HD63265

1986年に日立から発表されたHD63265は、おそらく単体のLSIとしては最後のFDCといえるのではないかと思います。これ以降は大規模なLSIの片隅にFDCも集積されることが多く、独立のFDC用LSIの出番が減っていきます。

HD63265
HD63265で、左はRマスクのDIP入り、右はSマスクのQFP。

このHD63265は型番から想像できるように、NECのuPD7265の流れを汲むFDCで、ソフトウェア側からの上位互換性を持ちます。特筆すべきはデータセパレータ回路内蔵ということで、ちょうどFD1791がWD2791に改良されたのと同じようなパターンなのですが、WD2791と異なり、内蔵されているデータセパレータ回路が完全無調整となっています。完全無調整といっても読み取り精度の低いデジタルPLL方式ではなく、アナログVFOを利用した高精度PLL方式を採用している点が優れています。WD2791シリーズでもアナログVFOを用いた高精度PLL回路をデータセパレータに採用していますが、個別に可変抵抗や可変コンデンサを適切に調整する必要がありました。
データセパレータ回路を内蔵する都合などで、ピン数がuPD7265よりも増加しているため、ハードウェア的な互換性はありません。また、コマンドなどはuPD7265と同一のものが実行できますが、さらに追加されたコマンドも存在します。型番からわかるようにCMOSプロセスで製造されていますが、コマンドの中には低消費電力モードに切り替えるSLEEPコマンドなんかも追加されていて、電池動作にも対応しやすくなっていますし、uPD7265では不可能な特別なフォーマットも可能にするWRITE LONGコマンドなども存在します。
 

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