uPD472D-01

なぜ、このICの分類がCRT表示になっているんだ、という人もいるかもしれません。これはROMです。しかもマスクROMです。実は、ROMの中のデータが特に重要で、フォントデータが入っています。CRT表示やプリンタでは、文字コードと文字フォントパターンの変換テーブルが必要で、そのためにキャラクタジェネレータROM (CG-ROM)が使われます。uPD472D-01はCRT表示用の1024 Word×5 bitのデータが入っていて、5×7ドットのフォントデータが128個入っています。8 bit幅のROMでなくて最初から5 bitになっていることからもCG-ROM専用に開発されたことがわかります。文字は英数字にカタカナまでサポートしています。128文字分では足りないのではないかと気がついたのなら鋭い。実は英小文字が入っていません。時代を感じてしまいますね。ユーザがプログラムできるROMが256 Byteの1702しか手に入らなかった時代に10000円程度で売られていました。しかも1702はアクセスタイムが1 us以上あり、CG-ROMにはアクセスタイムが足りません。最初に書いたとおりマスクROMだから、PROMよりも集積度が高く高速であったために実用になったのです。

uPD472D01

オールインワンのパーソナルコンピュータ的なものがいろいろと出てくる1980年以降になってくると、2716などの16 KbitのROMも安くなってアクセスタイムも間に合うようになっていたので、そこに独自のフォントを書き込んでCG-ROMにすることが可能になります。そのために専用のCG-ROMはなくなります。一般のEPROMやEPROM互換マスクROMにフォントを書きこんで使用すれば、顧客の注文に応じて特別なフォントに入れ換えられますしね。一部にはキャラクタジェネレータをROMではなくてコンピュータの動作中に書換可能なRWMに置き換えて、自由にフォントを定義できるコンピュータも存在しました。プログラマブルキャラクタジェネレータという奴ですね。しかし、じきに漢字表示がパーソナルコンピュータやワードプロセッサで必要になると、マスクROMに漢字フォントを書き込んだCG-ROMが再び使われるようになります。漢字フォントはサイズが大きいので大容量のEPROMに書き込んで使おうとしてもコストが高くなりすぎますから。ところがコンピュータのメモリが安くなり、多様なフォントを用意するだけでなくアウトラインフォントまで使うようになるとCG-ROMでは役に立たなくなってしまいました。

1970年代に使われた主なCG-ROMの型番だけ記憶のために残しておくと、uPD472やuPD473の他にRO-3-2513, MCM6573A, MCM66734なんかがあります。

Return to IC Collection