-------------------- プロバイダ選びの基本 -------------------- つい数年前までは,インターネットに接続できたのは,大学,研究所などの学 術目的の団体がほとんどでした.しかしインターネットへの接続サービスをビ ジネスとする商用インターネット・プロバイダ(以下,プロバイダとします) の登場により,商用利用も含めた,インターネットの利用者が急速に拡大して います.そして個人でも簡単にインターネットに参加できるようになったので す.そして現在,都市圏を中心にプロバイダが乱立し,激しい競争を繰り広げ るまでになりました. ここでは,プロバイダが提供する個人向けサービスについてまとめてみました. ただしプロバイダごとに,それぞれのサービスについて,基本サービス,オプ ション(有料),あるいはサービスなしといった,違いはあります.また,こ こでサービスといっているのは,あくまで利用が可能ということで,ユーザ側 で必要なハードウェアおよびソフトウェア等は,自分で入手してセットアップ しなければならないのが普通です. パソコン通信形式(通常のシリアル回線接続) ------------------------------------------ 主なサービス: - 電子メール - 電子掲示板 - ネットニュース(ローカルニュースを含む) - TELNET (リモートログイン) - FTP (ファイル転送) - UNIX 環境 パソコン通信形式では,プロバイダが用意したホスト・コンピュータに対し, ユーザは端末ソフトを使って,電話回線(モデム)経由で接続します.そこで は,メニュー形式,あるいは UNIX コマンド(「シェル・モードと呼ばれるこ ともあります)を使って,各種サービスを使うことができます.ただし, FTP でファイルをホストまで取ってきても,ユーザ側のパソコンに転送するには, 別途,シリアル接続でのファイル転送の手段( kermit, XMODEM, ZMODEM 等) が必要になります. パソコン通信形式は,その名の通り,パソコン通信の経験者なら抵抗なく設定 ができると思います.この方法でプロバイダとインターネットの雰囲気に慣れ, さらに次に説明するダイアルアップ IP 接続を成功させるためにも,うまく活 用しましょう.電子掲示板やローカルニュース上には,プロバイダからのお知 らせコーナーや,質問コーナー,そしてユーザ同士の情報交換の場があるはず です. 一つ注意しなけらばならないのは,端末ソフトには, VT-100 エミュレーショ ン機能を備えたものが必要な場合があるということです. VT-100 というのは, UNIX ホストでよく用いられる画面制御に対する端末の種類で,これによって 文字ベースのフルスクリーン( 80 文字× 24 行)の画面の操作が可能になり ます.例えば,リムネットの電子掲示板システムは, VT-100 端末でないと正 常に表示できません. ダイアルアップ IP 接続( PPP 接続) ----------------------------------- 主なサービス: - 電子メール - 電子掲示板 - ネットニュース(ローカルニュースを含む) - TELNET (リモートログイン) - FTP (ファイル転送) - WWW クライアント( Mosaic, Netscape 等) - UNIX 環境 ダイアルアップ IP 接続では,ハードウェア(パソコンとモデム)はパソコン 通信等と同じでかまいませんが,ソフトウェアは別に用意する必要があります. これは,両者の通信方式や利用形態が全く異なるためです. パソコン通信形式は,いわば中央集権型システムで,ユーザ側は,通信ソフト (端末ソフト)さえ持っていれば,ホスト・コンピュータへ「端末」として接 続し,全てのサービスを受けられますが,システム側であらかじめ用意したメ ニューやコマンドしか使えません. 一方のダイアルアップ IP 接続ですが,インターネットの基本となる IP (Internet Protocol) 接続を,ユーザが望んだときだけ電話回線をつなぎ成立 させることから,この名があります.パソコン通信と異なり, IP 接続におい ては,ユーザ側のパソコンも,インターネット上で識別可能な IP アドレスを 持つ「ホスト」となります.つまり,インターネットに接続された世界中のコ ンピュータと対等な立場にあるのです(もちろんネットワークの管理能力や計 算能力は,それぞれ異なりますが). この IP 接続をモデム経由のシリアル回線上で可能にするために, PPP (Point to Point Protocol) という手順(プロトコル)が用いられます(同じ 目的で, SLIP と呼ばれる方法もあります).このためソフトウェアとして, モデムと直接やりとりする PPP ドライバが必要になります.その次に IP 接 続を管理する,いわゆる TCP/IP ドライバが必要です.マックの場合は, Apple 社純正の MacTCP というコントロールパネルを使えばいいのですが, Windows では標準と言えるドライバは存在しないので PPP ドライバや次に述 べるアプリケーションとの相性を考慮しながら選択する必要があります. この環境の上で,メールリーダ(電子メール用プログラム),ニュースリーダ (ネットニュース用プログラム)から WWW クライアント・プログラムまで, サービス別のインターネットアプリケーションを自由に使うことができます. それぞれのサービスごとに IP 接続上のプロトコルが決まっているので,その プロトコルに従ってさえいれば,ユーザ側のプログラムを,より高機能なもの に入れ替えることも可能です.