Lemon People '98

1998年1月号

COMIC REVOLUTION 十周年記念本 発行/ニセHP研究会 B5版/52P
 1997年10月19日発行

 コミックレヴォリューションと言えば、美少女系同人誌ファンにとっては、おなじみの即売会ですね。そのC.レヴォもはじまってからもう十年以上になります。今でこそ美少女系同人誌は活気にあふれ、参加できる即売会も増えましたが、かつて女の子系パロディ全盛期は、コミケット以外では、C.レヴォがほとんど唯一美少女系の参加できる即売会でした。
 この本は、C.レヴォ十周年を記念して、C.レヴォ準備会のメインスタッフの一人であるbomberさんが作ったお祝い本です。豪華な執筆陣の中では、Dr.モローさんの即売会で仕掛けた数々のイタズラ話、有馬○太郎さんのどこが祝十周年だかよくわかんない「エロ漫王」ネタ、の二つが抱腹絶倒の面白さ。
 C.レヴォ当日、サイコロでbomberさんに勝って、この本を手に入れられた人はラッキーでした(笑)。


HONEY MOON 発行/スマナイ B5版/32P
 1997年10月19日発行

 ゲーム全盛のパロディ同人誌の世界ですが、「ウテナ」と並んで男性ファンを増やしているのは、「カードキャプターさくら」です。TVアニメ化は、来年へ持ち越しとなったようですが、この冬はいろいろなサークルの「さくら」本が楽しめそうですね。
 個人的にはCLAMPの作品って、共感できるモノと全く出来ないモノとの差がエラく激しいのですが、「さくら」については評者もお気に入り。CLAMP自身のかつての同人誌活動のことに触れることは、業界ではタブーのようですが、これだけ「おたく心」をくすぐる作品もあるんだから、そんなに澄まし顔でなくてもいいと思うのですが。。
 この本は、いろんなアニパロで幅広く活動しているスマナイの孫御飯さんの個人誌。何がいいって、やはり猫耳でしょう(笑)。可愛さ倍増という感じで最高です。



1998年2月号

Dear My Girl 発行/甘味堂 B5版/32P
 1997年10月19日発行

 ここ一年、コンピュータグラフィックを導入するサークルさんが急に増えています。高性能なパソコンが安価になったのと、印刷所などの出力の環境が整ってきたのが大きな要因でしょうか。以前とは比べモノにならないほどの低コストと手軽さでCGを利用できるようになっています。
 ここでご紹介する甘露樹さんの本は、ほとんどすべてがコンピュータ上で作成されています。甘露樹さんのお話では「時間がなかったので、全部CGにしました。CGの方が、トーン処理などが削りとか無くて、はるかに楽なんです。」とのこと。もちろん、そうした省力化だけでなく、効果的にも面白く、その可愛らしい絵柄の個性づけにもなっています。
 本の内容は、まんがが一本と小説が一本。どちらも近親相姦的な味付けと絵柄のマッチングがグッドです。


SOP 1号 発行/ソニック ワーク ショップ B5版/94P
1996年8月3日発行

 ファイアーエンブレム、オリジナル、美少女系と多方面に創作活動を続け、その間にオンリーイベントも開いたりと、パワフル元気少女のおがきちかさんですが、秋のコミティアから新企画がスタートです。この「SOP」は毎号、コミティア毎に発行する予定という大胆なプラン。最近ちょっとマンネリぽくなっているコミティアに活を入れてくれるといいかもしれません。
 この本の中核となるのが「クレシェンドマリオン」というファンタジー連載。第一話は、主人公の兄弟たちの旅立ちまでを描いていますが、これがいいんだ。くるくる変わるキャラクターの表情の豊かさ、スピード感溢れる画面構成、乱暴なくらいに大胆なコマ運び…。その一方で凛と不思議な静けさが漂うところも魅力的です。


1998年3月号

突発性鉛筆症候群Special 発行/UROBOROS B5版/112P
 1997年12月28日発行

 以前から、「突発性鉛筆症候群」という形で、コミックレボリューションで、突発本を出してきたうたたねひろゆきさん。冬の新刊は、そのスペシャルということになりました。「私は鉛筆で描いた線を愛している」ということで、うたたねさんのこだわりの描写が堪能できます。
 この手の本というと、ページ稼ぎのラフスケッチや時間切れで未完成のまんがをそのままで載せてしまうというパターンが大半なのですが、この本はひと味違います。「鉛筆で書いた線を愛していて」、「私の最も自信のある線は鉛筆線です」とご自身でおっしゃるだけの鉛筆ならではの絵が満載。普段から謙遜の人の「自信」発言ですが、それだけの説得力が誌面から伝わってきます。出来ることなら、生で原画を見たい、という衝動に駆られてしまいました。


永遠伝説 発行/JESUS DRUG & 未来樹館 B5版/44P
 1997年12月28日発行

 かつてまんが・アニメ業界に一時代を築いた「セーラームーン」ですが、アニメ・原作と完結し、ブームはほぼ終息しました。コミケットを見ても、セーラームーンのジャンルで参加している人は徐々に減りつつあるようです。そんな中、ただひとつ、非常に盛り上がっているのがミュージカル。席数八百というサンシャイン劇場を使っているのですが、チケットはアッという間に完売してしまうため、何日も前から徹夜組も出るほどの人気ぶり。最初の頃こそお子さま向けの要素もあったのが、今は完成度も高く、演劇ならではステージと客席とのコラボレーションが、ここまでこの作品を育ててきたと言えるでしょう。
 この本は、JESUS DRUGの林家志弦さんと未来樹館の牧瀬蓮子さんの合同誌。大勢のゲストさんのそれぞれのミュージカル鑑賞記が楽しめます。



