第2話:劉鳳

「私の能力の名は…ラディカル!グッド、スピィィィィィード!
 さあァァ、行くぞ!!私は何でも速く走らせることが、できま〜す
(語尾上げ)
  俺ことストレイト・クーガーの記念すべき初登場は第2話より。
  初対面だったとは言え、みのりさんがあまりにも固いんで、いきなりテンションあげたら
  すかさず口から泡吹いてたけど、なんかヤバかったかなー?

  


この世の理はすなわち速さだと思いませんか、物事を速くなしとげればそのぶん時間が
 有効に使えます、遅いことなら誰でも出来る、20年かければバカでも傑作小説が書ける!
 有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、週刊よりも日刊です、つまり速さこそ有能なのが、
 文化の基本法則!そして俺の持論でさ−−−−−−−ァ!

「ああ…2分20秒…! また2秒、世界を縮めた…ァ!」

  「この世…」から「ーァ!」までの時間は息継ぎなしで16秒。
  速さこそ世界、速さこそ全て、誰も俺のこの速さについてこれない…!
  そんな俺の素晴らしき勇姿を前にみのりさんは相変わらず口から泡を吹き続けている。
  ひょっとして体の弱い人なのかなァー

  


「いやはや、シェリスらしい物凄い牽制ですね、みのりさん」
「…みもりです」(水守)
「あっハァ、すみません、人の名前を覚えるのが苦手でェ〜」
  どうやら彼女の名前は「みのり」じゃなくて「みもり」らしい。
  しかし、この世の全てを統べる「速さ」に比べれば世界一どうでもいいことだ。
  それにしてもこの「罪と罰」はいつ読んでも文化的だなァ〜

  


「ハッハッハッハッハッハ!!みのりさん!」
「み…みもりです」(水守)
「すいません… 実は俺、こう見えても人と違うことをするのが大好きなんです!
 行きませんか?」
「興味あるんでしょ?アルター能力者同士のたたかいー」
「あ…いいのですか?」
「もちろん。楽しいドライブになりそうですー」
「…車…ですか?」
「やめておきますか?」
「い、いえ!行かせて…いただきます…」.
  
移動速度のみならず、ロー・ミドル・ハイとテンションの切り替わりまで速い。
  「速さ」に関することならば何でも一番でないと気がすまない、それが速さを支配する男こと、この俺!
  しかし何故か人はそれを目の当たりにすると、困惑しうろたえる。
  ああ、何故に「速さ」はこんなにも理解されにくいのか…

  


「フヒャヒャヒャヒャヒャー!ブゥラァボォォォォォ!」
「あ、の、スピードを…!」(水守)
みのりさん、俺はこう思ってるんです、旅は素晴らしいものだと。その土地にある名産、
 遺跡!暮らしている人々との触れ合い!新しい体験が人生の経験になり得難い知識へと昇華する!
 しかし目的地までの移動時間は正直面倒です、その行程この俺なら破壊的なまでに短縮できるゥ!
 だから俺は旅が大好きなんです!!聞いてますかみのりさん、みのりさァァァ〜〜〜〜ん!

「ハァァ〜〜〜! 1時間50分38秒〜 また世界を縮めた…ァ!」
.
「ウグっウフゥ(ゲロ吐きつつ)
「(↓)体調でも悪かったんですかァ?みのりさん」
「………み、みもりです!えぐっ」
「あハァ、すみません〜」
.
  「みのりさん〜」から「〜〜〜ん!」までの時間は息継ぎなしで18秒。
  速さこそ真理、速さこそ真実、誰も俺のこの速さについてこれない…!
  そんな俺の素晴らしき勇姿を前に、みのりさんはまたもや口から泡吹いた。
  このひと、ひょっとしてカニの化身か何かかなァ?

  


「ここが…そうなのですか?」(水守)
「ん〜〜フゥ?」
「誰もいないようですけど…?」
「ん〜〜〜〜フフフゥ〜〜」
「…! あなた!まさか!」
「…そうだとしたら、どう、しますかァ〜?」
「わたしは…ホーリーの…!」
「ホーリーの?」
「ホーリーの… 何でしょうねェ、みィのォりィさァァァァァァァァァん!」
.
 
