遂にリタイア、体をボロボロにしたあげくバンド
から脱退してしまいます。サバス・サウンドの土台を成していたビルの脱退はサバスにとって余りにも大きな
痛手でしたが、残されたメンバーは再び走りはじめたサバスの勢いを止めるわけにもいかず、後任のドラマーに
ヴィニー・アピス(かのカーマイン・アピスの弟)を据えて、10枚目のスタジオ・アルバムをリリースします。

1981年11月:
MOB RULES (邦題:悪魔の掟) リリース。

前作「
ヘヴン・アンド・ヘル」のメロディ重視路線から、リズム主体のリフ重視へと路線変更した作品です。
全体的に曲調をよりヘヴィネスにしてミドルテンポにした感じでその分骨太になっていますが、こういう
スローリフ主体の鉈を振り下ろしたような感じのサウンドには、ロニーよりもどっちかと言えばオジーの方が
似合うンじゃないかなあ…といったような印象を受けました。
(ロニーはやっぱ様式美調のドラマチックなメロスピじゃなきゃ…)

とはいえ、オープニングナンバーの"
TURN UP THE NIGHT"で見られる疾走感と爽快感は、ロニーの魅力を
たっぷり引き出しているし、スローテンポな重厚リフとロマン溢れるメロディがミックスされた中にロニーの
力強いヴォーカルがものの見事にマッチした"
THE SIGN OF THE SOUTHERN CROSS"もなかなかの名曲。
"
VOODOO"のブンブンうなるベースとザクザク刻むギターはまさにサバス・サウンドそのものを象徴するかのような
出来映えだし、メインナンバーとも言える"
MOB RULES"の地の底から響いてくるかのようなヘヴィネスっぷりも
文句なしに気持ちよく、どうしてこのアルバムがセールス的に不振だったのか、ちょっと不思議なくらいです。
あ、個人的にオススメする一番の聴きどころはラストの"
OVER & OVER"。スローなハードバラードって感じの曲で
もちろんメロディもいいんですが、何よりもそのところどころに挿入されているトニーのやけくそ気味のソロが
もう泣きまくって哀愁をそそりまくるったらありゃしないス。(こういうのはサバスには珍しいンじゃないかなあ)

このアルバム・リリ−ス後、サバスはイギリス〜アメリカへのサーキット・ツアーに出ますが、このロードの途中で
バンド内のイニシアチブを巡って、トニー&ギーザの初期メンバーに対するロニーの風当たりが強くなったところへ
今後の方向性に関しても対立してしまったロニーは、ドラマーのヴィニー・アピスを引き連れてあっさりと脱退。
自らディオを結成し84年「
情念の炎」を発表して当事のロックシーンを一世風靡することになります。

 1 :TURN UP THE NIGHT
 2 :VOODOO
 3 :THE SIGN OF THE SOUTHERN CROSS
 4 :E5150
 5 :THE MOB RULES
 6 :COUNTRY GIRL
 7 :SLIPPING AWAY
 8 :FALLING OFF THE EDGE OF THE WORLD
 9 :OVER AND OVER




1982年12月:LIVE EVIL (邦題:ライヴ・エビル) リリース。

ロニーが脱退したことにより当事のマネージャーが先走り、サバス解散声明を方々に出しまくったり、
発表前にロニーが「俺様がミックスに立ちあっていないライヴ・アルバムなんて認めないよーん」と駄々を
こねたりと色々と複雑な状況の中にて発売されたライヴ盤。「
MOB RULES」ツアーの様子を収めたもので、
ロニー在籍時のライヴが聴けるのはこれだけなので、そういう意味では貴重な一枚かも。

で、その内容ですが、流石に"
BLACK SABBATH"・"IRON MAN"辺りの初期の曲は、ロニーの気張りすぎが
妙に浮いてしまっていて若干道化気味というか、そのナチュラルじゃない力みっぷりの中にオジーへの対抗意識
が垣間見えると言ったら言い過ぎになるのか(ロニーのオジー嫌いは業界では有名です)よく分からんですが、
まあ一つ言えることとしては、ロニーさんそんなに気張らンでええからお前はひたすら貴族みたいに手ェ広げて
堂々と歌ってりゃいいんだってことですかね。

後、過去の楽曲が素晴らしいのは当然として、思ったよりも「
MOB RULES」からの曲がなかなかのハマり具合を
みせていて実にいい感じです。"
HEAVEN AND HELL"のところの盛り上げは空回り気味だし、その後の冗長な
流れもちょっと頂けないところがあるけれど、それでもそこから"
THE SIGN OF THE SOUTHERN CROSS"に
繋がっていく辺りのヒート感とかなかなかのものだし。
やっぱし前作は決して悪いアルバムではなかったけれど、時代の流れがヘヴィ一辺倒からメロスピ・ネオクラに
シフトしていた過度期だったから、そういう意味では不運だったとも言えるかも。そのセールス不振がきっかけと
なってこの中期サバスはアジャパーになってしまったンだから、残念と言えば残念です。