さらに,今後,インターネットに全く新しいサ ービスと,そのためのプロトコルが生まれたとしても(その可能性は多いにあ ります),ユーザ側では,それにアクセスするプログラム(大抵はフリーウェ ア)だけを追加すればいいのです. IP 接続では,インターネット上の相手のホストと直接接続することができる ので,例えば FTP によるファイル転送では,相手の FTP サーバから,自分の パソコンに直接ファイルをダウンロードできます. Mosaic や Netscape など の WWWクライアントを使ったネットサーフィン(世界中の WWW サーバをリン クをたどって渡り歩くこと)も IP 接続が前提となります. 回線とモデムの選択 ------------------ プロバイダとの接続するには,電話回線についても検討しなければいけません. 一般家庭で引くことができる電話回線は,大きく分けると通常の電話回線と, 最近のインターネット・ブームで脚光を浴びている ISDN とがあります. - 電話回線 最大,非同期 28,800bps ( V34 )まで可能 - ISDN INS64 により同期 64Kbps など 回線の通信速度は, bps = bit per second つまり,1秒当たり何ビット転送 できるかで表わします.通常の電話回線による非同期通信では,モデムに内蔵 された通信プロトコルの働きによってデータを圧縮して送ることにより,コン ピュータ間の通信速度(端末速度)は,モデム間の通信速度の最大 2 〜 4 倍 にすることができます. 最近では,通常の電話回線でも V.34 という通信プロトコルにより, 28,800bps もの速度が出せるようになりました. WWW などで画像データを多 く扱いたい場合や, FTP などで数 M bytes 単位のファイルの交換をしたい場 合は,可能な限り速い通信速度を選択すべきでしょう.ちなみに 28,800bps でのダイアルアップ IP 接続の場合, FTP によるファイル転送で3,000 bytes/sec 以上の転送速度が可能です. 手持ちで 14,400 bps のモデムしかない場合でも,少なくとも電子メールやネッ トニュースなどのテキスト・ベースのサービスならば,ストレスなく使うこと ができるでしょう. WWW は画像の読み込みに時間がかかるものの,そこそこ 楽しめると思います.しかし 2,400 bps のモデムでは,接続することは可能 でしょうが,実用的な通信速度は期待できません. もちろん,プロバイダ側およびユーザ側で,費用面も含めて ISDN の準備がで きれば,それにこしたことはありません. ISDN では,モデムの代わりにター ミナル・アダプタ( TA )と呼ばれる機器が必要ですし,回線の工事費等もか かりますが,デジタル通信なので,ノイズ等に強く,安定したデータ転送が行 えます. 本書では,入門書であることや ISDN の普及度を考え,一般的な電話回線によ る接続を中心に話しを進めますが, ISDN 導入を検討するのであれば,雑誌や ネットニュース,あるいはパソコン通信( NIFTY-Serve ISDN フォーラム等) から,最新情報を得るようにしてください.特にターミナル・アダプタは,最 近続々と安価な新製品が登場しているので要チェックです.また,プロバイダ 側の機器との相性といった情報を会員同士で交換するのも重要です. ここがチェック・ポイント ------------------------ 都市圏,特に東京ではプロバイダが乱立し,近いうちにサービス内容や利用料 金の競争による淘汰が起きそうな状況です。一方,地方によっては,電話の市 内料金で電話をかけられる範囲にプロバイダのアクセスポイントがないところ もあるでしょう.メール・アドレスやホームページをしょっちゅう引っ越すの は,あまりいいことではありませんから,しっかり情報を収集して,自分にとっ て一番良いプロバイダを選びたいものです. 本書の限られた紙面では,数あるプロバイダの詳しいご紹介はできません.各 プロバイダのサービス内容の最新情報は,雑誌『 INTERNET MAGAZINE 』に非 常に詳しく載っています.一方,プロバイダの利用者の生の声は,(トラブル 情報も含めて) NIFTY-Serve のインターネット・システム・フォーラム ( FINETS )等で仕入れることができるでしょう. 最後に,プロバイダを選ぶときのチェック・ポイントを挙げておきましょう. - アクセス・ポイント 市内電話料金のエリア内にあるか 高速モデム( 28,800bps )や,(将来の) ISDN 対応は十分か 出張が多い場合は,全国にアクセス・ポイントがあるか - 回線数( BUSY 率) 会員数に応じて,十分な回線を用意しているか 自分が主に利用する曜日,時間帯での BUSY 率はどの程度か 電話料金割引サービス(テレホーダイ,テレジョーズ等)の時間帯では - 課金制度 入会金,初期工事料等はサービス内容と比較して妥当か 自分の使い方では,固定料金と従量課金でどちらが有利か 固定料金:いくら使っても(一切,使わなくても)料金は同じ 従量課金: 1 分につき数円 〜 数十円を課す 電話料金は別にかかるので合わせて検討する - サービス内容 高速モデムでのダイアルアップ IP 接続が可能か シリアル接続( UNIX シェル・モード)を使えるか 購読しているニュース・グループの種類は十分か 希望するユーザ名を取得できるか - ホームページ・サービス ハードディスク容量は十分か,増設プランはあるか 内容の更新方法は,迅速かつ簡単か サーバの通信負荷は(ユーザからのアクセスが遅くないか) CGI , SSI (プログラム)の利用は許可されているか 商用利用を考えている場合,それは可能か - サポート体制,技術力 電話,ファックスでのサポートはあるか 電子メール,ネットニュースでのサポートはあるか 会員がたくさんいるか(多いと情報もたくさん共有できる) サポート要員は親切に対応してくれるか システム管理者の技量は信頼できるか 障害が発生した場合,速やかに復旧が可能か ハードディスクのバックアップ体制は --- end --- サービス内容、に追加: 上流のプロバイダとの専用回線の容量は大きいか 海外(米国)との専用回線の容量は大きいか