 俺は何よりも速さを優先する。
  そんな俺の女性に対するアプローチのモットーは、もちろん「迅速即決」。
  というわけで、人気のない荒れ地に連れ込んで早速ルパンダイブを敢行してみた。みのりさーん!

  


「キィヤァァァァァァァァァァ!!」(水守)
「ハッハッハッハッハッ、冗談ですよゥ〜」
「あっアうっ…あいっ」
「そう!貴女は体裁を取り繕ってない方が、魅力的ですよ…!」

  したら思ったより強く拒否されたので、すかさず精神的な側面に攻めの鉾先を変えることにした。
  俺は何よりも速さを優先する男。
  そんな俺の女性に対するアプローチのモットーは迅速即決の他にもう一つ、そう「臨機応変」。
  それにしてもみのりさん、実にいいはうはう顔をするなァ〜 
  そしてサドもスピードも頭文字はともにS。この俺のS心は今や刺激されまくりだー

  




第3話:ホーリー

「お口にあいませんか?」
「どうも、みのりさん」
「みもりです…」(水守)
「それより、食事を楽しみましょう」
食事は人の心を豊かにし、エネルギーと明日への活力を生み出してくれます、ここに速さは
 必要ありません、味を堪能するために歯で噛み砕いて食べ物を胃へと流し込むゥ…そして…

「すみません、気分がすぐれませんので、これで…」
「なるほど。人間には理性で行動できない日があると聞いたが… ああ〜それは神秘だ〜」
.
  今までの短縮記録を更に更新すべく会話にターボをかけた筈が、まさかそれをみのりさんにキャンセルされるとは…
  流石みのりさん、俺の愛する人… 一筋縄ではいきそうもないー

  


「随分、勝手な真似をしてくれたなァ、しかも俺より速く逃げようとしている!
 どっちかと言うと、後者の方が、気に入らないッ!
「…あんた!?」(カズマ)
「カズヤ?」
「カズマだ!!」
  ホーリー本部に暴漢が侵入、まあそんなことはどうでもいい。
  どうやら昔の知り合いらしいが、そんなことはもっとどうでもいい。
  気にくわないことがあるとしたら唯一つ、この俺より速く走ろうとしていることだけが許せない!

  


「この俺を、止めさせたなァ!!」
  かつて赤木軍馬は言った、「なんぴとたりともオラの前は走らせねえ〜」
  その発言に対し、俺は心の底から同意する。
  何故ならこの俺より速く走るということは、この俺の存在価値をも否定するということだからだー

  




第5話:桐生水守

「こんにちはーみのりさーん」
「みもりです!」(水守)
「貴男とはよくお会いしますけど、これは偶然ですか?それとも必然?」

「ん〜〜〜、俺はこう思ってるんです。人々の出会いは先手必勝だと。
 どんな魅力的な女性でも、出会いが遅ければほかの男と仲良くなっている可能性もある」
なら出会った瞬間に自分が相手に興味があることを即座に伝えたほうがいい、速さは力です
 興味をもった女性には近付く、好きな女性には好きと言う、相手に自分を知ってもらうこと
 から人間関係は成立するのですから。時にそれが寂しい結果を招くこともあるでしょう、
 しかし次の出会いがいつまた来るかもしれません!

「確かに一理あるかも知れませんね」
「そうでしょう?そ〜うですとも」
「でも! その前に、女性の名前を間違えないようにした方がいいと思いますけど」
「いやァ、こいつはまいったなあ」
.
  「なら出会った〜」から「しれません!」までの時間は息継ぎなしで12秒。
  速さこそ絆、速さこそ愛、 誰も俺のこの速さについてこれない!
  なのに、これだけ俺が速さを見せつけているというのに、未だみのりさんはなびいてくれない…
  速さとは試練?速さとは忍耐? 一見相反するように見えるその中にこそ真実はあるのか…!