 1 :E5150
 2 :NEON KNIGHTS
 3 :N.I.B
 4 :CHILDREN OF THE SEA
 5 :VOODOO
 6 :BLACK SABBATH
 7 :WAR PIGS
 8 :IRON MAN
 9 :THE MOB RULES
 10:HEAVEN AND HELL
 11:THE SIGN OF THE SOUTHERN CROSS〜HEAVEN AND HELL
 12:PARANOID
 13:CHILDREN OF THE GRAVE
 14:FLUFF




後期(トニー・アイオミ)(1984 〜 1996)

ロニー脱退後の新ヴォーカリストにオジー復活か?などと噂が飛ぶ中(これは結構可能性があったらしい)、
その後釜に座ったのは、よりにもよって伝説の第2期ディープ・パープルのフロントを支え続けた「あの」
イアン・ギラン様でした。ええー! 噂によるとサブビジネスで経営していたホテルが火事になりその改装費が
急遽必要だったとか、自ら率いていたギランのレコードセールスが落ち込んでいて、何とかこの辺りでもう1発
当てたかったとか、ディープパープル再結成の話しがオジャンになり暇になってしまったとか、まあ色々と
ひどいことを言われつつも突如実現したこの豪華なジョイント劇に界隈は騒然。
しかもここへ重度のアルコール依存症で人間以外の生物になっていた筈のビル・ワードまで復帰してしまい、
周囲にはブラック・パープルと揶揄され、ますます混乱と混沌の様相が漂ってきた状況の中で、サバスの歴史の
中でも最大の問題作と言われたこの11枚目の作品がリリースされました。



1983年10月:BORN AGAIN (邦題:悪魔の落とし子) リリース。

”オギャアアアアア”ってなジャケット絵が印象的なこのアルバム、
サウンド的には「
血まみれの安息日」〜「SABOTAGE」の頃の初期サバス時代を意図した風な印象を受けますが、
その割には初期サバスの頃のあのねっとりとしたドゥーム感を感じませんでした。あーこれはギランのキンキン
響くシャウトのせいもあるのでしょうか?やっぱしどう聞いてもあの声にはパープルのイメージが強すぎて思わず
笑っちゃうくらいだもの。そしてそういう先入観をカバーするほどの魅力がこの頃のギランにあったのか?と
問われると、あらためて聴いてみてどうも首をかしげざるを得ません。
サバス・サウンドの特徴の一つである生理的に気持ちいいリフも希薄なところにもってきて音質の悪さも手伝って、
総合面で考えるとやはりこれは駄作なのではないか?とも思うのですが、聞き込むとわりと味があってスルメ系
だったりもするンですよね。

"
THE DARK"を導入部のイントロとして様式美的に使用した"ZERO THE HERO"の超重サウンドのウネり具合は
かの名曲"
SABBATH BLOODY SABBATH"を思わず彷佛とさせてくれるものがあるし、それに続く疾走ナンバーの
"
DEGITAL BIATCH"も展開的にかなりメリハリが利いていて悪くないし、"BORN AGAIN"もそのブルージー具合に
ギランのヤケクソ気味のシャウトがマッチしてかなり魅力的な曲に仕上がっていると思うし、ラストナンバーの
"
KEEP IT AGEIN"なんて初期サバスとも中期サバスとも異なる、いわゆるギラン時代のサバスとしての新しい境地を
切り開いた名曲だとも思う(ギターソロも抜群だし)んだけど、何故か全体を通して聞くと”これは!”というものが
ないような気がするんですよね、うーむ。
ま、ギランの「ショオオオオオオオ」って響くシャウトと、サバスのどっしりした骨太サウンドの融合は、そこそこ
面白いっちゃあ面白いし、ロニー時代の様式美路線はほぼ掻き消されているので、オジー時代のサバスが好きだった
人は聴いてみて損はしないかも。

