MCS-85 System Design Kit

SDK-85とはタイトルのMCS-85 System Design Kitの略称で、CPUに8085を使用したシステム設計者向けの学習用キットです。特筆すべきは集積度の高さ、つまり使用されているICの数の少なさで、TTYを入出力に使うこともできるし基板上のスイッチとLEDで操作することもできるのに、わずか6個のICだけで動作するのです。たとえば、TTYを接続してしか使えないSDK-80では15個のIC、同じくTTYが前提のMotorola MEK6800DIで17個、LEDと24個程度のプッシュスイッチで操作する方ではNECのTK-80が24個でMotorolaのMEK6800DIIで25個、富士通のLkit-8で29個のICを使っていました。それが6個ですから、いかに集積度があがったか実感できます。

SDK-85 full image

これが全体像、左半分はフリーエリアになっていて、ユーザが拡張するためのスペースになっています。なんたって搭載メモリも少なかったから、こちらにメモリや実験用I/O回路を取り付けることになるのね。
左上にロゴがあるけど、見えないからそこの拡大を。

SDK-85 logo

表題にもなっているけれどMCS-85が8085コンピュータシステムを表す言葉です。そのSystem Design Kitで、このキット全体はSDK-85って略称で呼ばれているのね。

右半分だけの絵を下に。左側はフリーエリアで、自由にユーザが回路を組めるようになっている部分です。

SDK-85 PCB right half part

シルクスクリーンの白い枠で囲まれた単位で右上から下に向かって説明します。
右上のTTY INTERFACEと書かれている部分は、トランジスタを用いてRS-232Cインターフェースに接続できるような電圧レベルにロジックレベルを変換する回路です。この部分でだけ-12 Vを使用しますから、本体のLEDやキーボードで操作してテレタイプライタを使用しない場合には+5 Vの単一電源だけでも動作してしまいます。
その左側はバスバッファ回路で、この写真の外部左側にあるユーザエリアにメモリやI/Oを接続するときに使用します。本来はオプションで、部品は付属しません。
その下の右半分を占めるのがKEYBOARD AND DISPLAYと書かれている領域で、8279と8279が管理するキースイッチとLEDです。LEDを駆動するためにトランジスタが14個ほど使われています。ソフトウェアの介入なく、8279内部のレジスタに格納されたデータを常にLEDに表示するとともにキースイッチの状態を調べ、スイッチが押された瞬間にCPUに知らせることができます。
8279の左の40ピンのLSIが8085です。その下がROM/I/Oで、8355がひとつ取り付けられています。この8355の中にモニタプログラムが納められています。オプションのソケットがひとつ用意されていて、8355/8755をもうひとつ取り付けられます。
さらにその下がRAM/I/Oとなっていて、8155がひとつ取り付けられています。もうひとつの8155を取り付けられます。キットをそのまま使用する場合、この8155内蔵の256 Byteのメモリ(オプションも使用して512 Byte)だけがユーザが使用できるメモリになります。そのため、左側のユーザエリアでメモリを増設することも多かったと思います。

キースイッチの、特に3から9までのキー表面下部に刻印されているのはレジスタ名です。EXAM REGキーと共に使用して、レジスタ内容を表示できるようになっています。もちろん、16進数キーのAからFまでもレジスタ名と解釈されます。SUBST MEMキーはメモリ書き換えで、GOは実行と、ワンボードコンピュータのモニタとしては比較的機能が低い方だと思いますが、テレタイプから操作できるモニタも含まれていて、そちらの方が機能が多くなっていますから、キーとLEDからの操作はおまけ扱い、あるいは8279の具体的な使用例を示すために付けただけなのかもしれません。

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