フィンローダのあっぱれご意見番

第45回:ときめき工程管理

初出: C MAGAZINE 1996年1月号
Updated: 1996-02-24

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きっかけは、あまりに馬鹿馬鹿しいのだが、何というか、見事にハマってしま っのである。この記事が出る頃にはどうなっているか分からないが、PlayStation 版「ときめきメモリアル」の話。私が特殊なのかというと、そうでもないらしい。 というのは、ときめきメモリアルのメーリングリストがあるので、ものは試しと joinしてみた。もちろん、NIFTY-Serveから入るなどという初歩的な失敗はしない。 私の場合、少し前のメールを残しておく習慣なので、20〜30通のメールが定常的 に残っているのである。メールをすぐに消してしまえばよいのかもしれないが、 いずれにしても、NIFTY-Serveはメールボックスに50通しか入らないという致命的 な欠点があるから、小さなメールが大量に来るという状況下では全く使い物にな らないのだ。で、あらかじめ、このメーリングリストは結構来るはずだぞ、と覚 悟していたので、RIMNETのIDでjoinすることにした。

しかし、数日たって、メールボックスを見たら…うーむ、何百通も来るのか。 ファイルにしてみたらすぐに1MB程になった。これでは課金明細のお知らせのよう なメールが混じってしまって、何が何やら分からない状況であるが。

実は、RIMNETはシェルモードというサービスがあって、会員がUNIXにログイン して、そこのシェル上で作業することができるのだ。つまり、UNIXのコマンドが そのまま使えるのである。例えば、RIMNETに入ってまず試してみたのは、nethack があるかな、ということなのだが、実はちゃんとあった。ただ、プレイしたら、 なにしろ通信ソフトが自作の「魔王」とやらで、ANSIのエスケープシーケンスを まともに処理していないので、画面がぐしゃぐしゃになって話にならないのであ る。これは通信ソフトが悪い。

1MBのファイルをどうやってダウンロードするかというと、catでそのまま表示 させてもよいのだが、あまり面白くない。そこで、まず、こっそりBPLのソースを RIMNETに転送し、そこでコンパイルして、B+でバイナリのデータ転送できる環境 を作ることにした。このような環境があれば、将来ホームページの保守をする時 にも便利かなと思ったのである。もっとも、多分、B+を使う必要はなく、ZMODEM でデータ転送できるような気もするのだが。折角シェルモードがあるのだから、 ソースをコンパイルしてみたくなる、というのがUNIX使いの心情というものだ。 このような環境ができれば、後は、LHAでファイルを圧縮して、ダウンロードして、 手元で展開、ということをやれば多少は接続時間が短くなるかな、と思ったので ある。もっとも、モデム間で圧縮を行うということもあるから、本当に得なのか どうか、よく分からないのだが、とりあえず動作はしているようである。

    *
ときめきメモリアルというのは、所謂「育てゲーム」だと言われている。高校 の三年間の生活でデートを重ねつつ(^^)勉強、運動に励み、卒業式の時に女の子 に告白される理想の自分を作り上げる、という書いてて恥ずかしくなるような仕 様である。書きたいことは山ほどあって、ここには書ききれないのだが、NIFTY- ServeのFPROGに速攻で書いたのがあるから、アクセスできる人はそちらを参照し て欲しい。この手のドキュメントはホームページに登録してもいいと思っている のだが、ときメモにハマったりするから、なかなか実行する余裕がない。

少し具体的に仕様を書くと、主人公の状況は、体調、文系、理系、芸術、運動、 雑学、容姿、根性、ストレス、の9つのパラメータにより表されている。このうち、 ストレス以外は値が大きいほど良い評価になる。これに対して、プレイヤーは毎 週どんなことをするかを指定する。例えば、勉強するか、クラブに出るか、休む か、等である。選択によって、パラメータが上がったり下がったりする。休日に は女の子に電話をかけたりデートに誘ったりできる。スタート時のパラメータは 次の通りである。

  95/04/04
  体調 100  文系 040  理系 040
  芸術 040  運動 040  雑学 032
  容姿 060  根性 005  ストレス 000
そして、卒業式の時点でパラメータが相手の女の子の理想基準を満たしており、 かつその女の子と親しくなっていれば、告白される、という仕組みだ。例えば、 このゲームに出てくる藤崎詩織という女の子に告白されるには、次の値が最低の 目標になると思われる。このあたりの情報は、ゲーム雑誌やネットの投稿を見る と山のようにあるのだが、多少のずれがあったりして、いまいちどれが本当かよ く分からない。もしかしたらこれで駄目かもしれないが。
  98/03/01
  体調 020  文系 130  理系 130
  芸術 130  運動 130  雑学 120
  容姿 100  根性 100  ストレス 010

