MC6802

MC6800は、5 V単一電源で外付け回路の必要性も少ないという特長がありました。ただし、本当に小規模の組込み用途に使おうとすると、クロックジェネレータがほかに必要だったりして、まだ不便な所がありました。そこで、MC6800にクロックジェネレータと128 ByteのRWMを集積したMC6802が作られ、ROMやI/Oなどを集積したMC6846と組み合わせれば、最小2チップ構成で組み込み用コンピュータができあがるようになりました。Intel系列でいえば8085に相当します。

MC6802
写真の上のMC6802は1978年製です。このLSIの発表が1977年なので、プラスチックパッケージとはいえ初期のチップだと思います。下は日立から発売されていたセカンドソースです。日立の製造時期を読み取る知識はないので、いつ頃の製品かわかりませんが、ハウスナンバ以外にHD6802という互換ナンバの表示があったり、マスクに2回の改良を加えたSマークが付いているということが参考になりそうです。

8085と異なりアドレスバスの端子はデータバス用の端子と分離していますから、汎用のメモリやI/Oを接続するのもアドレスデコーダだけですみます。ただ、アドレスバスはスリーステートにならないため、DMAを行うのには外部にスリーステートバッファを接続しなくてはなりません。DMAが必要なほどの応用には使われないだろうという割り切りがあったのかもしれませんけど。
内蔵の128 ByteのRWMが不要ならば、外部の端子から指示すれば切り離せます。また32 Byte分はバッテリバックアップ可能で、そのためのスタンバイ電源端子もあるのですが、残念ながらMC6802はn-MOSプロセスで作られていてCMOSではありませんでした。つまり、スタンバイ電源の電圧は4 Vから5.25 Vの間でないと記憶内容が保証されず、その時のスタンバイ電流は最大8 mA必要とされていたのです。

なんにせよ、1980年代は8748系を除けばEPROM内蔵のワンチップコンピュータで安いものはほとんどなかった時代ですから、少量生産でちょっとした制御コンピュータが必要な場合、汎用のEPROMを外付けで使用できて、他に数チップで組みあがるコンピュータは便利でした。Z80だってCPUの他にROMとRWMが1個ずつで8255が2個だけ付いたモジュール程度が一番使われていたのではないでしょうかね。そんな中でなら、外付けのRWMが不要なMC6802ってのは結構良かったと思います。

MC6802には内蔵RWMのバッテリバックアップ機能を削除したMC6802NSとRWMを取り除いたMC6808という2種類のバリエーションがあります。

これがMC6802のピン配置です。MC6800と異なる場所に#マークを付けてあります。

VSS    1      40 RESET*
HALT*  2      39 EXTAL#
MR#    3      38 XTAL#
IRQ*   4      37 E#
VMA    5      36 RE#
NMI*   6      35 VCC Standby#
BA     7      34 R/W*
VCC    8      33 D0
A0     9      32 D1
A1    10      31 D2
A2    11      30 D3
A3    12      29 D4
A4    13      28 D5
A5    14      27 D6
A6    15      26 D7
A7    16      25 A15
A8    17      24 A14
A9    18      23 A13
A10   19      22 A12
A11   20      21 VSS

クロックジェネレータ内蔵のためにクロック周辺が変わったことと内蔵メモリの制御ピンが増えたことを除けばピン配置も意味も同じです。MR, E, XTAL, EXTALはクロックジェネレータ用の端子で、XTALとEXTALが水晶発振子接続用。Eが外部クロック出力で、MRがMemory Ready信号といって遅いメモリを使う場合にEのH期間を延長するための信号です。REはRAM Enableの略でこの端子がHなら内部RWMが有効になります。Lなら、内部RWMは切り離されてCPUのアドレス空間からは見えなくなります。VCC Standbyは前述のバッテリバックアップ用の電源端子です。
ピン配置がMC6800と異なるのは以上の6端子だけなので、さすがにソケット差し替えはできませんが、プリント基板のパターン変更は最小限で済みます。まぁ、現在のようにCADでちょいちょいパターン作成ができるなら、だからどうしたってことになるんですけどね。手貼りでパターンを作成していた頃は少し楽だったかも。

Returnto IC Collection.