PROLINE-100 CMT

コンピュータの価格は常に低下しています。補助記憶装置も例外ではなく、たとえば1973年にIBMに続いてそれ以外の各社が発表したフレキシブルディスクドライブ(当然片面単密度の8インチで約250 KByteを1枚に記憶できる)のサンプル価格が200万円くらいであったものが、5年もすると20万円近くまで低下しています。ただしこれはドライブ単体で、インターフェースなどを考えると、さらに10万円ほど必要です。5.25インチのミニディスクドライブも入手が可能でしたが、ドライブ単体が10万円で1枚あたりの記憶容量は80 KByte、もちろんインターフェースは別に10万円てな具合です。マイクロコンピュータ本体は10 - 30万円で揃いましたから、たいていのアマチュアはオーディオカセットテープインターフェースを使用していました。
そんな中、大学の研究室やらコストの厳しい業務用に使用できる補助記憶装置として、TEACからMT2というデジタルカセットテープデッキが発売されていました。単体で95000円。コンピュータのバスに直結できるインターフェース内蔵で、テープの早送りや巻き戻しはもちろんファイルサーチなどのコマンドも備えています。カセットテープには専用のCT300というデジタルカセットテープを使用します。外形はほとんどオーディオ用コンパクトカセットテープと同一ですが、上部に切り欠きがあり、テープの始点と終点を検出できるようにそこに穴が開けてあるなど、細部で違いがあります。記憶容量は約250 KByteほどで、1秒間に500 Byte強の記録再生ができます。遅いように見えますが、紙テープやオーディオカセットテープと比べれば段違いに高速な上に信頼性も高く、テープの特定のブロックを高速に頭だしするようなことがソフトウェアからすべて行えるため、運用ははるかに楽です。
そのMT2に電源とケースを付けて、製品としてTEACが外販したのがPROLINE-100です。

PROLINE-100 external view

これが外観。フロントパネル右上のボタンがイジェクトボタン。これ以外のテープ操作はコンピュータからのコマンドで操作されます。左下が電源スイッチ。専用カセットテープのCT300は正立でセットされます。

PROLINE-100 internal view

左側フロントパネルに近い方がMT2というドライブユニット。右側の後半分を占めるのが電源ユニットで、シリーズレギュレータを使用しています。リアパネルには小さな変換基板があって、そこからフラットケーブル用の50ピンコネクタがのぞいています。変換基板といってもMT2の50ピンコネクタに含まれている電源端子を内蔵の電源に接続するためだけの小さなもの。なお、この変換基板の代わりに8080系バスへの変換回路を備えた基板が付けられているモデルが、PROLINE-200として販売されていました。MT2の制御を担当するチップがHD46502で、これはMC6800の周辺LSIという位置付けで開発されていたため、PROLINE-100もMC6800やMCS6502などのバスに直結できます(実際はバッファを入れて延長することになるだろうが)。
そう、このPROLINE-100およびMT2は恐るべきことにコンピュータのバスに直結する前提のインターフェースだったのです。まさに1970年代のIDEインターフェースというか、野蛮なインターフェースですが、当時のバス転送速度はせいぜい1 MByte/sだったので、終端が不完全でもバスバッファを入れてあれば、50 cmくらいは簡単にバスを延長できてしまいました。

HD46502

これがコントローラのHD46502。TEACの名前がはいっているけれども、当時は日立がHD46502単体でも販売していたので、TEACだけに出荷していたカスタムチップというわけではありません(このHD46502の細部がMT2用にカスタマイズされている可能性はある)。ただし、MT2以外にHD46502を使用していた例を知りませんが。
 

少々調べて見たら、モータはすべて回りました。寿命の心配なゴム製品はピンチローラだけですが、ひび割れなどは見つかっていません。ピンチローラのゴムの径が変化していなければ、きっと正常動作することでしょう。

PROLINE-100 label

ケース後部パネルに貼られている銘板。02タイプというのは、内蔵されているMT2がMT2-02というバージョンであることを示しています。なお、このPROLINE-100は1980年に購入したもので、製造も1980年始めと推定されます。

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