------------------------ プロバイダのシステム構成 ------------------------ ここでは,ユーザがダイアルアップ PPP によりプロバイダと IP 接続する場合 を中心に話を進めます.図に,インターネットプロバイダの一般的なシステム 構成を示します. 仮に,このプロバイダの名称を XXX Network としましょう.この会社は,イン ターネット上での組織名を示すドメイン名 xxx.or.jp を持っています.このド メイン内のネットワークには,色々な目的ごとに,そのサービスを提供するコ ンピュータ(サーバ)が用意されています.ほとんどの場合,これらのサーバ 群は UNIX マシンが用いられており, 1 台のマシンに対し,複数のサーバの 機能およびホスト名を持たせたり,逆に同じ機能のサーバを複数台のマシンに 分散したりと,非常に柔軟なシステム構成がなされています. これらの「サーバ」に対して,ユーザが用いるプログラムは「クライアント」 (サービスの受け手)と呼ばれ,両者の関係は「クライアント&サーバ型」と 言われています.クライアント側にも多くの処理を任せるこの関係は,従来の 「ホスト−端末型」の通信システムより優れています. それぞれのホストは,当然 IP アドレスを持っていますが,人間に分かりやす いように,役割に応じたホスト名がついています. サーバの種類 典型的なホスト名 備考 ---------------------- ---------------------- ------------------------------- ネームサーバ ns.xxx.or.jp メールサーバ mail.xxx.or.jp SMTP サーバ pop.xxx.or.jp POP サーバ ニュースサーバ news.xxx.or.jp または nntp.xxx.or.jp 電子掲示板サーバ bbs.xxx.or.jp 一般ユーザ向けホスト host1.xxx.or.jp ホスト名はいろいろ host2.xxx.or.jp anonymous FTP サーバ ftp.xxx.or.jp WWW サーバ www.xxx.or.jp ゲートウェイ プロバイダと外をつなぐ ターミナルサーバ プロバイダとユーザをつなぐ PPP ユーザ pppNNN.xxx.or.jp NNN は連続した英数字 ネームサーバ ------------ コンピュータ同士は, IP アドレスをさえ分かれば通信できるのですが,人間 は数字の羅列を覚えるのは苦手です.そこでコンピュータに名前(ホスト名) を付けて識別することになっています. ネームサーバ(正確にはドメインネームサーバ)は,インターネット上の(ド メイン名を含んだ)ホスト名と IP アドレスの対応を教えてくれるものです. プロバイダ内部のホスト名は,ネームサーバ自身が管理し,外部のホスト名に ついては,プロバイダの上位のネットワークが持つネームサーバに自動的に問 いあわせます. ドメイン内では、ホスト名は host1、host2 といった名前だけで区別できます。 しかしインターネット上では、別の組織にも host1 という、同じ名前のマシン があるかもしれません。このため、ドメイン名を後ろに付けて識別するしなけ ればいけません.このように,ネームサーバはインターネットにアクセスする 上で非常に重要ですので,必ず正しく設定してください.ちなみに,ネームサー バの設定だけは、IP アドレスを書く必要があります。その理由は,ネームサー バ ns.xxx.or.jp の IP アドレスでさえ,ネームサーバに聞かないと分からな いからです. メールサーバ ------------ メールサーバには,インターネット上でのメール交換の基盤となる SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) サーバと,主にパソコンなどに対するメー ルの配送に用いられる POP (Post Office Protocol 3) サーバがあります.両 サーバを 1 台のマシン(およびホスト名)で兼ねる場合もあります. プロバイダの外部とのメールの交換は, SMTP サーバが行います.一方,ユー ザ側は,使っているのマシンがマックや Windows マシンの場合は,その上で動 くメールリーダ(メールを読み書きするプログラム)は,POP にしか対応して いないものがほとんどです.この POP クライアントは, POP サーバからメー ルを受信しますが,送信は SMTP サーバに頼みます. ユーザがいつでも受信できるように,ユーザ別にメールサーバに貯えられてい るファイルのことを「メールスプール」と呼びます.