MC68030

MC68020にMC68851相当のメモリ管理ユニット(MMU)を内蔵したものがMC68030です。各種ワークステーションやMacintoshに使われました。
プレリリースの発表は1986年10月頃で、1987年後半からサンプル出荷が開始されました。発表時期として後者の1987年9月と書いてある資料が多いですね。実際にMC68030を搭載したワークステーションが販売されはじめたのは1988年になってからだと思います。
約30万個のトランジスタを78.8平方ミリメートルのチップに集積しています。

MC68030
左はエンジニアリングサンプルのXC68030で16.7 MHzクロック、1989年製。右は製品版のMC68030で25 MHzクロック、1990年製です。

最大の改良点はMMUの内蔵でしょう。内蔵した結果、アドレス変換キャッシュにヒットすればアドレス変換に消費されるクロック数が0になり、性能向上に役立ちます。機能的にはMC68851相当ですが、MC68030に内蔵されたMMUにはCALLM命令サポートが省略されるなど、多少簡略化されています。アドレス変換キャッシュは22エントリ分用意されていて、キャッシュにミスヒットした場合には自動的にメインメモリ上の変換テーブルを検索してアドレス変換するとともにキャッシュフィルします。
MC68020では256 Byteの命令キャッシュのみ内蔵していましたが、MC68030は命令キャッシュのほかに256 Byteのデータキャッシュまで追加されました。しかもキャッシュの構造も異なり、4回のバスアクセスを連続して高速に行うバーストバスサイクルの追加に伴って、16 Byte単位でキャッシュフィルすることも可能になり、16 Byte単位のキャッシュエントリが16ライン組み合わされた形態になっています。
命令のデコードは3段階にパイプライン化され、内部バスが命令バスとデータバスに分離され、それぞれにキャッシュメモリが存在して同時にアクセスできることとあいまって、内部回路の並列度も従来より高まっています。

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