フィンローダのあっぱれご意見番

第69回:上と下と

初出: C MAGAZINE 1998年01月号
Updated: 1998-03-26

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 新宿では街頭募金がしばしば行われている。JR新宿駅西口方面は、パソコンシ ョップが集まっているので出かける機会が多いのだが、特に、駅前の地上では、 日曜の昼間などに行けばとりあえず誰か何かやっている。中にはどう考えても怪 しい人もいるのだが、赤い羽の共同募金とか、交通遺児の何とかの募金のように、 まあまあマトモかなと思うものもある。怪しいというのは全く別の場所の話最初 は署名だけという話でにこにこ近付いて来て、署名しようとしたら一口いくらで すという話が急に出てきて、金は出す気がないと行ったら急に喧嘩腰になった、 という感じの経験をしたことがあった。

 失礼ながら交通遺児の育英募金のようなものを「マトモかな」と疑惑的な表現 にさせていただいたが、以前から一つ疑問を感じていたためである。つまり、募 金をしている人を見ると、どう見てもいい大人のことが多い。真面目に…とは言 わなくても時間さえかけて普通に働けば1日1万円は稼げるだろう。街頭の募金と いうのは一体どの程度入るのだろうか? 一日募金して一人あたり何万円も集ま るのならまだしも、一日1万円未満ならば、自分で働いて稼いだ金を募金した方 が確実ではないか。

 というわけで、実は実際に募金している人に質問してみたのである。まず、こ の箱にはどの程度集まるのか。この答えは実に曖昧だった。さあ、何とも言えま せん、という感じである。はて、なぜ正確に答えられないのだろうか? 少なく とも私なら、募金で一日立っていたら、そこにいくら集まったのか非常に大きな 関心を持つと思う。「昨日は5時間で7,739円集まった」という程度のことは記憶 力の悪さという壁を破って思い出せそうなものである。この回答では次の質問が できない。実はそれがまさに曖昧に回答する目的なのかもしれないと一瞬思った が、とりあえず誘導するつもりで、だいたい1万円程度は入るのかと質問してみ た。まあ、そんな感じかも、という感じの曖昧な答えだったが、10万円入るとか、 1000円も入らないとか、そういう雰囲気ではなかったようだ。当たらずとも遠か らずといった所か。

 そこで核心の質問になるのだが、1日1万円程度ならバイトすれば稼げるだろう、 なぜそうして得た金を募金するのではなく、他人の金を集めているのか、と尋ね た。こりゃ変な奴につかまったと思っただろうか。ちなみに、この時募金してい たのは、ぱっと見た感じでは20才前後の大学生風の服装をした若者だった。赤い 羽の募金などは、小学生が立っていたりすることもあるから、流石にそれだとこ の質問はちょっと的外れになってしまう。

 さあどう答えるか。この答えが面白い。「なるほど、その手がありますね」と いうのである。完全にこちらが押されている感じだ。「そういうのは思い付かな かったのですか?」「考えてませんでした。」 これでは何か様子がよく分らな い。ここで他の人が助け船というか、広報活動が云々という話を始めたので、「 広報だったらWWWでも使えば」と言いたいのを我慢して、ちなみになぜ募金して いるのかと質問してみた。つまり要するにこの人達は、大学のサークルか何かの メンバーで、毎年協力ということで行っているらしいのである。早い話が、街頭 に立っている人は、単にサークルのイベントとして一日立っているだけであって、 目的とか理念とかそういう話じゃないのだ。完全に行事と化しているような感じ である。それなら話は分る。


 新宿駅といえば、ダンボールハウスで有名である。動く歩道を作る時に大混乱 になったことを記憶している方もいると思うが、今はかなり平穏な雰囲気である。 動く歩道の所から撤退した人たちは、結局、駅に近い所に引っ越しただけである。 ちょうど募金している所の下あたりである。以前のような混乱は最近は見られな いが、数は相変わらず多いし、駅前を不当に占拠していることは間違いない。通 行の邪魔かというと、トラフィックが乱れるという程ではないが、邪魔なものは 邪魔である。公共の場所なのだから誰がそこに居ても構わないというのなら、そ の場所を誰が通行しても構わないはずだが、特に女性だが、恐くて通れないとい う人がいるというのが現実である。仕方無いから回り道をして他の経路で目的地 に向かうそうだ。すると募金に捕まってしまう確率が高くなる。

