第34期

「路傍」

第一話

「石になりたい、花になりたい。」

あたしは時々、全てのことが煩わしくなる。

家族も、友達も。そして一番大切なあなたも。

抱えきれない程の現実と矛盾を放り捨て、あたしは石になりたい。

「そこにはなにがある?」

「ただ石が転がっているだけ。」

沢山の人があたしの横を通ります。でも、もう誰も関係ありません。

「誰も見てくれない。それは存在しないのと同じこと?」

「そんなのいやだ」 

「石ではなく、花になりたい!」

「ひっそりと咲く、路傍の花になりたい!!」

「急ぎ足の人達も、一瞬だけあたしに視線を落としてくれれば、それでいいの」

、、あたしは矛盾の中で今日も生きている。

 

第二話

「こわれもの」

あたしはこわれもの。

あたしの心も、とても繊細にできてるの。

あんたとの関係もこわれもの。

荒く扱うと、すぐ壊れちゃうよ。

バラバラになったあたしをつなぎ止めること、あんたにできる?

 

第三話

「ぼくは天使ぢゃないよ」

「ねえ、愛だの恋だのって気軽にいわないで」

僕は突然彼女にそう言われた。

「ねえ、言葉の安売りはやめてよ」

彼女は僕のことを名前ではなく、「ねえ」と呼ぶ。

「気持ちの籠らない言葉って、だいッキライ!」

「言葉」を僕の名前に置き換えてみた。

悲しいがそういうこと?

ぼくは天使ぢゃないよ。

僕がきみに与えるのは幸せだけだと思ったら大間違い。

ぼくは天使ぢゃないよ。

 

TEXT 五味みやび

PHOTO ボンド・トーキョー

OLYMPUS PEN-FT F.Zuiko38mm

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