数少ないジョン・スラデックの邦訳作品を読み、かつそれが気に入っている方ならば、彼が他の作家とはなかなか容易に比較できないほど「マッドな」「狂った」「奇妙奇天烈な」SF作品の作者であることをそれとなく感じていらっしゃることだろう。私の場合はサンリオSF文庫で出た「スラデック言語遊技短編集」冒頭に収められた「義足をつけた象」一編でぞっこん惚れ込んでしまった。それから過去のSFマガジンスラデック小特集号などで「蒸気駆動の少年」に触れ、もうこの人神様!ってくらい入れ込んでしまっている。「不安検出書(B式)」なんてもう小説の形をしていなかったりする不気味な作品だ。このスラデック、残念ながらごく一部の作品しか翻訳されていない。もっとも最近に出た翻訳は1992年12月にハヤカワSF文庫で出た「遊星よりの昆虫軍X」である。実はこれ以外のスラデックのSF長編は翻訳がない。その代わりミステリは「見えないグリーン」を代表作としていくつか翻訳されている。
もしもあなたが「ちょっとイカレてて、途方もなく馬鹿馬鹿しくて、ぶっとんだ」SFがお嫌いでないのなら、スラデックはきっとあなたを楽しませてくれるだろう(そういう人は多くないとは思うけど)。