  


「桐生さん、今日の夜、時間を少し貰えませんか?」(劉鳳)
「は?」(水守)
「お願いします」
「おいおい、お願いしますって…」
「ええ!喜んで!」
「はあ!?」
…俺が遅い…!俺がスロウリィ!!
「そんな…! 何故だー!キャラが濃すぎるのかー!」

  未だかって、こんな衝撃を、ここまでの屈辱を、この身に受けたことはなかった。
  ば、馬鹿な…! お、俺の存在が…自己レゾンデートルが…崩壊…灰燼と化していく…

  




第8話:最悪の脚本

「ああーッ!オーバ、ストラクション〜!」
  幼馴染みの劉鳳にならともなく、まさかカズヤにまでみのりさんをいいようにされるとは…!
  何故だ!速さか?速さが足りないからかー!

  




第11話:アルターズ

「風力・温度・湿度、一気に、確認」
「ならば、やってやりますか」
.
  俺は誰よりも速さを愛する男、そして速さと省略は常にイコール!
  いちいち一つずつ細かく確認しているような時間は、この俺にはなーい。

  


「いかんいかん、世界を縮めすぎてしまったァ〜」
「こんにちは〜みのりさん〜」
「…み、みもりです…」(水守)
 
 ドジを踏んでしまったみのりさんをさっそうと助けるナイトな俺!
  なのにみのりさんはちっとも俺に振りむいてくれない… 
  何故だ!速さか!まだ速さが足りないのか! いや、むしろ知能が足りないのか…!(ならお手上げだ)

  


「さあ、時間がありません、お早めに」
「貴男は、罪に、問われないのですか?」(水守)
「誰も俺の速さを知覚などできません、安心してください」
「でも…!」
「お元気で。桐生… み・も・り・さん」
「…ありがとうございます!」.
  なんだ、問題は名前だったのか。名前をちゃんと言えばスキンシップを取ってくれたのか。
  速さよりも名称を重視するとは、正直この俺にはまったく理解し難い考え方だが、ま、とりあえずは
  握手出来たんだし、今日のところは良しとするかァー

  


「俺は…ホーリーになって文化的な生活をしてから、気付いたことがあります」
「確かに文化も社会的秩序も素晴らしい。しかし、人間は本来、争う生き物なのです」
 平穏を維持しようとすれば、ひずみが生じる」
「貴女はそのひずみを見てしまった、ただそれだけです」
  俺だって、たまには真面目なことの一つも言う。
  こう見えても案外真直ぐ、ちゃらけているようでも気持ちはストレイト。
  何故なら直線こそが速さに繋がるからー! あああ、みのりさーん



第12話:君島邦彦

「貴様、誰の味方だ。我々か?それとも…人間か!」(ジグマール隊長)
愚問ですなァ隊長。俺は俺の味方です!
  裏でみのりさんを助けたのが隊長にバレちまった。
  危うくおしおき食らうところだったが、自慢の速さですかさず逃げたぜ。
  俺はクーガー、速さのみを求道し続ける男。もちろん逃げ足の速さだって宇宙一だー

  




第14話:無常矜侍

「OH!ジャマ!ジャマー!」
「………」(水守)
「これ今、市街で流行ってるんですよ、つまらなかったですか寒いですかヒキましたか痛かったですか〜」
「…………」
「今度はもっといいのを仕入れてきますね〜 みのりさん〜」
「みもりです!」
  劉鳳がいなくなって以来、ずっと元気のないみのりさんを励まそうと、
  ちょっとお茶目なことしてみたら本気で怒られちまったー
  まったく女って奴ァ他のことは全部ノロマなくせに、切れるスピードだけは一人前ときてやがる。

  


「いいですか、俺はこう考えているんです。人間は自由〜だと」
無理な命令や願いには拒否権を発動することができる嫌なことは嫌だと言い切る悩んで
 いる時間は無駄以外の何ものでもない
(聞き取れない)即決即納即効即急即時即座即答!
 それが残りの時間を有意義につか…あれ?

「敵に塩を贈りすぎたか〜 …俺は馬鹿だ!」
.
  
今まであれだけシュンとしてたのに、劉鳳の情報を教えた途端、俺の華麗なる超速トークを無視して
  あっという間に目の前から消え去っちまった… そりゃこんな憮然顔にもなるわな、ああ、みのりさーん…!

