2107B 4 Kbit Dynamic Memory

1 KbitのD-RAMであった1103Aを大容量化する際にn-MOSプロセスで作成し直して使いやすくしたのが2107系の4 Kbit D-RAMだと考えられます。1103Aの3トランジスタ1コンデンサ方式と素子数は同一ですが、1103Aではアドレスやデータ線が読み書き別に存在する4.5線方式であったのに対し、アドレスとデータ線を読み書きで共有する2.5線方式にしたために、高密度化が進みました。
電源電圧は+12 V, 5 V, -5 Vになり、内部回路は12 Vで動作し、-5 Vはバイアス電圧として使われ、外部とのインターフェース回路用に5 Vが使われます。その結果、アドレスやデータの論理レベルは基本的にTTLレベルになっています。ただし唯一CEという内部動作の基準クロックとなる信号だけは12 V振幅のMOSレベルで与えてやらなくてはなりません。

2107
National Semiconductorの2107B相当品であるMM5280N-5で、アクセスタイム250 ns、サイクルタイム470 nsのもの。

アドレス信号も各ピンに1本ずつ割り振られ、Z80 CPUに接続して使用するにはアドレスマルチプレクサが不要で当時ベストのD-RAMでした。

しかし、4 Kbit D-RAMには別に強力なライバルがいました。MOSTEK社が推進するMK4096系列です。2107の3トランジスタ1コンデンサ方式でなく、1トランジスタ1コンデンサ方式で1 bitを記憶するため集積度が高く、アドレス信号を2回に分けて入力するため、小型の16ピンパッケージに納められていて、22ピンの2107よりも実装密度を高められました。
市場の判定は実装密度の高いMK4096系列を支持し、以降、ダイナミックメモリの回路方式のスタンダードはMK4096を踏襲することになります。メモリICのIntel社が、メモリの主流のダイナミックメモリの指導的立場を失って他のメーカの後塵を拝した始まりが、この4 Kbit D-RAMでした。もっともIntel社はUVEPROMやFLASHメモリなどMOSのPROMではずっと地位を保っていますけど。

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