ER1400 Serial EAROM

GI社のER1400は私の所有するシリアルEPROMの中では特に初期のものです。シリアル入出力の電気的書き換え可能なメモリは、今では小型で安価な上に電源が切れた状態でも記憶を保持できるため、PHSやデジタルカメラやTV受像機などに広く使われています。その、古典的な(使いにくい点の多い)ICとして、ER1400を見ていくことにしましょう。

ER1400

外観は14ピンですが、6本がNCで使われておらず、実質8ピンのICです。
ER1400は型番の通りに14ビットを1語とする100語のEAROM (Electrically Alterable Read Only Memory)です。14ビット単位で内部のシフトレジスタにデータをロードして読み書きを実行できます。
記憶の鍵はMNOS (Metal Nitride Oxide Semiconductor)構造のトランジスタで、通常のMOSトランジスタと異なり金属ゲートと酸化膜の間に窒化膜があるのが特徴です。金属ゲートと半導体サブストレート間に高電場を与えると、トンネル効果により窒化膜と酸化膜の界面に電子がトラップされる性質があります。トラップされた電子は高電場で追い出されない限り、そこにとどまり続けます。そのトラップされた電子の量によって記憶するのが、このメモリの原理となります。
現在のシリアルEPROMは、高精度に膜厚を管理された絶縁酸化膜を利用して、周囲から絶縁された導体に電荷をチャージするのが特徴で、5 V単一電源でも動作しますが、当時はきわめて薄い絶縁層を製作することが困難で、シリコン窒化膜の性質を利用していました。その膜厚も薄くはないので、高電場を作るためには高電圧が必要となります。
このER1400は単一電源動作といっても電源電圧が-35 Vで、その高電圧を確保しています。しかもロジックレベルが入力で0が-1 V以上、1が-8 V以下-15 V以上という電圧、出力レベルでは0が-1 V以上、1が-12 V以下となっています。通常のTTL ICを接続することはできず、p-MOSロジックか15 V動作のCMOS ICなら接続できるようになっています。
電源電圧も高くて消費電力が大きい(300 mW)ので、普段は商用電源で動作するp-MOSの組み込み用1チップコンピュータに接続して電源断時の記憶保持に使うのが目的だと思われます。
最近のメモリの使い易さを考えると、隔世の感があります。

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