EPAはこの小冊子の作成に関係した自動車メーカー、化学メーカー、部品メーカー、試験研究所、研修機関、自動車整備技術者に感謝の意を表します。
あなたは1995年以前に生産されたエアコン装備車を持っていますか?
もしそうなら、あなたのカーエアコンはオゾン層破壊原因の塩素系フッ化炭素(CFC)を含んでいるかもしれません。
化学メーカーはもはやCFCの生産を許されていません。そしてCFCの価格は序々に高騰し供給も減ってゆくでしょう。
CFC-12は「フロン-12」という商標で知られている冷媒であり、1995年以前の多くの自動車エアコンに使用されていました。もしあなたのカーエアコンがCFC-12を使用していて、次回エアコンの修理が必要となった時には、以下の2つの選択があります。
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CFCではない現在許可済の冷媒を用いた新しい部品でエアコンをレトロフィットする。
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CFCの補給による修理を行ない、今後も供給量の減少してゆくCFC-12にお金を費す。CFC-12はいつかは供給されなくなることを忘れずに。
どっちが良いのか? 修理するならどの冷媒を使うべきなのか? どうしてCFCはなくなってしまうのか?
あなたの知りたい答えは全てこの小冊子にあります。
自動車エアコンと環境 とはどんな関係があるの?
オゾン層は太陽からの有害な紫外線(UV)を保護しています。オゾン層破壊という言葉は聞いたことがあるでしょう。でも、なぜあなたのカーエアコンのCFC系冷媒がその原因となるかはご存じですか?
カーエアコンのCFCは、空気中に放出された時にオゾン層を破壊するのです。
CFCは、成層圏においてオゾン分子を分解・破壊します。オゾン層が破壊されると、より沢山のUVが地球に届きます。過剰な紫外線は以下のような病気の原因となります。
皮膚ガン
白内障
免疫力低下
また、紫外線は以下にもダメージを与えます。
作物の収穫
畜産
生態系
CFCの塩素はオゾン分子を攻撃します。薄いオゾン層は高レベルの有害な紫外線となり地表に届き、人間の健康や環境を害します。
CFCの段階的消滅
アメリカを含む160以上の国が、CFC-12等のオゾン層破壊物質の生産停止に合意しています。この合意はモントリオール議定書として知られており、大気清浄化連邦条例としてアメリカで立法化しました。
1995年末以来、アメリカではCFC冷媒は生産されていません。
科学者らは、もしすべての国がモントリオール議定書に応じるならば、2050年にはオゾン層は復活すると予想しています。
あなたのカーエアコンはCFC-12を使用していますか?
どのようにして、自分の車のエアコンがCFC-12を使用しているどうかかがわかるのでしょうか?
もしあなたの車が1992年より前に製造されたのならば、エアコンはCFC-12を使用しています。
あなたの車が1992,1993,1994年に製造されたなら、エアコンはCFC-12を使用しているかもしれません。この頃は一部の自動車メーカーがHFC-134aと呼ばれるオゾン層を破壊しない冷媒を使用し始めていました。古い車ほどCFC-12が使用されている場合があります。コンプレッサ本体やエンジンルーム内のどこかに、使用冷媒の種別ラベルが貼られています。これは自動車整備士や自動車メーカーに聞けばわかります。
あなたの車が1995年以降に製造されたなら、CFC-12は使用していません。1995年には全ての自動車メーカーはオゾン層を破壊しないHFC-134a冷媒を使用しています。
レトロフィットするべきか?
それともCFC-12を使い続けるべきか?
もしCFC-12使用エアコンの修理が必要となった時、なにが出来るでしょうか?
2つの選択肢があります。
レトロフィットする:
いくつかの車はレトロフィットには適さないかもしれませんが、大抵の車のエアコンは新しい部品と環境に適応した冷媒を使用することでレトロフィットすることができます。レトロフィットすることは、オゾン層を保護することにもなり、また
今後のエアコン修理費や冷媒購入時のお金の節約
あなたの車の価値の出来る限りの向上
CFC-12を確保する為の労力とお金の節約
になるかもしれません。
単なる修理とCFC-12の継続利用:
CFC-12の供給が無くなるまで、CFC-12を使い続けることが出来ます。もしあなたがその車をあまり長く使用するつもりがないならば、これが一番経済的な方法かもしれません。カーエアコンをレトロフィットしなければいけないという法律はありません。
あなたのエアコンをレトロフィットすべきかそうでないかを決断する際は、CFC-12の経済性と実用性を考慮すべきです。
レトロフィットについて知っておくべきこと
レトロフィット方法には、以下の2つのタイプがあります。
1-a. HFC-134aを利用した高性能なレトロフィット:自動車メーカーはHFC-134a冷媒を使用した専用の作業と部品を推奨しています。
1-b. HFC-134aを利用した経済的なレトロフィット:HFC-134aを冷媒に使用しますが、自動車メーカーが推奨する部品および作業全部は行なわない方法です。自動車メーカーはこの経済的なレトロフィットを推奨していません。
2.