この最大の問題作をリリ−スした後、我らが「ブラック・パープル」はツアーに出ますが、予想された通りビルが
軽々とリタイア。代わりに元ELO(このアンマッチさも凄いっちゃ凄いなあ)のベヴ・ベヴァンを立てて、
なんとか窮地を乗り切ろうとしますが、今度はギランが予定調和とばかりディープ・パープル再結成話しに飛びつき
途中で脱退。この豪華絢爛コラボレーションはあっさりと幕を迎えることになりました。
ま、後にギランが「ありゃあサバスにとって最悪の選択だったぜハッハー」とか語ってるンだから、元々長続きする
わけのないメンバーだったことは確かだし、ギランがパープル再結成の方に心惹かれたおかげで、あの第5期パープル
の名盤「
パーフェクト・ストレンジャーズ」が世の中に出たのだから、結果的にはこれで良かったのかも。

 1 :TRASHED
 2 :STONEHENGE
 3 :DISTURBING THE PRIEST
 4 :THE DARK
 5 :ZERO THE HERO
 6 :DEGITAL BIATCH
 7 :BORN AGAIN
 8 :HOT LINE
 9 :KEEP IT AGAIN

そんなわけであっさりギランにバックれられてバンドとして機能しなくなってしまっていたブラックサバスに、
1985年7月13日、激震が走ります。この日行われたライブエイドにてオジーとビルを迎えて、あの伝説の
第1期メンバー(俗にいうオリジナル・サバス)が華々しい復活劇?すわマジか!と業界を騒然とさせたこの話題も
蓋を開けてみればこのメンバーでの再結成は不可能だということを再確認しただけの茶番に終わってしまい、
そうのこうのしているうちにギーザ・バトラーが遂にサバスに見切りをつけて脱退。ハッと気づけばサバスに
残されたのはトニー・アイオミ先生1人だけという有り様に。
まあこれも運命だし仕方がないやとばかり気分一転のトニー先生は、元ディープパープルのグレン・ヒューズ(Vo)、
リタ・フォード・バンドのエリック・シンガー(Ds)に元ホワイトライオンのデイヴ・スピッツ(b)、キーボードに
サバス・サポートメンバーのジェフ・ニコルスを加えて自らのソロアルバム作成に着手しますが、レコード会社との
契約の絡みでせっかくソロ名義で出すつもりだったこのアルバムもサバスの名前で出さざるを得なくなってしまうと
いう憂き目に。どこまで不幸なんだ、トニー先生…



というわけで 1986年10月:
SEVENTH STAR (邦題:セヴンス・スター) リリース。
クレジットに「BLACK SABBATH FEATURING TONY IOMMI」とあるのは、せめてもの意地でしょうか?
ま、ギーザバトラーとビル・ワードという、サバスの屋台骨を支え続けてきたこのリズム隊を失った今、
この時点でサバスはサバスでなくなったといえるでしょう。このアルバムからブラックサバスはその実態を
トニー・アイオミ・バンドに変えて、地味ながらも堅実な活動を展開していくことになります。

で、その内容なんですが実にメロディアスかつスピード感溢れる内容で、前作のヘヴィネス路線はどこへやら?
といった風で(この辺りギーザがいなくなった影響も大なんだろうな)、より時代にマッチしたサウンドに
仕上がっています。もう少し噛み砕いていうとリフ重視のリズム主体からメロディ重視への路線変更といった
感じで1曲目の"
IN FOR THE KILL"からして妙に軽いノリのスピードナンバーだし(だけどのびのびやってる
印象も受ける)、次曲の"
NO STRANGER TO LOVE"なんてどこからどこをどう聞いてもサバスじゃねえだろコレ
っていうくらいブルージーで、なんかホワイトスネイクみたいなノリに仕上がっちゃってるし。

じゃあ駄作なの?と問われれば、いや全然そんなことはなく、前曲を様式美イントロとするおなじみの手法から
始まる"
SEVENTH STAR"のうねりまくるスラッシュリフは旧サバスの血脈が未だ健在であることを知らしめて
くれるし、かの名曲"BURN"を連想させるがのごとき疾走しまくりナンバーの"
TURN TO STONE"は文句なしに
カッコいいし、そういった部分を加味して総合的に考えるにパープルを奔流としたブリティッシュ・ハードの王道路線を
なぞった佳作と言ってもいいと思います。(まとまりすぎてて若干面白みに欠けるけど)

このアルバムをリリース後、一行はトニー・アイオミとしてでなく、ブラックサバスの名前を冠したままツアーに
出ますが、これにカチンときたギーザ・バトラーには訴訟を起こされるわ、もともとサバスの昔の歌なんてまったく
歌うつもりナッシングだったグレン・ヒューズにはトンズラこかれるわ、どさくさにまぎれてデイヴまでもが脱退
しちゃうわともう踏んだりけったりだったとか。ああサバスよ何処へ行く…