  




第15話:はぐれ者

「ああ〜前は強い、そりゃもう、なかなかのもんだ。
 けどな、腹が減ったらどうする?飯は?服は?寝床は?全て力で奪うのか?
 そうやって、お前が手に入れたもんのおこぼれに群がる馬鹿を従えて、お山の大将気取るのか」
「それとも全部ひとりじめしようとしてテメエを見せつけるか?」
「消えてなくなるぞ、何もかも」

  かつての弟分カズヤの記憶の中に、勝手に登場させられただけじゃなく、
  お説教までたれなきゃならないとはなー、人気者はつらい、つらすぎる…!
  あれ?そう言えば名前、カズヤで良かったっけ?
 
  




第18話:ストレイト・クーガー

他人に運命を左右されるとは意志を譲ったということだ、
 意志なきものは文化なし、文化なくして俺はなし、俺なくして俺じゃないのは当たり前、だから!!

「俺はやるのだ!みのりさ〜〜〜〜ん…でよかったかな、名前〜」
  「他人に〜」から「だから!!」までの時間は息継ぎなしで約5秒。
  速さこそ力、速さこそ強さ、誰も俺のこの速さについてこれない!
  それにしても今頃どこで何をしてるんだろうなァ〜 ああーみのりさーん

  


大は小を兼ねるのか速さは質量に勝てないのか、いやいやそんなことはない速さを
 一点に集中させて突破すればどんな分厚い塊であろうと砕け散るゥゥッハッハッハッ、ハー!

「ドラマチーック!エスセティーック!ファンタスティーック、ラーンディーングー!」

  「大は〜」から「ハー!」までの時間は息継ぎなしで約8秒。
  速さこそ突破力、速さこそ貫通力、誰も俺のこの速さについてこれない!
  だけどそれを証明するが為、派手に壁に激突したおかげで、自慢の車がバラバラになっちまったー、
  ひょっとして俺、頭わるいー? 

  


「ストレイト・クーガー…!」(カズマ)
「久しぶりだな〜ロストグラウンド中を徘徊してしまったぞ、カズヤ」
「カズマだ!」
  出会った瞬間、即戦闘。
  名前なんかどうでもいい、速さの向こう側を知る男に余計な言葉はいらないのだー

  


「これが向こう側を見たお前の力か」
「だが、まだ足りない!足ァりないぞォ!」
お前に足りないものは、それは〜  情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!
 そしてェなによりもォ−−−−−−− 速さが足りない!!

  速さをひたすら追い求める男こと俺の、おそらく最も速いセリフがこれだ!
  情熱〜勤勉さまでのスピードはほぼ1秒、誰もこの速さを超えることなど出来ない!

  


「衝撃の、ファーストブリットォー!」
  最初の頃、カズヤが良く使ってたけど、これ、実は俺が本家なんだぜ? 知ってたー?

  


「お前、俺との別れ際に言ったろ〜?他人の敷いたレールには乗らない、逆い続けるって」
「だったらちゃんとやり通せって、カズヤ!」
「…カズマだ…!」(カズマ)
「それに、今さら説教たれんな!俺の前から勝手にいなくなった奴が…!」
「ああ〜何言ってるんだ〜?元は他人同士がつるんでいただけだろう、
 俺が選んだ俺の道だ、それを最速で突っ走って、何が悪いーーーッ!」
「…このやろう、説教するか蹴るか謝るか、どれかにしろってんだ!」
  説教もボコるも髪型直すも全部同時! その方が効率がいいからだ、無駄じゃないからだ。
  そして無駄と相反するところにこそ速さは存在する! だから俺はディオが大ッ嫌いだー

  


「俺が俺の道を進むように、お前にもお前の道があるはずだ。さぁ、お前はどの道を選ぶ!?」
  俺の選ぶ基準はもちろん「速さ」。
  5分のどんべえよりも3分のカップヌードル、金銭のやりとりがある吉野屋よりも食券制の松屋、
  新幹線より飛行機、デスメタルよりメロスピ、遅漏より早漏! 速さだ、もっと速さをー!