 もちろん、ダンボールハウスで生活している人達は、そこに居るのが都合がよ いからそこに居るのだ。狭い日本とはいえ、通行の邪魔にならない土地はいくら でもある。わざわざ日本でも有数の通行量のある場所に居るのは、それなりの理 由があるわけだ。まあそれは個人的にはあまり興味がない。むしろ面白いと思っ たのは、こうしてダンボールの中で寝ている人の上の階で、学生が交通遺児の募 金をお願いしているという光景なのである。


 FPROGのHomepageは基本的に自宅のデスクトップpcで編集したものを公開サー バに転送しているのだが、内容をThinkPADで編集してからデスクトップpcにコピー することがある。ThinkPADはなんとPC-DOS/Vである。実はTP535を入手したので 苦労してインストールして、何とかWindows 95からプロバイダに接続できる所ま で到達した次の日に本体が故障してしまった。これが半月たっても修理から戻っ て来ない。ショップの談「IBMは1か月程度かかります。」

 それで思い出したのだが、実は携帯電話も壊れたのだ。以前、このコラムでケー ブルの在庫がないと大騒ぎしたアレである。相手からの声が一切聞こえなくなっ たのだ。片方向通信では役に立ちそうもないので、フリーダイアルの番号にかけ て症状を言うと、持ち込み修理ということになった。NTT DoCoMo新宿店に持ち込 んで驚いたのは、「修理にどれ位かかりますか?」と尋ねたら「1〜2時間もあれ ば…」と言われたことである。

 たかがケーブルを手に入れるのに1か月弱かかるのに、本体の修理は2時間あれ ばできるってのは、何かアンバランスすぎる。ちょっと昼のランチを食べて近く の書店で本を買い、戻って来て待っている間に修理完了で、保証期間内だから無 料ということだった。こうなってくるとpcの修理に1か月かかるというのが釈然 としない。  話が逸れたが、というわけでDOS環境が今も手放せないのだが、一つ問題なの はDOSがロングファイルネームに対応していないということである。DOSで作成し たindex.htmというファイルは、Windows 95にコピーした途端にINDEX.HTMになっ てしまうのである。FPROG Homepageの公開サーバはindex.htmというファイルを 要求するため、これはマズい。

 というわけで、ファイル名を小文字にするという下らない処理を作る羽目にな るのである。こういう処理はPerlでやれば簡単なのだが、そういえばCの場合は、 昔、tolowerを呼び出す前にisupperを呼び出すという習慣があった(List 1)。

---- List 1 (古風な習慣?) ----
    if (isupper(c))
        c = tolower(c);

 なんでこんなことをするかというと、tolowerという関数の定義域が、英大文 字に限られた実装があったからである。他の文字を入れた時にどうなるか分らな かったのだ。ANSIの仕様は少し厳しくなっている。JIS Cの仕様から引用すると 次の通りである。

 実引数がtoupper関数に対して真となる文字であって、かつislower関数が真と なる対応する文字がある場合、tolower関数はその対応する文字を返す。そうで ない場合、その実引数を変換せずそのまま返す。(JIS X 3010 7.3.2.1)

 念のため。ここで言う「そうでない場合」は、どんな値でもokというわけでは ない。unsigned charで表現できるか、またはEOFに等しい値でなければいけない。 それ以外の値だと結果は未定義なので鼻から悪魔が出てくるかもしれない。とり あえず、アスキー英字を想定するのであれば、tolowerはList 2のような処理に なるわけだから、事前にisupperを呼び出すのは無意味なのである。

---- List 2 (tolower) ----
int tolower(int c)
{
    if (isupper(c))
        c += 0x20;
    return c;
}

 Perlの場合、trを使えば変数の中の大文字を小文字にするのは簡単である。tr はUNIXでは標準的な同名のコマンドがあるのだが、Perlの中での使い方も同様な ので、知っている人にとってはさらに簡単だ。List 3は、$filenmaeという変数 の中に、A-Zに含まれる文字があればa-zの対応するものに置き換える、という処 理である。「=~」という記法がちょっとひっかかるかもしれないが、見た目にも なんとなく分りやすい。これを使えばディレクトリ内のファイル名を小文字に変 更する処理も大したことはなさそうだが、余談が多いので、それはまたの機会に。

---- List 3 (Perlの場合) ----
  $filename =~ tr/A-Z/a-z/;

(フィンローダ ニフティサーブ FPROG SYSOP)


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