1998年4月号

アーニスの帰還 発行/山本貴嗣 B5版/28P
 1997年12月28日発行

 古くは「最終教師」シリーズや「エルフ17」などで高い人気を得、現在はウルトラジャンプ等で活躍中の山本貴嗣さんの個人誌。こういう全くノーマークな作家さんがいきなり同人誌を出されたのにも驚きですが、内容にハードな性描写がふんだんに含んでいるのには2度ビックリです。
 本文は綺麗なオール2色カラーで肉体美とセクシュアリティにあふれ、スピード感とダイナミズムに満ちた紛うかたなき山本貴嗣ワールドが鮮やかに展開されています。
 掲載作品は、数年前に発行された単行本「剣の国のアーナス」のサイドストーリー。「強く美しい主人公が、流血の死闘の果てに勝利する」というモチーフを以前から追求していたとの言葉にあるように、山本さんらしいこだわりをずっしりと感じました。


冬娘1997 発行/ANGEL14 A4版/34P
 1997年12月28日発行

 ジャンプFC系のサークルの中では、最近なぜかしら美少女系の作家さんの活動が目立つのですが、真崎あゆむさんもそんなひとり。冬コミケでは、初日から長い列ができていました。売り子ちゃんのコスプレも華やかで、女性系サークル特有の凝り性なところがOKッス。もっともこれ以外にも、某芸能スペースでは、某作家さんとの某裸ネクタイにーちゃんのえっちなコピー本も実はあったりもしたりして(笑)。今回紹介する本の表紙をよーく見ると、描かれているのは女性キャラではあるのですが、心なしか影響が感じられるのは、気のせいかしら?
 で、この本はANGEL14恒例のコミケ限定本。かわいいキャラクターと時として大胆な描写のアンバランスさが魅力的。籐椅子とウェイトレスの制服がえっちくさい某レストランネタもツボにはまっています。



1998年5月号

ABYSS 発行/文月会 B5版/36P
 1997年12月28日発行

 ここ最近リニューアルが進むコミケットカタログですが、巻頭のいわゆる「コミケットへようこそ」的なまんがを書いているのが、山本一隆さん。コミケットの諸注意まんがというと、説教臭いモノになるか、某Dr.モローのように毒だらけになるか(笑)、両極端なのがこれまでの通例だったのですが、このシリーズは山本さんの若々しさがうまく全体をフォローしています。
 冬コミケに出たこの本がなんと初めての同人誌ということなのですが、とても初めてとは思えないレベルの高さ。Macintoshを駆使しての効果も見事です。
 ストーリーは、リヴァイアサンと呼ばれる大怪魚とそれを狩る人魚族の少女の最後の戦いを描いたもの。かなりの荒いところがあるは否めませんが、補ってあまりあるみずみずしさが魅力的です。


中出しザーメンプリンセス 発行/希有馬屋 B5版/60P
 1997年12月28日発行

 あの疾風怒濤の「エヴァン」ブームの中で、いろんな文章を様々な人が書いたわけだけど、読めるものはほとんど無かったのが悲しい現実。その中で鋭い文章をモノしていた数少ない描き手のひとりが希有馬さん。文章とまんがを織り交ぜ、批評家としてそして描き手としての自己を融合させた表現は、それゆえこその説得力を感じさせてくれました。
 で、希有馬屋の冬の新刊はなんと「ナディア」と相成りました。失敗作ではあるけれど、好きな作品というのは、誰にでもあるわけで、屈折した愛情が微妙な光を放ち、味わい深さを増しています。
 特に強烈なのは、エロ同人誌の物語性についての考察まんが。よく言われている事ではあるのだが、ナディアキャラを使っての論旨の展開と説得力がさすがです。


1998年6月号

THE SACRED HEART 発行/MRI B5版/40P
 1998年3月15日発行

 オリジナル系を中心に幅広く活躍している思い当たるさんが、最近特にお気に入りなのが「ブラックジャック」。手塚治虫作品の研究本やパロディ本って、コミケットでは結構着実なファン層がいるのよね。中でも「ブラックジャック」は女性ファンを中心にブラックジャックがやたらとかっこいい本が多かったりします(もちろん、キリコとのやおい本もあったりするのはお約束ですが(笑))。
 一方、この本は、キャラクターの可愛らしさでは定評のある思い当たるさんらしく、ピノコがめちゃくちゃカワイイ!! 雪の中ではしゃぎまわっての笑顔、拗ねたときの怒った顔、ふとしたときのやさしげな眼差しと、ころころ変わる表情の豊かさが魅力です。ブラックジャックは、振り回されて、ちょっち情けないけど、穏やかな優しさが伝わってきます。


うる星 介錯 ビューティフルドリーマー 発行/介錯 B5版/76P
 1997年12月28日発行

 最近は「ウルトラジャンプ」や「エースダッシュ」を中心に活躍中の介錯さん。商業誌の仕事も超多忙なのにこの冬は2冊も(しかも、1冊はなんと上製本)同人誌を発行しました。
 最近、大手サークルの描き手の多くが、商業誌の仕事が忙しくなっています。それはそれで喜ばしいことではあるのですが、同人誌がどうしても手薄になってしまうのはちょっと残念。多忙な状況でなんとかして同人誌を出したいという気持ちはわかるのですが、落書き本、下書き本、イラスト本だと、やっぱりちょっとがっかりなのは、読者のわがままでしょうか。そんな中で介錯さんの熱心さとパワーには脱帽です。
 まんがは、メインは「ウテナ」。ハードな描写とかなりブラックなオチが効いています。今は「大運動会」に燃え燃えらしいので、新刊期待してます。


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