 1 :IN FOR THE KILL
 2 :NO STRANGER TO LOVE
 3 :TURN TO STONE
 4 :SPHINX
 5 :SEVENTH STAR
 6 :DANGER ZONE
 7 :HEART LIKE A WHEEL
 8 :ANGRY HEART
 9 :IN MEMORY


ツアー中にサバスをバックれてしまったグレン・ヒューズの代りに故レイ・ギランを加入させて、なんとかツアーは
乗り切ったものの、いまいち軌道にのりきれないまま、サバスはニューアルバム作成に着手することになります。
で、レコーディング開始早々問題勃発。プロデューサーがレイ・ギランのヴォーカルとデイヴ・スピッツのベースが
気に食わんとか抜かしだし、彼等はあっさりクビちょんパに。代りのべースとして元レインボーのボブ・デイズリーを
代役に立てたものの、当然メイン・パートであるところのヴォーカリストがそんな簡単に見つかるわけはなく、
オーディションを行なうも人選は難航。そんなことをしている間に今度はドラマーのエリック・シンガーがグダグダの
この状況に見切りをつけてゲイリー・ムーア・バンドに加入するためサバスを脱退。ついでにメンバーチェンジの発端と
なったプロデューサーのジェフまでもが遅々として進まぬ作業に嫌気がさし(自分が遅らせたくせに)自ら降板と、
もうバンド内部はボロボロ、弱り目に祟り目・泣きっ面にハチといった感じの悲惨な様相を呈しはじめます。

それでも捨てる神あれば拾う神あり、
後任のドラマーに元ELOのペヴ・ペヴァン(「
ボーン・アゲイン」ツアー時にも在籍)を呼び戻し、オーディション
選考でトニー・マーティンという逸材を手に入れ、後任プロデューサーに大物クリス・タンガリーディスが加わることも
決定し、さあいよいよこれからだ!というところで今度はトニー先生が病気でダウン。再びレコーディング作業は凍結。
そんなこんなでサバス歴史上においても過去に類を見ないほど産みの苦しみに悩まされたこのニューアルバムが、
どうにかこうにか完成した頃にはレコーディング開始から半年以上が経過していました。



1987年12月:THE ETERNAL IDOL (邦題:エターナル・アイドル) リリース。

基本的には「
ヘヴン&ヘル」の頃の路線を踏襲しているように見受けられるこのアルバム、何よりも全体が
若々しさと瑞々しさに満ちています。そう感じさせるのは透明感溢れるハイトーン系シャウトを得意とする
トニー・マーティンの声と、やりすぎくらいに華々しく走りまくったトニー先生のギターソロのせいでしょう。
ブラサバお家芸の特徴あるリフはいまいち薄めだけど、その分をカバーして余りあるほどのメロディの良さと、
脳の細胞の気持いいトコをダイレクトで刺激してくれるような抜群のギターソロ(特に"
HARD LIFE TO LOVE"、
こんなにはっちゃけてるアイオミさん見たことない)が見事な一体感を産み出し、オジーやロニー時代の代表作
にもまったくひけをとらないほどの名作に仕上がっています。

特に注目すべきは疾走ナンバーの"
THE SHINING"と重厚ナンバーの"GLORY RIDE"。
メロディの良さのみならずその要素と反比例しがちなヘヴィさをも伴った上で、そのリズムにトニーの
透明感溢れるヴォーカルが見事にのっかって実に爽快感溢れる名曲となっています。
他にも抜群のビート感を感じさせる"
BORN TO LOSE"や、初期時代のアコスナンバー"LAGNA SUNRISE"を
思いおこさせるような"
SCARLET PIMPERNEL"から、スピード・ヘヴィネス・メロディアスと3拍子揃った
"
LOST FOREVER"へ続いていく展開なんてもう最高の一言。さらに加えていうならば捨て曲もゼロ。

ま、ブラック・サバスという名前で出しさえしなければ、もっと世間に注目を浴びた一枚であった筈とか考えると
多少複雑な気持ちになったりもしますが。(それほどまでに初期サバスの飛び抜けた個性は…いやもう言うまい)
まあサバス初期のドゥーム・ムードを考慮しなければ、トニー・マーティンは大当たりでした。
コイツの声の魅力ってのは正直なかなか文章では説明しにくいものがあるんですが、一言でいってしまうならば
インギやリッチーがヴォーカルに使いたくなるようなタイプ?とでもいうか… うーん、ますますわかんないね! 