    *
さて、ということは、限られた期間にいくつかの作業を行って目標を達成する、 というのがこのゲームの一つの目的となる。考えてみると、これは要するに工程 管理だ。ということは、仮にもプロのソフトウェア技術者なら、本職に属する作 業である。ちなみに、最初の頃、私がクリアした時のパラメータは次のようにな っていた。つまり、この値なら告白条件を満たしていることは実証されているわ けだ。
  体調 035  文系 132  理系 130
  芸術 132  運動 134  雑学 128
  容姿 110  根性 102  ストレス 000
自分で言うのも何だが、上のパラメータは、かなり奇麗にまとまっているよう だ。というのは、ネットで他の人がクリアした時のパラメータを紹介してくれて いるのだが、それを見ると、たいてい、突出したパラメータがあるのだ。私自身、 最初に告白を受けた時には、運動パラメータが200overになってしまった。これは、 工程スケジュールに失敗があったためである。例えば、あと半年という所で、ど うも根性の値が少ないとする。これを補うには、運動するとか、体育系のクラブ に入って活動するとか、そのようなことをすればよいのだが、そうすると必然的 に運動パラメータも上昇する。最終的に、根性が100になった時には、運動が200 になっている、というようなことになるのだ。

別にそれはそれで構わないのだが、実はFCGAMEMというフォーラムで、このゲー ムのアルバム枚数コンテストというのをやっていたのである(もしかすると、まだ やっているかもしれないが)。このゲームは、ハッピーエンドになった時に、デー トの場面とか、クラブの試合だとか、そのような印象的なシーンをアルバムモー ドの中に保存することができる。枚数コンテストというのは、要するにそこに何 枚の写真を入れることができるか、というもので、つまり、簡単に言えば、いか にデートしまくるか、という話に帰結する。FCGAMEMというのは、PCエンジン時代 からときメモにどっぷり漬かっている猛者の集団みたいな人達がいるのだが、そ こでまず出た話が、120枚程度が壁じゃないか、というのである。これは、その道 のプロが言うのだから、一応それなりの説得力があるのだが。

ただ、プログラマーというとすぐこういう話になってしまうのだが、ソフトウ ェア開発においては、見積りというのも大事な仕事である。その時私が見積もっ ていたのは、150枚程度は行くんじゃないか、壁があるとすると150〜180の間だろ うか、というものだった。だから、何か私が勘違いしたかな、と思ったのである。 180というのは単純かつ爆発的に大雑把な計算だが、毎月5枚の写真を残せば毎年 60枚で三年間で180枚、これが限界だろう、というのだが。60というのは厳しいと しても、50枚のペースなら150枚。これは楽勝じゃないかと思っていたわけだ。現 実はどうか知らないが。

これには根拠がないわけではない。どうやって見積もったかというと、評価の 値として用いたのは、パラメータから体調とストレスを除外して足し算した値で ある。本格的にやるなら、個別にパラメータを評価してどんな行動を何回実行し て、…という話になるのだが、面倒なので、ひとまとめにして考えてしまうのだ。 上がりにくいパラメータと上がりやすいパラメータがあるから、これはいかにも 大雑把すぎるのだが。とりあえず、これで計算すれば、95/04/04の時点では、257 という値になって、ここから、先程示した卒業時の最低ラインを計算した840とい う値まで上げればよいことになる。いくら何でも、これを常に計算しながらゲー ムをプレイする程ハマっている訳ではなかったが、とりあえず鬼のようにデート しまくり爆走スケジュールを実行しながら、各学期の始まる前にどの程度の値に なるかチェックしてみたのである。例えば、次のような感じになった。

  95/08/27 : 344
  96/01/07 : 426
  96/03/31 : 463
  96/09/01 : 548
このあたりで、先の予想が可能になってくる。95年の8/27から96/9/1までの一 年の増分が約200である。実は、一年生の最初の半年あたりは、あまり女の子と仲 良くなっていなかったりして、その後と多少ペースが違ってくるのだが、細かい 話はとりあえず置いといて、97年の二学期開始時点までこのペースが続くなら、 多分あと200増えて750程度にできるだろう。さらに、95/8/27から96/1/7の増分が 約80だから、98年に入った時点では830程度になるだろう。となれば、目標ライン が840だから、あと二か月で850〜860あたりで調整すればハッピーエンドは間違い なかろう、という実に甘い見通しだ。実は850なんてのは至難の技で、とてもじゃ ないが何かが目標値に達していないと思うのだが。とりあえず、この時のプレイ でどの程度の写真が集まったかというと、一年生の一年間で、計算が間違ってな ければ、53枚あるはずである。3年間で150枚ペース。

ただ、大体スケジュールというのは予定通りに進まないもので、どんなハプニ ングがあるか分からない。そう都合よい話はないというのが世の中の常である。 この記事が掲載されている頃には結果が出ていると思うのだが、ま、考えてみる と、ときめきメモリアルというゲームをプレイするのに工程管理を頭に入れて、 なんてことを意識するのはプログラマー位のものじゃないかな、と思ったりした のだ。


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