川村渇真の「知性の泉」

評価方法や評価結果のまとめ方


評価方法の説明書と評価結果の報告書を作る

 どんな分野の設計でも測定でも、得られた内容をきちんとした書類としてまとめなければ、仕事を終えたとは言えない。評価の作業でも同様で、得られた結果を書類としてまとめたら仕事が終わりとなる。
 評価という分野では、「評価方法の説明書」と「評価結果の報告書」の2つの書類を作成する。前者の書類は、評価方法をどのように設計したのか明らかにし、評価方法の中身と具体的な使い方を説明する。後者の書類では、前者の書類で指定された方法を用い、実際に試して得られた評価結果を解説する。
 評価方法や評価結果のレビュー工程をきちんと確保し、次のような手順で作業を進める。まず、評価方法を設計したら、その結果を評価方法の説明書としてまとめる。この時点ではレビューを通ってないので、まだ暫定版である。その書類を見ながらレビューを実施して、出された修正点を加え、評価方法の最終版の書類を作成する。これで評価方法のほうは出来上がった。
 評価方法が定まり、評価すべき対象も出てきたら、評価方法に従って実際に評価を行う。その結果をまとめて、評価結果の報告書を作成する。これもレビューを受けるべきで、レビューでダメと判断されれば、指摘された点を考慮しながら評価自体をやり直す。レビューに合格した時点で、評価結果の報告書が正式版となる。
 以上のように途中で何度か書き換えるので、バージョン番号のようなものを表紙に入れ、区別できる形にする。単純に連番としたのでは、暫定晩か正式版かを見分けられないのでダメだ。きちんと見分けられるように、レビューに合格していない版では、「暫定版」といった表記を含めなければならない。

読んだ人が検査できる形で記述する

 評価方法や評価結果をまとめた書類では、それを読んだ人が内容を検査できる点が、最も重要である。評価方法が適切に設計されたのか、きちんと評価した結果なのかを、読み手が確認できなければ、評価の質を高められないからだ。
 評価方法の説明書では、評価目的の設定から始まり、途中の評価基準へと続け、最後の評価方法までの流れを見せる。各段階での設計結果を記述するだけでなく、どのように考えて得られた結果なのかを説明することが大切だ。このような書き方をすれば、論理的および科学的に設計してあるのか検査できる。逆に、最終的な評価方法だけを記述するのは最悪の書き方で、絶対にすべきではない。
 評価結果の報告書も同様で、評価方法の実施条件から始まり、測定や調査などで得られた値が続き、最終的な評価値に換算した結果まで入れる。実施した場所や時刻、担当者ごとの作業範囲といった実施時の細かな情報も、できるだけ記述したほうがよい。評価を実施する際に決めなければならない箇所があるなら、決めた内容だけでなく、どのように考えて決めたのかも説明する。
 どちらの書類も、読み手を強く意識した書き方になっている。他の分野の書類でも同様だが、きちんと検査やレビューできる内容に仕上げないと、せっかく整理した意味がない。

作業をしながら書き進むのが効率的

 以上のような書き方なので、最後にまとめて書くよりも、測定や調査を進めながら書いたほうが効率的である。最終的な書類ファイルを開き、そこに直接入力すると、無駄な作業を最小限に減らせる。また、このように実際の作業と連動する形で書けば、作業が終わってから短時間で書類が仕上がる。
 きちんと設計したり実施していれば、やっている内容をそのまま書くだけなので、特別に難しいことではない。やりながら書き進むのも、違和感なくできるはずだ。
 逆の見方をするなら、このような形式で書かせられると、マトモな設計や評価の実施を必然的に要求される。つまり、書き方の規定のほうからも、きちんと作業するようにプレッシャーを与えているわけだ。余談だが、こうした複数のプレッシャーで仕事の質を高めるのは、仕組み作りの上手な方法の1つである。ただし、この程度の規定は、きちんと仕事をする人にとってはプレッシャーでも何でもない。きちんと仕事をしない人にとってのプレッシャーなのだ。
 たいていの人は書類をきちんと書くことに慣れていないので、上手な人がサンプルを作成し、それを真似る形で書くのが現実的だろう。良いサンプルだけを提供するのではなく、どんな点に注意して書くのかを説明した書類も用意したい。そこまで準備すれば、あとは書く本人の努力しかない。

(1998年12月28日)


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