混合冷媒を使用した経済的なレトロフィット:複数の化学物質を混ぜた混合冷媒を使用します。自動車メーカーはHFC-134aに比べ、この方法を推奨,および認定はしていません。
これらのレトロフィット方法の違いは、比較表
でより詳しく説明されています。
高性能なレトロフィットは経済的なレトロフィットより高価かもしれませんが、長い目で見ればお金の節約になり得るでしょう。
レトロフィットに必要なこと:
ラベル貼り:レトロフィットされた全てのエアコンは、どの冷媒が使用されたかを示すラベルが含まれなければなりません。これはエアコンの冷媒の混合防止や冷媒の補給時の為のものです。
補給器具の取付:全てのレトロフィットしたエアコンには、使用した冷媒に適応した独自のサービス用バルブを装備しなければなりません。
冷媒の回収と補給:レトロフィット作業においては、元の冷媒(CFC-12)は取り除かれ、回収されます。その後に新しい冷媒を入れます。
レトロフィットによっては他の追加の部品を置き換える必要があります。
注意:エアコン冷媒を作業する技術者はアメリカ環境保護局(EPA)の認定を受けている必要があります。
冷媒についての留意点
EPAによって示された新しい冷媒は、全ての車では動作しないかもしれません。レトロフィットするか又はCFC-12を継続利用する際は、自動車メーカーまたは自動車整備士に聞いてください。
レトロフィットする際は、自分の車の冷媒がCFC-12であることを確かめてください。既にレトロフィットされているエアコンをHFC-134aでレトロフィットしてはいけません。;これはあなたのエアコンにダメージを与え、保証が無効になってしまうでしょう。
施工設備がEPAが認めている冷媒を使用しているかどうかを確かめてください。EPAが認可している冷媒のリストはEPAホットライン(800-296-1996)で入手できます。
EPAは冷媒が可燃性でないか、人間の健康や環境に害がないかを検査しています。しかし、EPAは特定の車に冷媒がどううまく適応するかをテストも判定もしていません。
自動車メーカーは以下の理由により、HFC-134aを用いる場合だけを推奨しています。
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HFC-134aだけがメーカーによる性能および耐久性の条件をそなえている。
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HFC-134aは一般に広く用いられており、経済的である。
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HFC-134aはアメリカ国内においてどこでもサービスを受けられる。
HFC-134a以外の冷媒を使用した場合、エアコンの保証が無効になるかもしれません。
冷媒の可燃性に用心
CFC冷媒を、プロパンやブタン、その他可燃性の物質を主成分とする冷媒に入れ換えることは違法です。CFC-12冷媒を前提として設計されたエアコンに対して、可燃性冷媒を用いてレトロフィットすることは出来ません。
15の州とコロンビア特別区が、自動車用の冷媒としては、それがCFC-12の代用であれ何であれ、可燃性の冷媒については使用を禁止しています。
自動車メーカーは炭化水素や他の可燃性冷媒の使用に反対しています。これらの冷媒の使用は危険であり、エアコンシステムや関連部品の保証が無効になります。
自動車保険は、違法な可燃性冷媒の使用による損害については適用外でしょう。
レトロフィット方法
比較表
この表はレトロフィット方法毎の利点と不利な点を示します。レトロフィットすべきかは、費用、性能、実用性について考慮すべきです。(実際のレトロフィット整備費用については、地域や使用部品、整備先、作業工賃等によって差があることに留意してください)
項目 |
高性能なHFC-134aによるレトロフィット |
経済的なHFC-134aによるレトロフィット |
経済的な混合冷媒を用いたレトロフィット |
保証 |
保証の有無については問い合わせてください。自動車メーカーは新品部品使用についてのみ保証する場合があります。また、それらは性能の保証が含まれるかもしれません。
メーカーによっては、CFC用エアコンにHFC-134aを使用した場合は保証しないかもしれません。
全ての車は冷媒の入れ換え、サービスバルブの変更、ラベルの貼り換えが必要です。 |
修理工場は新品部品については保証するかもしれませんが、性能の保証はしないかもしれません。
メーカーによっては、CFC用エアコンにHFC-134aを使用した場合は保証しないかもしれません。
全ての車は冷媒の入れ換え、サービスバルブの変更、ラベルの貼り換えが必要です。 |
混合冷媒の使用は、メーカーの保証外となるかもしれません。
修理工場は新品部品については保証するかもしれませんが、性能の保証はしないかもしれません。保証を主張してみるように。
