uCOM-1600

NEC初のオリジナル1チップ16 bitマイクロプロセッサがuPD768です。1978年に発表され、uCOM-1600というファミリ名がつけられました。
実はNECはそれ以前にuCOM-16として16 bitマイクロプロセッサチップセットを製造しています。しかし、それはALUおよびレジスタユニット(uPD755)やマイクロプログラムコントローラ(uPD756)などの個別のLSIに分離され、マイクロプログラムによって命令アーキテクチャが変更可能な、いわばプロセッサを組立てるための部品に過ぎないものでした。uCOM-1600が最初の、すべてを集積した16 bitマイクロプロセッサとなりました。

uPD768B
64 pinフラットパッケージのuPD768B。端子は1.27 mmピッチで出ています。この後、NECはuCOM-87シリーズマイクロコンピュータで、1.27 mmピッチで端子の出たジグザグ配列で4列の足が並んだQUIPというパッケージを採用します。このフラットパッケージはピンを適切に折り曲げればQUIPと同じものになります。まさにそのQUIPの前身に相当するパッケージだと思われます。

基本命令93種、1 wordは16 bitで1, 2, 3 Word命令が存在します。メモリはバイト単位でアドレス付けされて、1 MByte (512 KWord)のメモリ空間を持ちます。I/Oアドレス空間は2048 Byte分。汎用レジスタはGR1から7まで7本で、裏レジスタもあるので合計14本を切り替えて使えます。
ハードウエア面では、2入力ベクタ割り込みやDMA制御は普通ですが、ダイナミックメモリのリフレッシュ制御を含んでいたり(リフレッシュカウンタは8 bit)、マスタ/スレーブ・モードを備えてマルチプロセッサシステムを容易に実現できるようになっているなどの機能が付け加えられています。また、入出力ポートは内蔵していませんが、なぜかインターバル割り込み発生用のプログラマブルタイマ回路だけは内蔵しています。全入出力はTTLコンパチブルでn-MOSプロセスの5 V単一電源動作で、クロックも単相のみ、アドレスバスとデータバスは独立しているといった特徴もあります。

あまり詳しい資料もないので、とりあえずピン配置を。

D5   1      64 D13
D12  2      63 Vcc
D4   3      62 D6
D11  4      61 D14
D3   5      60 D7
D10  6      59 D15
D2   7      58 IF*
D9   8      57 BYTE
D1   9      56 MEM
D8  10      55 IO
D0  11      54 WR*
A19 12      53 RD*
A18 13      52 DBIN
A17 14      51 BBUSY*
A16 15      50 WAIT*
A15 16      49 BWAIT*
A14 17      48 COM
A13 18      47 REFAK*
A12 19      46 REFRQ*
A11 20      45 HLDAK*
A10 21      44 HLDRQ*
A9  22      43 DMAAK*/COMRQ*
A8  23      42 DMARQ*/COMAK*
A7  24      41 SLV
A6  25      40 RES*
A5  26      39 NMI*
A4  27      38 INT*
A3  28      37 Clk
A2  29      36 ClkOUT
A1  30      35 ADTRG*
A0  31      34 IV0*
GND 32      33 IV1*

アドレスはきれいに並んでいますし、データは上下バイトが対になるように順番に並んでいます。BYTE, MEM, IO, WR*, RD*, DBINはバスのデータ転送制御用出力信号ですね。REFRQ*とREFAK*がリフレッシュ制御信号のようです。外部から周期的にREFRQ*をアサートするとリフレッシュサイクルが起動されるのでしょうか。SLV信号はマルチプロセッサのスレーブモードを指示するための信号のようです。おそらくDMAAK*信号とDMARQ*信号がマスターモードのプロセッサとのバスアービトレーション信号に変化するのではないかと思います。

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