 1 :THE SHINING
 2 :ANCIENT WARRIOR
 3 :HARD LIFE TO LOVE
 4 :GLORY RIDE
 5 :BORN TO LOSE
 6 :NIGHT MARE
 7 :SCARLET PIMPERNEL
 8 :LOST FOREVER
 9 :ETERNAL IDOL




1989年:
HEADLESS CROSS (邦題:ヘッドレス・クロス) リリース。

相次ぐツアーメンバーチェンジや、反アパルトヘイト運動が激しかった当時の南アフリカでコンサートを
行なったことによるアゲインストなどで、この時期サバスは非常につらい立場に追い込まれていました。
そんな中レコード会社をIRSに鞍替えして心機一転、伝説のドラム職人:コージー・パウエルと、
名うてのセッションベーシスト:ローレンス・コットルを加えて、この14枚目のスタジオ盤を作成します。

方向性としては、メロディアスかつドラマチックな前作の方向性をそのまま推し進めつつ、
疾走感を若干抑え目にして、その分ミドルテンポによる重厚さを演出しているこのアルバム、
曲調自体もよりキャッチーな感じになっていて、極めて市場を意識した作りに仕上がっています。

コージーのドラムが作り出す微妙な間というか余韻というか(スウィング感?)正体不明の何かに
取り付かれたような重々しいリズムの中を荒々しく切り裂くような重厚ギターリフとの統一感と、
歌メロの良さがマッチしている"
HEADLESS CROSS"は間違いなく名曲。
他にもブライアン・メイが特別参加していると言われる"
WHEN DEATH CALLS"のメロディラインの
美しさとドライヴ感が癒合したようなフィールや、中盤で解き放たれたかのように展開されるソロの情感
が素晴らしい"
KILL IN THE SPIRIT WORLD"など聴きどころは満載。
加えて情緒感豊かに聞かせてくれるラストの"
NIGHTWING"は後期サバス屈指のハード・バラード。必聴!
(それでも個人的には「
エターナル・アイドル」の方が好きだけど)

 1 :THE GATS OF HELL
 2 :HEADLESS CROSS
 3 :DEVIL AND DAUGHTER
 4 :WHEN DEATH CALLS
 5 :KILL IN THE SPIRIT WORLD
 6 :CALL OF THE WILD
 7 :BLACK MOON
 8 :NIGHTWING




1990年:T Y R (邦題:ティール) リリース。

ツアー中に脱退したローレンス・コットルの代わりに元ホワイトスネイクのニール・マーレイを加えて
何とかロードを乗り切ったサバスは、そのメンバーのまま15枚目のスタジオ・アルバムを作成します。
(この頃のサバスはあまり目立っていないけど、よくよく考えるとトニーアイオミ、コージーパウエル、
ニール・マーレイって無茶苦茶豪華なメンバーじゃないか?)

エターナル・アイドル」から続いた様式美サバスの頂点は、3作めのこのTYRで頂点を迎えます。
総合的な位置付けとしては初期サバスの原点である、よりヘヴィネスに・ダークネスにという路線に、
中期以降で培ったメロディアスな要素を融合させ、その味付けにコンセプト的要素を取り入れた後期
サバスの集大成ともいえる作品に仕上がっています。
(個人的な感覚としてはなんかロニー時代のレインボーを大仰にしたような世界感)

まず情感溢れるメロディの"
ANNO MUNDI"から、"DIE YOUNG"的ベタノリ疾走感の"THE LAW MAKER"
へ続いていく流れが凄くイイです。このドライヴ感全開のノリ(冒頭にオーバーがつくくらい)はラストの
"
HEAVEN IN BLACK"でも炸裂。(コージーの変幻自在のドラムにも注目)

"
SYMPTOM OF THE UNIVERSE"(サボタージュ)で見せたプログレフレーヴァーを彷彿とさせるような、
"
THE SABBATH STONE"からは、初期サバスが持っていた大きなスケール感とダークネスな雰囲気を感じる
ことが出来るし、このアルバム一番の売りともいえるコンセプト構成の3楽曲:"
THE BATTLE OF TYR"〜
から"
ODINS COURT"を経て"VALHALLA"に続いていく流れでは、ダブル・イントロ的に使用した前2曲の
もの悲しいフィールが最後で一気に炸裂するダイナミズムの爽快感を味わうことができるといった具合で、
後期サバスの中では「
エターナル・アイドル」の次にお勧めしたいアルバムです。

 1 :ANNO MUNDI
 2 :THE LAW MAKER
 3 :JERUSALEM
 4 :THE SABBATH STONE
 5 :THE BATTLE OF TYR
 6 :ODINS COURT
 7 :VALHALLA
 8 :FEELS GOOD TO ME
 9 :HEAVEN IN BLACK


このままトニー・マーティン&コージー・パウエルのラインナップで突き進んで、
ディオ時代に築いた様式美サバスの原型をさらに高みに昇華させていくのかと思いきや急遽一転、
1992年、バンド内に大変動が発生することに?

