95年9月発売コミックスのレビュー


新世紀 エヴァンゲリオン

Volume 1  使徒、襲来

漫画/貞本義行(Yoshiyuki Sadamoto), 原作/GAINAX

−西暦2000年に起こった「セカンドインパクト」より15年、 復興の兆しが見えてきた人類に新たな危機「使徒」が現れる。 予測されていた「使徒」の襲来に対し、人類は汎用人型決戦兵器 「エヴァンゲリオン」を開発。3人の少年と少女に人類の存亡を委ねる。

10月よりTV東京系にて放送される同名アニメーションより 先に連載が開始された作品。原作というのではなく、一つの作品が 二つのメディアで同時に公開されていると考えるのがいいだろう。 2つの内容はほとんど同じのようである(私はアニメは見ていないが)。 もちろん、作画はアニメのキャラデザインをしている貞本義行氏なので いうことはない。アニメータが描く漫画は、イラストとしてみるといいのだが、 漫画としては表現力に乏しい場合が多く、私個人としては、 いいと思える作品は少い。だが、貞本氏は漫画の表現を心得ていて、 読ませてくれる。特に、シンジの父・碇指令の存在感が大きい。


スポーツ医 (1)

寺島優(Yu Terashima)+ちくやまきよし(Kiyosi Chikuyama)

日本のスポーツ界ではプロアマ問わず非科学的な練習がまだまだ幅を効かせている。 特にプロ野球界は悲惨である。チームドクターの不在、軽視されるトレーナー…。 「特訓」と「根性」で勝利があると信じるコーチ陣。改善されているとは言え、 まだまだメジャーとは程遠いのが現状である。
今回の Vol.4「インナーマッスル」に登場するコンディショニングコーチ・立花とは まぎれもなく前バファローズ、現マリーンズの立花龍司コンディショニングコーチが モデルである。立花コーチはメジャーの手法を採り入れ、野茂を始めとして 選手からの信頼も厚かった。しかし、作品に出てくるような300勝投手の監督と 意見が合わず退団(解雇?)。それに対し最も反発したのは野茂であり、 それが結果としてメジャーリーガー・野茂を生むことになるとは皮肉な話である。
この作品では勝負に立花が勝ち、選手達の信頼を得ることになるが、 現実はまだまだそうではない。いや、選手の信頼を得ても、考えの古い監督、コーチ の為に遅れたままなのだ。

少年探偵彼方 ぼくらの推理ノート (1)

原作/夏緑(Midori Natsu), 作画/井上いろは(Inoue Iroha)

久々にカバーの絵柄だけで買ってしまった作品。やぶうち優に近い感じの かわいい絵柄。内容はミステリークイズ形式で、解答編は巻末にある。 どうせ小学○年生にあるようなありがちで簡単な問題ばかりだろうと タカをくくって読み始めたら、いきなり最初の問題が解らなかった…。 結構難しく面白い推理コミックになっている。 しかし、少年探偵に頼る日本の警察って一体…。

キャットルーキー (4)

丹羽啓介(Keisuke Niwa)

ファルコンズ・沢井監督のしかける四方シフト、フェニックス・ストッパー九篠対 水原監督の頭脳対決、神戸フォックス対四方&神童のイカサマ対決。 今巻は「頭脳対決」が並んだ。これはこれで非常に面白い(特に九篠に仕掛ける 水原監督は見事)なのだが、だが、プロ野球、特にこの話のモデルである パ・リーグの魅力とはこういうものなのだろうか? パ・リーグはイチロー効果で 消化試合でも満員になる時代。現在は選手の力と技で「魅せる」ことへと シフトしつつあるし、この話も、もともと力と力、技と技の対決が魅力の 作品だったはずだ。それだけにこのような展開に走るのはちと残念である。

ぷりぷり県 (1)

吉田戦車(YOSHIDA,Sensya)

地方(特に県)の時代にジャストフィット。県まんがの決定版!

「伝染るんです」の連載終了から、次は何をするかと思えば、県まんが。 「お国自慢」という言葉が薄れつつある現代にこの作品を世に問う意味は 一体何だろうか? それにはもう一度自分の出身県の誇りと自慢を 問い直す必要がありそうだ。さて、我が和歌山県は…1巻には和の字も 出てこないじゃないかぁぁぁ。なんじゃこりゃぁぁぁ。
(和歌山県出身 中村充隆)


はじめちゃんが一番! (15)(完)

渡辺多恵子(Taeko Watanabe)

idle[aidl] −アイドル
・偶像。崇拝されるもの。幻影。まぼろし。
 −あるいはそのものすべて。

どんなにつらいことがあっても、ファンの前ではにっこり笑って、 勇気と希望を与え続けなければならない、それがアイドル。 だが、作品の中では悩みも少なかった和田瑞希をここまで不幸のどん底に落すとは 思いもよらなかった。すったもんだの挙げ句、乃亜の呪縛から解かれた瑞希は 再びアイドルとしての自分を取り戻すわけだけど、それはハッピーエンドではない、 ほっとした気持ち。敢えてそうしたのは、アイドルはあくまでアイドルとしての 存在することをを願ったという意味なのだろう。

でも、長い連載の間、読者を勇気づけてくれたアイドルははじめちゃん。
やっぱり「はじめちゃんが一番!」


かしましハウス (2)

秋月りす(Risu Akizuki)

相変わらずの四姉妹のどたばたほのぼのぶりで、安心して読んで下さい。 と、これだけではなんだが、2巻では長女ひとみのスランプネタが多い。 庭の手入れをする、お菓子を作る、料理に凝る、やたらお茶を飲む…。 どー見ても作者の苦労を漫画にしただけだろう。自分を笑いにするのは 関西の笑いの基本中の基本である。でも何だかスランプの時が楽しそう…。

シャカリキ! (18)(完)

曽田正人(Masahito Soda)

ツール・ド・おきなわ、FINISH。16歳と5カ月の史上最年少王者、 野々村輝の誕生である。しかし、FINISH を待たずして観客達は気づいていたはずだ。 テルにとって日本は狭過ぎる、いや日本の坂では小さ過ぎるということを。
テルとユタ、宿命のライバルに明確な決着をつけなかったのは、なんかほっとした。 水と油のように走法が違う二人だが、この二人には世界で闘い続けて欲しい。 連載の引き延ばしや、「次は世界だ!」とか言っての打ち切りが多い中、 出会いと希望を見事に描いた熱い作品だった。

出発の前、出会いの地、つづら坂をゆくテルとユタ。
自転車を通じてのみ語り合える、かけがえのない親友。


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Mitsutaka Nakamura / minaka@st.rim.or.jp