Z8 MCU

Zilog社はZ80シリーズという8 bit汎用マイクロプロセッサで市場デビューを果たし、それなりの成果を得ました。その後、他社と同じく製品の上方展開と下方展開を行っていきます。上方展開とはすなわち16 bitマイクロプロセッサのZ8000シリーズであり、下方展開がシングルチップ8 bitマイクロコントローラのZ8シリーズです。Z80 CPUに似た命令体系を持つプロセッサに、ROMとRWMとI/Oやタイマなどが集積されています。Z80 CPUに似ているといっても、I/Oポートはおろかレジスタ類まで内蔵RWM空間に割り当てられていて、異なる点もかなり存在します。もっとも命令ニーモニックだけ見るとそっくりかもしれません。
さらにZilog社は比較的早い時期にパッケージや集積されたI/Oの異なるバリエーションをいくつも展開しています。マウスの中に組み込むことのできるような小型のものからハードディスクの制御基板の中枢として用いられる高機能のものまで、実にさまざまなものが作られています。

Z8612, Z8613, Z8681, Z86C91
上から開発用のROM外付け版のZ8612とZ8613、ROMなしのZ8681、同じくROMなしのCMOS版であるZ86C91。

開発用のROM外付け版Z8612はROM内蔵のZ8611を応用したシステムを開発するためのLSIで、Z8611の内蔵機能や端子機能はそのままで、外付けメモリを利用するための端子を増設してあるものです。単なるROMなし版ではなくて、外部ROMを接続してもI/Oポートなどの端子をそのまま利用可能なところがミソです。XROMという表示もありますが、External ROMの意味でしょうか。Z8611は40ピンパッケージですが、ROM用のピンが増えた分、64ピンシュリンクDIPに納められています。なぜかピンを左右1対ずつ追加できそうなくらい幅が広いパッケージになっています。
次のZ8613もZ8612と同じく開発時に使用されることが多いパッケージで、セラミックパッケージの背中に24 pinソケットがついていて、ここに2732を取りつけられるようになっています。中身はZ8611と同一で、40 pinのDIPの端子もZ8611と共通となっていて、単にZ8611に内蔵されたROMを背中に取りつけられるようになっているものです。このようなものをしようすれば、Z8611を用いる製品版の基板にこのZ8613を取りつけて、開発中のプログラムを汎用のROM Writerで書き込んだ2732を取りつけてテストすることができます。少量生産の場合、このパッケージのまま出荷することもできるのでしょうが、このようなパッケージはコストが高いので、どうでしょうね。
写真上から3番目ののZ8681はROM外付け版ですが、RWMを128 Byte、タイマ・カウンタ8 bit幅を2本、UART、パラレルI/O最大24本(実際はアドレス出力端子などに使用するため、これより少なくなる)、割り込みコントローラを内蔵しています。割り込みコントローラは外部割り込み4本、内部割り込み4要因を扱えます。
プログラムメモリ空間とデータメモリ空間は分離していて、それぞれ64 KByteまで拡張可能です。
開発用のZ8612と異なり、マスクROM版を製造するほど量産する必要がないけれど内蔵I/Oやプログラムの都合などでZ8を使いたい応用のため、内蔵ROMを使えなくして外付けROMを使うことにしたMCUで、安価なプラスチックパッケージが使われています。

写真下のZ86C91は内蔵RWMが増えてCMOS化されている点以外はほぼZ8681と同等のMCUです。やはり少量生産用ですね。比較的最近のものです。そういえばZilogロゴの形も上ふたつとは異なりますね。

命令ニーモニックだけ、アルファベット順に並べておきます。
ADC  ADD  AND  CALL CCF
CLR  COM  CP   DA   DEC
DECW DI   DJNZ EI   HALT
INC  INCW IRET JP   JR
LD   LDC  LDCI LDE  LDEI
NOP  OR   POP  PUSH RCF
RET  RL   RLC  RR   RRC
SBC  SCF  SRA  SRP  STOP
SUB  SWAP TCM  TM   XOR

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