全ての車は冷媒の入れ換え、サービスバルブの変更、ラベルの貼り換えが必要です。
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特殊な部品や作業の必要性 |
車によっては、コンプレッサ、ドライヤ、コンデンサ、ホース、高圧カットスイッチ等の制御部品の交換が必要かもしれません。
アキュムレータやドライヤ部品については、11万km以上走行の車の場合や、ある一定時間以上大気にさらされた場合には、通常は交換が必要です。
高圧カットスイッチ交換も必要でしょう。 |
アキュムレータやドライヤ部品については、11万km以上走行の車の場合や、ある一定時間以上大気にさらされた場合には、通常は交換が必要です。
高圧カットスイッチ交換も必要でしょう。 |
ホースや高圧カットスイッチの交換、またシステムによっては制御部品の交換が必要かもしれません。
アキュムレータやドライヤ部品については混合冷媒も同様であり、11万km以上走行の車の場合や、ある一定時間以上大気にさらされた場合には、通常は交換が必要です。
HCFC混合冷媒用のドライヤは車によっては適用できないかもしれません。 |
初期費用
(修理以外の費用)
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一般にこの方法は高価ですが、これはレトロフィット方法の複雑さに依存します。場合によっては経済的なレトロフィットと同等の場合があります。 |
古いエアコンを修理するのに最低80ドル以上、プラス、必要ならばドライヤ/アキュムレータや高圧カットスイッチの費用が発生します。 |
古いエアコンを修理するのに最低80ドル以上、プラス、必要ならばドライヤ/アキュムレータや高圧カットスイッチ、制御部品、必要ならホースの費用が発生します。
ある部品の耐久性が低下し、追加修理の原因となるかもしれません。 |
将来的な費用 |
部品や性能については、専用部品による施工のため、大抵は保証されてます。 |
専用設計部品を使用しない場合があるため、レトロフィット作業時の交換部品は少ないかもしれません。将来的なコストは高性能なHFC-134aレトロフィットより高くなるかもしれません。 |
専用設計部品を使用しないため、レトロフィット作業時の交換部品は少ないかもしれません。将来的なコストは高性能なHFC-134aレトロフィットより高くなるかもしれません。 |
性能 |
これが最も信頼性あるレトロフィットです。メンテナンス、性能、耐久性について各車種毎に専用設計されています。 |
車によっては冷却性能は多少落ちるかもしれません。しかしそれはとても蒸し暑い日や、アイドリング中の場合だけかもしれません。
自動車メーカーの手順に従わない場合は耐久性が低下するかもしれません。 |
車によっては冷却性能や耐久性は多少落ちるかもしれません。しかしそれはとても蒸し暑い日や、アイドリング中の場合だけかもしれません。耐久性は多少落ちるかもしれません。 |
環境への影響 |
オゾン層を破壊しません。 |
オゾン層を破壊しません。 |
オゾン層破壊物質成分が含まれているかもしれませんが、CFC-12よりは影響が少ないでしょう。
EPAの認定を受けているか確認しなさい。 |
冷媒の供給 |
どこでも可能です。 |
どこでも可能です。 |
HFC-134a程広く供給はされていません。整備施設がどこにでもあるわけではありません。 |
なにを得るのか確認を!
レトロフィットを行なったら、サービス工場にレトロフィット内容について確認してください。
交換した部品には保証があるか?
性能に保証があるか?
性能や耐久性が減少するのか?
使用した冷媒が国中どこでも供給可能なのか?
使用した冷媒専用のサービスバルブ部品があるか?
どの冷媒が使用されているか明記したラベルがちゃんと貼ってあるか?
もっと知るには
自動車エアコンと環境について詳しく知るには、EPA 成層圏保護ホットライン(800-296-1996)で以下の出版物を請求してください。
エアコン冷房を維持しオゾン層を保護する方法(EPA430-F-95-005)
冷房維持のコツ:CFC削減下のカーエアコン(EPA430-F-95-092)
ホットラインでは以下のCFC廃止についての出版物もあります。
オゾン層保護:市民活動のチェックリスト(EPA430-F-94-007)
冷媒回収の適用:知っておくべきこと(EPA430-F-93-003)
追加情報についてはEPAの成層圏保護部のホームページで得られます。
http://www.epa.gov/ozone
From:
" It's Your Choice: Retrofitting
Your Car's A/C System" (EPA430-F-97-052 June 1997)
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