ことのきっかけは、ディオのミネソタ公演にギーザ・バトラーが姿を見せて共に"
NEON KNIGHTS"を
ジャムったことだったそうですが、その後色々と話しているうちに「あの頃(ヘヴン&ヘル)の4人が
バラバラになってるなんてバカげてる」なんて話が盛り上がり、ギーザが中期サバスメンバー再結成話を
トニーに持ちかけることに。これによりロニーとギーザがサバスに復帰。哀れトニー・マーティンは
クビちょんぱの憂き目にあうことに。ついでにコージーがたまたま落馬で怪我をして休養していたのを
いいことに、彼を大嫌いなロニーが色々と画策。
はっと気づけばロニー的に都合のいいヴィニー・アピスがドラマーの座に収まっちゃったりしてましたー
とかいう、とてもステキなお話が聞けたところで、このニュー?サバスのお話を続けたいと思います。



1992年:DEHUMANIZER (邦題:ディヒューマナイザー) リリース。

で、その内容なんですが、当事のロニーが意識していたらしいスラッシュ系メタルの流れを汲んだ、
ミドル〜アップテンポ調のヘヴィリフ重視曲がズラッと並んだ造りになっています。

曲中で変化する重々しいリズムの中、ロニーの力強い(だけど多少ヘヴィさを意識しすぎの)声がズシズシ
響きまくる"
COMPUTOR GOD"や、スロー主体のキャッチーナンバー"AFTER ALL"、ギーザの重爆撃級
ベースラインが疾走しまくる"
TV CRIME"など、オープニングから続くモダン・ヘヴィネス指向の3曲は
全部いい感じ。テンポもそれぞれミドル、スロー、ハイと、ここまでの展開はメリハリが利いていてとても
グーに感じました。

他にも、サバス風重厚リフがうなりまくるメロディアス・ナンバー"
MASTER OF INSANITY"、"I"や、
"
TV CRIME"と同パターンのブン回し系ノリな"TIME MACHINE"など、曲の一つ一つを取ってみれば、
かなりオイシイ内容に仕上がっている筈なのに界隈の評判はボロクソ? 何でだろう何でだろう?と思った
その原因は秀逸曲とそうでない曲との配置バランスの悪さにあるんじゃないか?とか個人的には思ったり
しているわけでして、特に後半、ミドルテンポのヘヴィノリが続くあたりの単調さは否定できないような気が。

後はアレかな、やっぱ今までの実績及びイメージからも常に威風堂々かつミステリアスなムードを期待される
ブラックサバスというバンドにとって、モダン・ヘヴィネスっつう重いけど分かりやすい音楽的指向性は肌に
あわなかったんじゃないかと。(要はサバスらしいダークムードがテンポにより損なわれているンじゃないかと)
加えてリフ・リズム主体のモダン・ヘヴィネスは、メロディ面において単調になりがちな部分がネックになったり
するし…(実際ギターソロも"
COMPUTOR GOD"で見せる後半のスパークっぷりを除けば、他はイマイチ)

それでも4と5をひっくり返して(メリハリの強化)7・8を削除(駄曲抹消)すれば名作になりえた一枚かも
とか考えるに、プロデューサーの編成センスも関係していたのかも知れませんね。

この後、サバスはオジー引退ライヴ出演の打診を受けることになります。
この時、トニーとギーザは快く出演を快諾したものの、オジー嫌いのロニーはそれに難色を示し、
(背が小さいだけでなく人間までも小っちゃいのかロニー?)その代役は巡りめぐって何故かロブ・ハルフォード
(ジューダス・プリースト)のもとへ? ロブはこのオファーに対して散々悩んだあげく、ロニーとも相談し、
結局一夜限りの参加を承諾します。そのギャラをロニー及びその元夫人のウェンディが運営する基金に全額寄付した
辺りは人格者と言われるロブらしい美談ですねえ。(ホモだけどな!)
そのコスタ・メサのショウのクライマックスで、13年ぶり(ライヴ・エイド以来?)にオリジナル・サバスが
復活して"
BLACK SABBATH"・"FAIRIES WEAR BOOTS"・"IRON MAN"・"PARANOID"の4曲をプレイする
というファンにとっては涙ものの嬉しい出来事もあり、このライヴを契機にオリジナルサバス復活の構想が動きだす
ことになります。それに嫌気がさしたロニーとヴィニーはディオを再結成する為、あっさりサバスを抜けてしまい
ましたとさチャンチャン。

