iAPX86

8080Aの直接の後継は8085ですが、その8085はZ80との競争で不利な地位に置かれていました。それを打開すべく、Intelは8 bit CPUと比べられる程度の導入コストの16 bit CPUを開発、8086/8088として発表しました。特に8088をミニマムモードで使用すると、クロックジェネレータが別に必要となることを除けば8085とほぼ同じ外部回路で動かすことができました。また、8080Aや8085Aのアセンブラソースコードを8086のアセンブラソースコードに変換するソースコードトランスレータが提供され、特にプログラム64 KByte、データ64 KByte以下の応用には、8085から簡単に移行できると強調しています。
Intelによれば、8086は約29000個のトランジスタを3 um HMOSプロセスで集積(後にHMOS-IIIプロセスに変更)、1978年6月8日に発表されたとのことです。最初の製品は5 MHzクロックでしたが、8 MHzクロック品と10 MHzクロック品が供給されましした。下の写真で8086-2というのが8 MHzクロック版、ハイフン以降がないものが5 MHz版です。ちなみに10 MHz版なら8086-1となっています。

ではセカンドソースを含む写真を。
8086
Intel, NEC, AMD, 富士通のセカンドソース品。特に富士通は8 bit CPUのときにMotorola系列のセカンドソースだったので、16 bit CPUで1981年にIntelとセカンドソース契約をしたときにはニュースになりました。Intel社製の8086は久我様よりいただいたものです。

最近、CPUの温度を気にする人が(特にある分野で)見掛けられますけど、この8086は熱いCPUとしても有名でした。動作状態でうっかり8086に手が触れると反射的に手が引っ込むほど。約1.7 Wもの消費電力で、充分に熱くなった8080A(悪くても1.2 W程度)よりも消費電力が増えています。たいした消費電力でないように思うかもしれませんが、なにしろ今と違って40ピンDIPパッケージで足の本数が少なくパッケージの端にある為、それほど基板の方に熱が逃げません。基板も両面基板が使われることが多く、今のように電源パターンが広がっていて熱の逃げやすい多層基板でなかったりしましたから。結局は空気が熱の出口です。ただ、当時はバスバッファでも電流をやたら消費する8216なんかが使われていて、マイクロコンピュータ基板のICって熱いのが多かったですけど。
消費電力の問題は後にCMOS版の完成によって解決されました。1.7 Wから50 mWと劇的に改善されたので、安心してプラスチックパッケージを密閉空間で使用できます。

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