メールスプールのディス ク容量にも限りがあるので,あまり未読のメールをためると,ポストマスター (メールサーバの管理者)に怒られるかもしれませんが,パソコン通信のメー ルのように数十通でパンクするようなことはありません. ニュースサーバ -------------- ネットニュース( NetNews )を貯蔵,配送するのがニュースサーバです.プロ バイダの外部とのニュースの交換と,ユーザのニュースリーダ(ニュースを読 み書きするプログラム)との通信を行います.ニュースリーダと, NNTP (Network News Transfer Protocol) というプロトコルで通信するので,ニュー スサーバのホスト名は, nntp.xxx.or.jp となっている場合もあります. ネットニュースには USENET や fj を始めとして,膨大な数がありますが,プ ロバイダの方針によって,選択されたものだけが配送されています.自分に必 要なニュースが届いてない場合は,プロバイダに希望を伝えれば,配送をして くれることもあります. 電子掲示板サーバ ---------------- いわゆるパソコン通信と同じように,メニュー形式で,電子メールや掲示板サー ビスを提供するサーバですが,全てのプロバイダで用意しているわけではあり ません.例えば,IIJ の個人向けサービスでは用意していませんが,これは, ローカルネットニュースがあれば十分ということでしょう.逆にパソコン通信 会社がプロバイダサービスを始めた場合は,インターネット経由でそのホスト に接続し,パソコン通信サービスを受けられるようになっているかもしれません. 一般ユーザ向けホスト -------------------- これは,ユーザが電話回線(モデム)経由,あるいはネットワーク経由でログ インできる UNIX マシンを用意するサービスです. UNIX に慣れた方なら,使っ てみたいサービスでしょう.これもプロバイダによって用意していなかったり, 別料金だったりします.しかし,例えばリムネットでは,基本料金でこのサー ビス(シェルモードと呼ばれています)をユーザに提供しています. このホストには,インターネット経由でもログインできるので,海外などに別 に使えるホストがある場合は,そこから telnet プロトコルで接続することも できます.もちろん, FTP プロトコルによるファイル転送も可能です. anonymous FTP サーバ -------------------- anonymous FTP サーバや,次に述べる WWW サーバは,基本的に不特定多数を対 象とします. anonymous FTP サーバには,一般にフリーソフトウェア等が置か れていて,誰でもダウンロードできるようになっています. IIJ の運営してい る ftp.iij.ad.jp は,国内でも屈指のサーバで,豊富なファイルをそろえてい ます.一方,一般ユーザに対し,ファイルのアップロードを許しているところ はないようです. WWW サーバ --------- WWW クライアントソフトである Mosaic のヒットで,脚光を浴びた WWW です が,当然プロバイダの方でも,サーバを用意しています.さらにユーザが,自 分のホームページを無料で作れるようにしているプロバイダもあります.その 方法は,ユーザ用ホスト上の自分のディレクトリ内に構築できる場合(リムネッ ト)や,ユーザが外でファイルを作成し,特定のマシンにファイル転送する場 合などがあります. WWW に関連して,漢字コード変換機能のないパソコン用 WWW クライアントの ために Proxy サーバ(あるいは Delegate サーバ)も設置されているはずで す.このサーバを経由すると,どの WWW サーバの漢字コードも Shift JIS に 変換されます. ゲートウェイ ------------ プロバイダと,外部をつなぐ機器をゲートウェイと呼びます.ここでインター ネットに接続するわけです.プロバイダによっては,複数の相手と接続してい ることもあります. ターミナルサーバ ---------------- プロバイダとユーザをつなぐ機器です.複数のユーザからの電話回線経由の接 続要求を受け, PPP サーバへ中継します. PPP サーバは図には明示していま せんが,一般ユーザ向けホストなどが,その役割を果たします. PPP ユーザ ---------- ダイアルアップ PPP 接続では,大抵の場合, IP アドレスは動的に割り当てら れます.つまり,ユーザごとに決まった IP アドレスはなく,接続のたびに異 なったアドレスとなります.本来, IP 接続のための環境は, UNIX マシンが 最適なのですが,最近はマックや Windows マシンを用いて簡単な設定で PPP 接続が可能となり,またその上で動くインターネットアプリケーションも操作 が簡単なものが増えています.これらの接続に必要なソフトウェアは,ほとん どフリーウェアやシェアウェアとして入手可能ですし,インターネット利用環 境をセットにした商品も登場しています. --- end ---