 1 :COMPUTOR GOD
 2 :AFTER ALL
 3 :TV CRIMES
 4 :LETTERS FROM EARTH
 5 :MASTER OF INSANITY
 6 :TIME MACHINE
 7 :SINS OF THE FATHER
 8 :TOO LATE
 9 :I
 10:BURIED ALIVE




1994年:CROSS PURPOSES (邦題:クロス・パーパシス) リリース。

オジー引退ライヴ終了後、信憑性を帯びて静かに動き出したオリジナル・サバス再結成プロジェクトは、
結局のところ、水面下で様々な思惑が入り乱れたことに加え、オジー/トニー/ギーザのそれぞれのマネージャーが
互いに自分の権利を主張しあったりで、蓋を開けてみればやっぱり×、再結成話はあっさりと水泡に帰します。
(まあ、どうせそんなことじゃないかと思ってたけど)

で、クビになってたトニー・マーティンがあっさり呼び戻され(ホント都合よく使われてるなコイツ)、
ベースはそのままギーザ・バトラー、ドラマーには元レインボーのボビー・ロンディネリが加わり、
1994年1月、サバスは17枚目のこのスタジオ・アルバムをリリースします。

ギーザらしい芯の通ったベースラインが印象的な出だしのスピードナンバー"
I WITNESS"から
情緒的なハードバラード"
CROSS OF THORNS"に続く流れは悪かないけど、特に秀逸な出来というわけでもなく、
"
VIRTUAL DEATH"の重厚リフからは、あの"INTO THE VOID"に通じる何かを感じるも、それに対して歌メロが
弱すぎるような気もするし、"
IMMACULATE DECEPTION"のスローからハイにテンポが切り替わる時に感じる
高揚感や、シェンカーばりの泣きのギターイントロから始まる"
DYING FOR LOVE"は、なかなかに印象的だけど、
やはりどこか曲として弱いような…

ヘッドレス・クロス」「TYR」の頃のようなドラマチックな重々しさが希薄なような感じがするし、
(これはドラムがコージーじゃないからか?とも思ったけど、ベース・ラインはギーザだしなあ)
かといって、「
エターナル・アイドル」の頃のような、徹底的にエモーショナル・どこまでもメロディアス
みたいな内容でもないし…っつう印象が、どこか全体的にピントぼけしているような感覚を植え付けてしまって
いるのかも。(どことなく中途半端な出来?)
まあ、サバスとして聞かなければ、普通によく出来たアルバムだとは思うけど、決して名作ではないなあ。

 1 :I WITNESS
 2 :CROSS OF THRONS
 3 :PSYCHOPHOBIA
 4 :VIRTUAL DEATH
 5 :IMMACULATE DECEPTION
 6 :DYING FOR LOVE
 7 :BACK TO EDEN
 8 :THE HARD THAT ROCKS THE CRADLE
 9 :CARDINAL SIN
 10:EVIL EYE
 11:WHATS THE USE




1995年:FORBIDDEN (邦題:フォービドゥン) リリース。

前作「
クロス・パーパシス」に伴うツアー終了後、サバスの大黒柱ギーザ・バトラーが再び脱退。
トニー・マーティンの素質そのものは認めていたものの、ステージ上におけるパフォーマンス能力が
いまいち気に食わなかったという不満が脱退の原因とか言われていますが、真偽の程は定かではありません。
(ギーザはその後、オジー・オズボーン・バンドに舞い戻Rことに。なんだ結局結局サバス絡みじゃん)
加えてドラムのボビー・ロンディネリも(こいつはもっと評価されてもいいドラマーだと思うんだけど…)
バンドをエスケープ。

代りに入ってきたのは「
TYR」ツアー終了後のドサクサでバンドから抜けていたニール・マーレイと、
ロニーとウマが合わなくて自らバンドをおん出たコージーパウエルでした。
(サバスを抜けていた間、2人ともブライアンメイのツアーをサポートしていたそうで)
奇しくもここに「
TYR」作成時と同じメンツが揃うことに。(豪華っちゃ豪華だよな)

で「
TYR」作成時のインスピレーションよ、再び閃けとばかり、作成されたこの18枚目のフルレンスの
内容なんですが、時代に逆行するかのような遅い・重い・暗いのダーク・ヘヴィネス路線は初期サバス自ら
をオマージュにした原点回帰でしょうか? オープニング・ナンバー"
THE ILLUSION OF POWER"のこの
うねりのあるリフ・ラインはまさに初期サバスそのもの。3曲目の"
CAN,T GET CLOSE ENOUGH"からも
若干メロディ寄りにはなっているものの、初期サバスの荘厳なテンションをそこはかとなく感じるし。