  




第19話:常夏3姉妹

「自分に都合のい女性をねつ造し、悦に入っているだけの傲慢な男に、誰も振り向いたりはしないのさ」
「人形しか愛でることの出来ない男か、倒す価値すらない…!」

  いくら世の中にクズ多しと言え、この来夏月ほどのクズは、そうお目にかかれるもんでもねえ。
  自ら創造したアルターをも見捨てるとは、オタの風上にもおけねえ。見下げ果てたとびっきりのクズ野郎だ。

  




第20話:由詫かなみ

「興味はあるが、聞きたくはない」
「俺にとってこの物語は、悲しすぎる…」

  みのりさんとシェリスが、劉鳳を巡って女同士でお話してるのを遠目から眺めつつ、
  「うさぎとカメの物語」を読んで、速すぎることへの弊害を我が身に戒めることぐらいしか出来ないとはなァ… 
  流石に「ああ〜それは神秘だ〜」とか言ってお茶らけていられる状況ではないなあ〜
  なあ、速さって本当に正しいのかなー 

  




第21話:ホーリーアイ

「人の話をー 聞けー!」
「聞けねえな」(カズマ)
「どうしても止めるつもりなら…クーガー!」(劉鳳)
「突き崩してやる!」
「押し通す!」
「上等!」
  俺の話しを聞かない愚か者どもは、一秒でも速くボコる。
  例えそれが元同僚とかつての弟分であってもだ。しかも同時に「世界の盆栽」読破!
  どうせやるなら二つ同時の方が明らかに速い、即急即時即座即答!それが速さの基本原則だー

  


「人生、色々あるわなあ… これもまた文化…」
  カズマに足四の字をかけつつ、劉鳳への恋心に悩むシェリスを見守るも、また乙なものよ。
  ちなみに、このとき読んでいるのは「懐石の心」な。

  




第22話:マーティン・ジグマール

「貴女が自分の道を選んだように、俺も俺の道を選んだだけです」
  アルター能力も無いと言うのに、劉鳳に付いていきたいだなんて…
  ああー、なんてけなげなんだー、みのりさーん。
  分かりました、そこまで言うなら、この私が車でお送りいたしましょう。さあ、お乗り下さい。
  え?乱暴な運転しないかって?しませんよーこれでも僕は紳士ですよー?あ、シートベルトは
  ちゃんとしめてね、そう、そこの4点式の奴、しめましたね?それでは早速、
イィーヤッホー!

  


俺はこう思うんですよ。運転するなら助手席に女性を乗せるべきだと。
 密閉された空間、物理的に近づく距離、美しく流れるBGM。
 体だけでなく二人の心の距離まで縮まっていくナイスなドライブ!
 早く目的地に行きたい、でもずっとこうしていたい、この甘美なる矛盾、
 簡単には答えは出てこない、しかしそれにうもれていたいと思う 自分がいるのもまた事実! 
 
(三守の頬が接触)ウヒョーーー!ファンタスティーーーーック!!
  「俺は」から「事実!」までの時間は息継ぎなしで約13秒ー
  速さこそ元気、速さこそ勇気、誰も俺のこの速さについてこれない!
  そしてみのりさんの頬が俺の肩に触れた今、俺はもう死んでもいーいー、ああーみのりさーん

  




第23話:シェリス・アジャーニ

「みのりさん!」
「…みもりです!」(水守)
「アッハッハすみませーん。でも、それは些細なことです。特に今はね」
(近付いてきた無常を牽制しつつ)おいおーい、こっちはデート中だぜ」
「いつデートに!?」
「そこで、突っ込まないで…!」

  カッコよくみのりさんを守ったつもりが、いきなり先制攻撃くらっちまった。
  だがやられる時も即時速効、俺はいついかなる時でも速さを全てに優先させるのだー

  


「やれることがあるのなら行動なさい!貴女は選んだはずだ、違いますか!」
「……分かりました、ご無事で!」(水守)
「まかせてください、みもりさん
「みもりです!」
「合ってるでしょー?ハハハハ」

  たぶん最初で最後の正解… いや、確か前にも1回、あったっけな。
  どっちにしろ、ちゃんと名前を呼ぶ時が最後ってのが、俺様流の別れの流儀、
  世界を縮める男流のダンディズムって奴だ。みもりさーん、俺のこと忘れないでくれよなー

