MC3242A, MC3480

1978年、Motorola社はダイナミックメモリの周辺回路の大部分を2チップに集約したMC3242AとMC3480を発売します。4 KbitのMK4096系列や16 KbitのMK4116系列のD-RWM用に設計されており、ショットキバリアダイオードクランプの高速バイポーラプロセスで作られています。
対象となるD-RWMは、S-RWMに比べて特有の複雑な制御が必要になります。特にリフレッシュといって、記憶内容の保持のために6ないし7 bitのリフレッシュアドレスを与えながら特別なメモリサイクルを定期的に実行しなければならず、その間はCPUなど外部からのアクセスが行えなくなります。通常のアクセスサイクルもリフレッシュサイクルも、途中で中断したりすると記憶内容が破壊されてしまうため、調停回路を設けて必ずどちらか一方だけを受け付けるようにしなくてはなりません。また、メモリアドレスは2回に分けて与えるため、最初のアドレスタイミングを与える信号と次のアドレスタイミングを与える信号を作るのはもちろん、メモリアドレスの切り替え回路も作らなければなりませんし、それらのタイミングは40 ns程度の時間間隔で操作しなくてはならず(精度は5 ns以下にする必要あり)、当時のTTLレベルのロジック回路としては高速高精度で難度が高い回路技術が要求されます。
このメモリコントローラでは、2個のICに機能を分けてあります。
MC3242Aにはアドレスマルチプレクサとリフレッシュアドレスの管理機能が含まれます。14 bitのアドレス入力を与えられたタイミングで7 bitずつに分割してバッファ出力に出力します。リフレッシュアドレスの供給を指示されれば、同じバッファ出力に7 bitのリフレッシュアドレスを出力し、その後でリフレッシュアドレスをひとつ進めます。MC3242AのオリジナルはIntel社の3242ですが、一部機能が異なっているなど、厳密には差し替えができませんので、注意してください。
MC3480がメモリ制御やタイミング作成を担当します。CPUとリフレッシュの調停を行い、外部にタイミング指定用の遅延回路を接続するだけでD-RWM 4バンク分の制御信号を発生するとともに、MC3242Aにもタイミング信号を与えます。
このチップセットで20個程度のTTL ICを置き換えることができます。なお、Motorola製だからといってMC6800系専用というわけではなく、いろいろなCPUやバスに対応できる汎用のICです。パーソナルコンピュータのようにCPUとメモリとCRT表示回路が密接に結び付いたシステムでは、タイミング回路を相互に関連させて、つまり兼用させるように設計した方が楽なので、あまり出番はないと思います。基板ごとに独立したモジュールになっていて、それらのカードを組み合わせてトータルなシステムを構築するような場合には、このようなICがあれば小型化に役立ちます。ちょうどそのようなシステムに用いられるメモリ制御回路を集積したものだからです。

MC3242A, MC3480

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