じゃあこの路線で最後まで突っ走るのかと思いきや、中盤の"
I WON,T CRY FOR YOU"はトニーマーティン
本来のテリトリーである様式美的センスを活かしたメロディアス・バラードになってるし(トニー先生の
まとわりつきソロは相変わらず健在)、後半には「
ディヒューマナイザー」で見せたモダン・ヘヴィネス調の
曲が散らばってるし、というわけで、何か変えていかなくてはと必死に暗中模索している様が伺えるような…
全体的にそんな圧迫感のようなものを感じるアルバムだと思いました。

ぶっちゃけ一貫性がないと言ってしまえばそれまでなんですが、このまとまりのなさは割とアリというか、
こういうモギャーって感じでのたうちまわっているような造りのアルバムは、個人的には好きだったり。
(少なくともヘヴィ路線回帰というベクトルは感じとれるし、前作ほどピントぼけしてないし)
メロディアス&ヘヴィネスの融合の頂点という意味では、「
TYR」がそれに近い出来なんだろうけど、
どちらかといえばそれに至るまでの道でバラバラになってしまったアンバランスな私を見てーッ!
とかまあそんな感じで聞いてみたりするといいかも。(いいか?)

 1 :THE ILLUSION OF POWER
 2 :GET A GRIP
 3 :CAN,T GET CLOSE ENOUGH
 4 :SHAKING OFF THE CHAINS
 5 :I WON,T CRY FOR YOU
 6 :GUILTY AS HELL
 7 :SICK AND TIRED
 8 :RUSTY ANGELS
 9 :FORBIDDEN
 10:KISS OF DEATH
 11:LOSER GETS IT ALL

ちなみに、様々に変動した後期サバスのメンバー陣の中で、トニーアイオミを中心としたトニー・マーティン
/コージー・パウエル/ニール・マーレイのこの4人のメンツこそが、バンドに対する思い入れ・献身度をも
含めて、ベスト・メンバーだったいえるでしょう。
なかでもコージーはこのブラック・サバスというバンドに対しての思い入れはかなり強かったみたいで、
後のインタビューにおいても
 
「伝統のBLACK SABBATHに参加できて良かったと思ってる。一度壊れたバンドを再生するプロセスに
  協力できて光栄だった」
と語っています。彼が未だ健在であれば、安易な復帰話により未だ過去をひきずり続けているサバスの未来は、
もう少し違ったものになっていたかもしれません、

<コージー・パウエル: フォービドゥーン・リリース当時のインタビュー抜粋>
Q:今から10 年後は何をしてると思いますか?

 
20年前にも10年後に自分が何をしているかっていう質問をされたよ。
 そして、僕は今でもプレイし続けている。肉体的に可能であれば、プレイし続けてるんじゃないかな。
 この業界の奴らは、本当に病気にでもならない限り、みんなプレイし続けると思うよ。
 続けられる限り続ければいいのさ。老いぼれて飲み屋通いなんてごめんだね。
 僕はずっとプレイし続けるよ。さもなくば… ジ・エンドさ!!


残念、そして合掌。




1996年:THE SABBATH STONE (邦題:ザ・サバス・ストーン) リリース。

IRS在籍時代の「
ヘッドレス・クロス」(89)〜「フォービドゥン」(95)を中心にセレクトされたベスト盤。
他にもギラン在籍時の「
ボーン・アゲイン」や、本来ならばアイオミのソロとして出される筈だった「セヴンススター」、
今やサバスの正式ヴォーカリスト:トニー・マーティンがデビューを飾った「
エターナル・アイドル」などからの曲も
僅かながらフォローされているので、オジー/ロニー2つの黄金時代以外の、後期サバスの世界を垣間見てみたい
方にはオススメ。

様式美の追求とヘヴィネスへの回帰の間で揺れ動いたその音楽性は、滅びの美学というか、変化への渇望というか、
そういった産みの苦しみに満ちていて、ある意味なかなかに甘美だと思います。
(それでもかなり選曲に納得いかない部分はあるけど)

 1 :HEADLESS CLOSS
 2 :WHEN DEATH CALLS
 3 :DEVIL & DAUGHTER
 4 :THE SABBATH STONES
 5 :THE BATTLE OF TYR
 6 :ODIN,S COURT
 7 :VALHALLA
 8 :TV CRIMES
 9 :VIRTUAL DEATH
 10:EVIL EYE
 11:KISS OF DEATH
 12:GUILTY AS HELL
 13:DISTURNING THE PRIEST
 14:HEART LIKE A WHEEL
 15:THE SHINING




新世紀(リユニオン)(1997 〜)

初期サバス復活。そのうち書きます。





[TOP  Impre]