  


「行かせねえよ」
「それ以上、虚勢をはるのはおやめなさい。貴男は余命幾許もない。
 初期段階における生成の影響ですかァ?」
(無常)
「色々、行き急いじまったからなあ。残り時間をホーリーで有意義に過ごしたかったが…」
「今からでも遅くないですよー」
「そうもいかねえ!あの無鉄砲で劉鳳にぞっこんな彼女が、俺はお気に入りなのさ!」
「強い人だ!ほれがいがある!残りの命を賭けるに値する!」
そうだ!俺は遂に見つけた!文化の真髄を!

  よりにもよって、まさか文化の真髄って奴が、報われない片思いだったとはとはなァ…
  速さのみでは分からないこともあるってか、恋って切ないなァー、これもまた文化って奴なのかなー
  あああ、みのりさーん

  


「ああー、しかし、それでも貴男の恋は実らないー」(無常)
「〜〜〜〜ンなこたァ分かってんだよ!この蛇野郎が!」
「…聞き捨てなりませんねェ」
「だったら一生抱えてろ! 受けろよ、俺の速さをォ!!」
「…俺の蹴りを避けた!?」
「遅すぎです〜」
「俺が遅い? 俺がスロウリィ!?」
「はいー」
じょーーーーーーーーだんじゃねえええええええ!
.
  速さに愛された男こと俺様の一世一代の見せ場だった筈が、よりにもよってスロウリィ!?
  馬鹿な?何故だー!やはりキャラが濃すぎるからかー!

  


「本当に遅いですねえ〜」(無常)
「じゃあ、これならどうだー! 瞬殺の!ファイナル・ブリットォォォォ!」

  ファイナルウェポンまで繰り出したと言うのに、よもやあっさりひねられるとは…!
  速さだけでは… やはり人は速さだけでは生きていけないのかー!

  




第24話:拳

「この男は何なんですかー!」(無常)
「(背後から)カズヤだよ、シェルブリットのカズヤだ」
「貴様、いつのまに…」
「愚問だなあ、俺は誰よりも速く走れる男だぜー?」
「カズヤ、俺はこの子達を連れて出る。後は頼んだぞ」
「いきなり現れて、勝手なこと、抜かすな!」(カズマ)
「最後の頼みぐらい、聞けよ…」
「じゃあな、カズヤ!」
「最後まで名前、間違えやがって… じゃあな、兄貴…」
  そう、俺は誰よりも速く走れる男、当然その復活も世界一速い!
  …と、言いたいところだが、やっぱ色々無茶しすぎちまったかなァ、

  




第26話:夢

「すっげー、アルター使いってあんなことも出来るんだー」(子供達)
「おーい、そこの坊主どもー」
「あそこで戦ってるのなー、一人は俺の元同僚で、一人は俺の弟分だ。
 ヘッ、まあ、よく頑張っちゃいるが、俺よりは下だな」
「へー、お兄さん、そんなに強いのー?」
「うっそでー」

「嘘じゃねェよー、俺は世界を縮める男だからなー」
「だったら、アルターを上手に使う方法教えてよ!」
「おい!すげーよ!」「すっげー」
.
  
いついかなる時でも、俺はダンディズムを忘れない。
  たとえそれが死に際であろうとも、俺は一杯の紅茶を楽しみ、また読書にいそしむだろう。

 
 速さを限界まで追求する男たるもの、最後の最後まで文化的でなくてはなァ。

  

「カズマ…お前は限界を超えちまったんだなァ… だったら進め、徹底的になァ」
「劉鳳…少しくらい時間が出来たら戻ってやれよ…みもりさんの、ところへ…」
  ちょっとばかし世界を縮めすぎたかなー、まさか自分の人生そのものまで縮めることになるとはなァ、
  だけど俺は1ナノsecたりとも後悔しちゃいねえ、いわばこれは速さに愛された男の宿命なのだから…
  い、いや、あえて言うならば一つだけあるか、や、やはりあの時、本当に襲っておけばよかった…
  あああ、みのりさーん…

  




  

  



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